魔王の巫女救出編(4 / 8)

「私、ずっと見てたの。テツトとみんなの……まぐわいを」



ガシリ。

いつの間にか俺の手首は強く掴まれていた。

柔らかで、しかし熱いくらいに火照った巫女のその手に。



「ひぃっ……! ヤ、ヤンデレ……!?」


「やん、でれ? よくわからない……でも、」



巫女は俺の腕を離さず、それどころかその体をグッと近づけてくる。



「テツト、好き……」


「す、スマン! でも、君のその感情は俺の転生特典のせいで──」


「テツトが、光をくれた」


「……え?」


「テツトの昼の冒険も夜の冒険エッチも、息の詰まるような私の狭い狭いこの世界を、希望の光で明るく照らしてくれたの」


「希望の、光……?」


「ん。テツトたちは、私の存在のせいで激化したこの暗い戦時下でもお構いなしに、余裕さえあれば、いつでもどこでも、ズッコンバッコンズッコンバッコン……こんなにも思うがまま、明るく過ごせる人たちがいるんだ、って。その事実が……なんだか嬉しくて。そして、その姿がまぶしかった……」



巫女は心の底から願うようにして、俺の顔を見上げた。



「お願い、テツト……私も、あなたと同じ世界に、連れてって……」



正直、呆気に取られていた。

巫女のその、あまりにも思いもよらぬ言葉の連続に。

俺と他のみんなとのあられもない行為中の姿が、まさか、魔王城のこんな場所で鑑賞されていて、それどころかこの巫女の少女に希望を与えていたなんて。



「お、俺はそんな大したことをした覚えもないし、大した考えを持っていたわけでもないよ。ホントに……」



だって、ただみんなと夜の営みを楽しんでいただけだし。

でも、それでも。



……そんな俺だとしても、頼りたいと思ってくれたのなら。



俺は巫女の手を強く握り返す。

そうして、答えを返そうとした……その直前の出来事だった。



──ドゴォンッ!



部屋の、唯一の出入り口が蹴り破られたのは。



「忌まわしき生のエネルギーの波動を感じて来てみれば……! まさか、侵入者を招き入れるような能力を隠し持っていたとはね……」



破壊された扉を踏みしめて入ってきたのは、背の丈三メートルにもなる細長い魔族。

白髪のオールバックの頭を傾げ、怒りに満ちた鋭い目を俺たちへと向けてくる。



「元帥、ヌルト……!」


「やはり、油断ならないお方ですなぁ、巫女殿……!」



巫女がジリッと、恐怖するようにその身を引いた。

どうやらその魔族が、巫女をこの部屋に縛り付けておいた人物であることに間違いはなさそうだ。

俺は頼善剣アスカロンをヌルトと呼ばれた男に向けて構える。



「……誰ですか、おまえは? 見知らぬ人間よ」


「この子を、助けにきた」


「ハッ……何を言うかと思えば」



あざ笑うかのようにして言って、ヌルトは俺をにらみつけてくる。



「ここが魔王城だとわかっての言葉ですか?」


「当然」


「いいや! わかってなァいッ!!!」



唐突にその目を剥くヌルト。



「ここは! いずれわれらが偉大なる魔王様が復活した後、君臨なされる場所! そもそも貴様のような低俗な人間が、土足で踏み入っていいような場所ではないわァッ!!!」



その肩を怒りでわななかせながら、唾を飛ばす勢いで大声を張り上げてくる。



「ましてや……勇者でもなければ、要注意人物でもない一介の人間が、ここからタダで帰れるとでもッ!? この魔国軍元帥である私のもとから? 侮られたものですなァァァァァァァッ~~~!」



ヌルトのその声、その語尾が、不自然に伸ばされた。

それを聞いた巫女が、ハッとして、



「逃げてっ、テツト! あいつの能力は──」



だが、時すでに遅し。



「──えっ」



巫女の、あぜんとした声。

なにせ、彼女が振り向いた先、すでに俺はいない。

ヌルトの語尾が不自然に伸びた瞬間に、俺はすでに飛び出していたから。



「タダで帰れるつもり? そんなもん最初っからないよ」



空に現れた黒い扉、そこをくぐった時から覚悟は決まっていた。

救えなかった後悔をするくらいなら、後で何が待ち受けていようが救いに行く、と。

それが罠であろうが、強大な敵であろうが、関係ない。



「邪魔立てするなら、誰だろうと叩き潰して俺たちは帰る──ッ!」



俺は振りかぶったアスカロンを、その肩口めがけて振り下ろした。

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