非モテ俺、【女の子にモテる】転生特典もらっても非モテ。もうモテ路線は諦める。それより子供たちが困ってるみたいだし助けに行くとするか(10年後、何故か急にハイスペック美少女たちにモテ始める)
浅見朝志
1章 異世界転生とそれからの10年間
転生しても非モテは非モテ(1 / 2)
「俺は女の子に──モテたいんですっ!」
俺の悲痛な叫びが、天界へとこだました。
「はぁ……突然なんなのじゃ」
正面に立つ女神は呆れ顔だ。そういう顔をしてしまう気持ちも充分に理解できる。でもさ、実際の俺の立場からしてみれば……言わせてほしい。
「
「知っておるのじゃ。おぬしのことは調べたゆえな」
「女の子にモテると信じて男子テニス部に入ってコツコツとラケットを振るい、シングルスでインターハイ出場も決めてた矢先に……こんなのあんまりだ! せめて全国で1番になって1度くらい、女の子たちにチヤホヤされたかった……!」
「欲望にまみれておるな……」
そんなこと言わないでほしい。人生これからって時にすべてを無に帰されたんだから、少しくらいは情けがあってもいいじゃないか。
ちなみに、俺は決して常に女の子のことしか考えていないドスケベというわけじゃない。ただ、16年という短い生涯の中でいろいろやり残したことがある中で、1番後悔が残ってしまったのがたまたまソレだったというだけなのだ。
「はぁ、まったく……第一に、そんなに女子にモテてどうしたいというのだ? それほど良いものとは思えんが……」
「非モテ男子の気持ちは女子やイケメンには分かるまいッ!」
「うおっ!? こやつ急にキレおった!?」
「
「で、でもテニスの試合ではおぬしが勝っておるだろう? それならそれで別にいいではないか」
「応援アリの試合だといつも池沢にだけ負けてますよ……女子の『誰もアンタの活躍は観に来てないのよ』ってブーイングにメンタルがブレイクされてさ……。そんで池沢の勝利に湧く女子たちのキャーキャー言う声と『なんでテニス部のエースが池沢くんじゃなくて伏見なの?』って声に心が殺されてる」
「お、おっふ……」
「その後に池沢に『ゴメンな、伏見。女の子たちには後で俺の方からちゃんと注意しておくから。お前の本当の実力は俺がよく知ってるから』ってフォローを入れられる
「勝者から掛けられる情けほど辛いものは無いな……」
「うぅっ、グスッ」
「ガチ泣きするでない、どおどお。深く息を吸って気を落ち着けるのだ……」
「うぅっ……スーハー、スーハー……」
女神に背中をさすられる。ああ、優しさが身に染みる……けどなんとも情けない。というか俺は本当にこのまま何もいいとこ無しで人生の幕を閉じてしまうのか?
……そんなの、イヤだ。最後に思い出すのが女子のブーイングなんていう人生に納得なんてできやしない。
「女神サマ! 異世界転生とかできませんか!? 俺に第2のチャンスを!」
「むー……まあ、よかろう」
女神は腰に手を当て小さく息を吐くと、微笑んだ。
「おぬしは幼子を信号無視の車から庇って死んだゆえ……その善行に報いるとしよう」
「えっ……マジですか!?」
「マジじゃ」
なんと。Web小説にありがちな異世界転生、言ってみればできるものであるらしい。
「とはいえ、何の目的も無くむやみに転生させることはできぬ。ちょうど魔王軍に支配されそうな世界があるからのぅ、そこを救いに行ってもらえるのであればじゃが」
「おおっ、王道ファンタジー! もちろん行きます。目的に向かってコツコツがんばるのは得意ですっ!」
「そのようじゃな。では、ここにおぬしを転生召喚させるとしよう」
「ぜひよろしくお願いします!」
「魔王を倒す道のりは並大抵のものではない。そのため、おぬしには何かひとつ【特別な力】を授けよう」
「ほ、ホントですかっ!?」
「うむ。【無限の魔力】、【無類の剣技】、【未来予知】などおぬしの望むものをひとつだけな。世界のパワーバランスを著しく崩さない範囲でに限るがのぅ」
俺の好きな力を何でも……ってことは、超絶チートな最強能力を手にすることも可能、ということか。ならば、俺が望む能力は──
「まあすぐに答えろとは言わぬ。じっくり悩むがよい。第2の人生を左右する重要な選択じゃからの」
「【女の子にモテる】能力をお願いします!」
「考え終わったらまた声を掛け──えっ?」
「【女の子にモテる】能力をお願いします!」
考える時間など俺には必要無かった。だってこの16年間の生涯を閉じる際に1番にした後悔が分かっているんだから、それを補うことができる能力を選べばいいだけの話じゃないか(天才的な英断だ!)。
「おぬし……本当にブレないな」
「せっかくの第2の人生ですので!」
「言っておくがおぬしには魔王を倒すという使命があるんじゃぞ?」
「大丈夫です。女の子にモテる以外のことに関しては全て、これまで努力と根性でどうにかしてきましたので」
俺は女の子にモテさえすれば、きっとそれを励みに努力と根性で魔王よりも強くなれる……! そんな気がする。
「はぁ……まあ、いいが。おぬしの人生だからな。好きにするがよい」
「ありがとうございます!」
「それじゃあ現地の神宛てに一筆したためて送っておくのじゃ。えーっと、『転生召喚者 フシミテツト 男 16歳 【女の子にモテる】能力を希望』っと」
女神はサラサラとペンで羊皮紙にそう書くと、その羊皮紙は宙に溶けるようにして消えた。
「さあ、いってらっしゃいなのじゃ。能力に関しては現地の異世界の神から授けられるじゃろう。第2の人生をせいぜい謳歌してくるのじゃ」
「あ、ありがとうございます!」
やった……! これで俺の夢のセカンドライフが始まるんだ……!
喜びを噛み締めていると、辺りが眩いばかりの光に包まれていく。そこで俺の意識は真っ白になった。
……。
……。
……。
そして次に目を開くと、そこはどこかの町の前だった。
「──おおっ!」
思わず、歓喜の声が出てしまう。
「このコンクリで舗装されてない田舎道、ビルの無い景色、木製の民家が密集してできている町、そして何よりちょっと欧風な人々が行き交うこの光景……! きたきた! 異世界に来たぁ〜ッ!」
テンションはもう爆上がりだ。だって夢にまで見たファンタジー世界でこれから生活していくんだから!
「さて、まずやることといえば決まってる……能力の確認だ! 俺の、俺だけの【女の子にモテる】という特殊能力を!!!」
さっそく俺は町を
──そして、10分後。
「おかしいな……?」
しばらく町を歩いてみたが……残念なことに、女の子が『きゃー、鉄人くんカッコイイ! 好きよ、ケッコンして!』なんて迫ってくることはない。
「なんでだろう、もっとモテるもんだと思ってたんだが」
いくらモテ能力があるからといっても限界があるのだろうか? そういえばどれくらいの効果があるかは知らないし、やっぱりこっちから直接話しかけてみて検証するしかないか。
「とはいえ、ナンパみたいなことしたくはないんだが……」
となると、自然と会話が発生するような場所に行くしかない。
「お金を使わず、情報収集ができ、そして女の子と合法的に会話できる場所……ここはド定番として、冒険者ギルドを探してみるとするか」
異世界といえば冒険、冒険といえば冒険者ギルドだ。まあどこの異世界系小説でも定番だし、きっとこの世界にもあるよね?
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新連載です!よろしくお願いします。
一気に話の区切りのいい話数までアップしてしまいましたが、今回は毎日連載ではないので以降ゆっくり読んで楽しんでいただければ幸いです!
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