似ているようで似つかない

 ……。

 聞こえてる? 

 ボクさ。ハイイロだ。

 どうやら、キミはやってしまったみたいだね。この罰欲センサーで、一番やってはいけないことを。

 キミの痛みは、ほぼ一生と言えるほどに等しい制限時間を得るのに十分なものだった。

 そうさ、キミの思惑通りというわけだ。

 キミはこれから、自分を傷つけることなく、死ぬまで平和な日常を過ごすことになるんだ。キミがこれから過ごす世界には、亜黒を殺してしまった形跡や、自分を傷つけた形跡なんて一つも残っていない。誰もキミを罪人だと認識できない。

 キミは、また新しく潔白の道を歩むことを選択したんだ。

 これは、褒められていいものではないと、ボクは思っているよ。

 しかし、自分の恋を叶えるために自分を傷つけたキミの感情は、理解できないでもない。

 この選択をしてしまった以上、キミがするべき償いは、自分と向き合って、きちんと罪を背負える人間になることだとボクは思うね。

 誰だって、間違いを犯さないことなんてないのだからね。

 

 ……。

 急に話を変えるけどさ、キミは、死刑囚が死刑執行後に死ななかった場合、どうなると思う?

 有名な話さ。

 ……。

 正解はね、その死刑囚は、その存在をなかったことにされて、新しい戸籍を与えられ、別人として生まれ変わってまた新しい人生を歩むことになるんだ。

 まったく、キミに似ているようで似つかないよね。


 そうだ。ボクの良心で、これだけ伝えておこう。

 キミは亜黒の前で自分を傷つけた。だから、つじつま合わせのために、あの後の亜黒の言葉を聞いたことになっているよ。

 亜黒は、あんたと一緒に居られて、とても幸せだったそうだよ。

 

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