キャバクラを辞めようか迷っている話

最後の砦

辞めたいと思うときに考えていること

 何も覚えていない。残っているのは退勤した時に受け取ったお給料と、指名してくれたお客さんに送った定型文のLINEのみ。お客さんのお顔や話したことを思い出そうとしても何も思い出せない。さっきまでドレスを着て、”りんちゃん”であったはずなのにその時の記憶が何もない。気がついていないだけで出勤中ありえないほどのストレスを感じていて防衛機制が働いているのか、”りんちゃん”として働いていたあの5時間は幻だったのか、それともただ脳みその容量が足りていないだけなのか。少なくとも”りん”と書いてあるお給料袋を受け取っているわけだし幻ではないのだろう。

 入店したてのころ、寝る前にお客さんの顔が忘れられず寝付けなかったことがある。今はそんなことない。慣れとは怖いものである。すぐに眠れる。何なら自分から話してくれないお客さんだと卓で寝そうになる。

 これも入店したてのころの話だが、よく話しかけてくれるドライバーさんに『他の女の子たちが話しかけても冷たい。りんさんは話してくれるから楽しい』と言われたことがある。その時はただ単純に楽しいと言ってもらええて嬉しかった。しかし、最近はそりゃ疲れてるんだから話しかけてほしくないでしょうよと思う。ドライバーとお話ししたところで、自分の売り上げが増えるわけではないし、そもそも私はお友達以外の人と話すことがあまり得意ではない。帰りの車でゆっくりしたい。そう考えている自分を振り返って、変わってしまったなと思う。

 別にお店で誰かと揉めたとか、ノルマがきついとかそういう何かはっきりとした大きな原因があるわけではない。ただ、家に帰ってきた時気づく髪の毛についたタバコの匂いとか、友達の数より多く登録された記憶にない人たちのLINEとか、帰りの車で話しかけてくるドライバーさんとかそういうちょっとした嫌かも、、みたいなことが積み重なって今ただただ辞めたい。

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