27話
激レアスキル【異次元開拓】を獲得できたし、さあ、あとはユニークモンスターのミニフェンリルをテイムするだけ……なんだけど、ここからが結構大変なんだ。
それはなんでかっていうと、テイムするには対象の体力をギリギリまで削る必要があるものの、こんな可愛い子犬にしか見えないモンスターを甚振ってたら、視聴者たちの心証は間違いなく悪くなるからね。
なので、【神速】スキルを最大限に活かして、素早く距離を詰めて攻撃するとともに退く、ヒット&アウェイの戦法を取ることにした。これはボスの特殊能力の中で一番厄介であろう、2メートル以内の対象の身動きを封じる《咆哮》対策でもあるんだ。
実際、ミニフェンリルは僕が範囲内に入るとこれをやろうとしたことが何度あって、目が一瞬だけ光ってから少し経って《咆哮》したので凄くわかりやすい。
『ウー……きゃんきゃんっ!』
あれ? フェンリルの姿が消えて鳴き声だけすると思ったら……復活し始めた木々の中でひときわ小さな木があってやっぱりわかりやすかった。
見た物の真似をできるっていう特殊能力の一つの《変身》を使ったみたいだけど、そっくりそのままじゃなくて、自分なりに形を変えられるだけらしい。
『クーン……』
お、とうとう心細そうな声を発したし、大分弱ってきたみたいだね。それでも、すぐに唸り声を上げて向かってきたので、まだ限界とまではいかないようだ。可哀想だけど『もう少しの辛抱だから』と僕は呟きつつ、今までと同じことを繰り返して小さな狼の体力を徐々に削っていった。
『子犬ちゃん、なんか遊び疲れてない?』
『カケル君、そろそろペットを休ませてあげて!』
『てか、飼い主なんだから抱っこしてやってよおお!!それか私に譲って!!』
イベントボードは、小さな狼を心配するコメントで溢れ返ってた。あと少しってところなのに、このまま無視してたら登録者が減る可能性も出てきちゃうな。どうしようか……。
『――ウオォォーン!』
「はっ……」
し、しまった。コメントに気を取られすぎて、木の根っこが邪魔になったってのもあるけどフェンリルに2メートル以内で《咆哮》を使わせちゃった。う、動けない……。
しかも、セーブしたのはダンジョンに入った時点だから、死に戻り、あるいはロードするとなるとかなり遡らなくちゃいけなくなる。
そうなると、ユニークモンスターがまた出てくる可能性はほぼ0だ。はあ、うっかりミスとはいえ、情けない。こんなことになるなら、こまめにセーブしておくんだった……。
『ウーッ……!』
身動きのできなくなった僕に向かって、ミニフェンリルが身を低くして飛び掛かる姿勢になった。万事休すか……。
「ウォーン……!」
『きゃんっ!?』
そのときだった。《遠吠え》が頭上から聞こえてきたかと思うと、毛を逆立てたフェンリルが徐々に後退りしていった。よし、動けるようになったってことで即座にセーブする。
「リサ、ナイス!」
「えっへん!」
多分、リサの《遠吠え》を聞いてびっくりしたんだろうね。これは仲間を呼ぶ効果だけど、ユニークモンスターのミニフェンリルにとっては異質なものに感じただろうし。
『ウウゥーッ……』
得体の知れない何かを感じ取ったのか、ミニフェンリルは僕たちに対して今まで以上に警戒してる様子。
『子犬ちゃん、怒ってる?』
『警戒してるみたいだし、モンスターのウルフが近くにいるのかな?』
『カケルさん、狼から子犬しゃんを守ってあげて!』
「大丈夫大丈夫――」
投げられたコメントに対して僕がそう返した直後だった。フェンリルの表情が少し和らいだような気がしたんだ。ってことは、『大丈夫』っていう言葉のニュアンスが伝わってるのかもしれない。
この子はかなり賢そうなモンスターだしそれも充分ありえそうだってことで、僕は徐々に距離を詰めるとともに、優しい言葉を投げかけてみることにした。テイムするために体力を削るだけじゃなく、使い魔にしたあとのことも重要だからね。
それに、あんまり追い詰めちゃうと三つ目の特殊能力の《巨大化》を使われて、この子がユニークモンスターだってバレちゃう可能性もある。そうなるとペットじゃなかったのもバレるわけで、視聴者に事情を説明しなきゃいけなくなるから相当に面倒なことになる。
「大丈夫だよ。僕がいるから、怖くないからねっ……」
『ウゥー……』
「ははっ、本当だぞぉ? 僕が守ってやるから、そんなに警戒するんじゃないよ。大丈夫なんだから。よしよしっ……』
『クーン……』
お、伝わってる伝わってる。警戒自体はまだ完全には解いてないみたいだけど、フェンリルの荒れた毛並みも大分穏やかになってきたし、尻尾も微妙にフリフリしてる。
『ムシゴロウさんクル━━━━(゚∀゚)━━━━!?』
『マジでカケルってあのムシゴロウみたいだなw』
『カケルさん、動物王国作って!』
「ははっ……」
まあ【魔物使い】スキルの効果もあるんだろうけどね。
さて……小さなフェンリルは警戒したことでさらに消耗したみたいだし、もうそろそろいいだろうってことで僕はセーブすると、念には念を入れてさらに弱らせるために例の分身の術を使いつつ、100分の1ガチャにチャレンジすることに。
『――テイムに成功し、ミニフェンリルを仲間にしました』
「よぉしっ! 遂にやったぞ!」
「坊や、おめでとーっ!」
「クゥーン……?」
あれから40回ほど【セーブ&ロード】スキルとテイムを繰り返して、僕はとうとうミニフェンリルを使い魔にすることに成功したのだった。
小ボスに続いてユニークモンスターを仲間にするなんて、ダンジョンの歴史上でも聞いたことがないし、僕が初めてやったことだと断言できる。これでまた日常生活が一段と楽しくなりそうだなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます