23話


【底辺専用】第17支部のダンジョンについて語るスレpart1435【荒らし厳禁】


 75:名無しのハンター


 おいお前ら!!祭りの準備は整ったか!?カケルが《幼女マスター》っていう事実は、積極的にどんどん広めていこうぜw俺たちのユメさんとアオイさんもここを見てる可能性があるしww


 76:名無しのハンター


 >>75

 盛り上がろうとしているところで悪いが、祭りはもう始まらない。残念だったな。あの幼女はカケルの妹だ。


 78:名無しのハンター


 >>76

 はあ?

 苦しすぎる言い訳だなw《幼女マスター》のカケル本人乙www

 残念ながら、もうごまかせないよん♪


 81:名無しのハンター


 >>78

 いや、本当だ。私は【鑑定】スキルを持っているしな。それで調べたあと、本人たちからも事情を聞いた。というかだな、色んな人に見られてるダンジョン配信で、カケルがそういう妙な噂が広まるようなことをわざわざすると思うか?


 83:名無しのハンター


 >>81

 まあ一理あるけど、それだけじゃ納得できんなあw

 で、その【鑑定】スキルを持ってるっていう証拠はあるんか?w

 ないならお前の負けなw


 85:名無しのハンター


 >>83

 ほれ、これが証拠の私のスキルボードのスクショだ。

 ほかのスキルと自分の名前、ハンターランクや称号の部分だけ伏せてある。

 http://i.imgur.com/e92J03Nx.jpg


 89:名無しのハンター


 >>85

 マジか・・・

 参りました・・・


 91:名無しのハンター


 なんだよ、本当にカケルの妹なのか。。。また俺たちが負けたんだな。。。


 92:名無しのハンター


 ま、冷静に考えてみりゃ、最近になってカケルはようやく本来の意味でハンターとして注目され始めてきたわけで、さすがにそういう醜態は見せんか。


 93:名無しのハンター


 うはwww妹かよwww

 通報したやつら涙目www


 94:名無しのハンター


 てか、ユメさんやアオイさんと仲いいだけじゃなくてあんな可愛い妹もおるとか、カケルうらやま!!!!


 96:名無しのハンター


 ってことは、カケルってロリコンじゃなくて《シスコン》だったんやな。それもあんな変な格好させるくらいやから、や。


「ちょっ……」


 さすがサツキ、自演もできるってことで掲示板での工作が上手いと感心してたら、最後の最後にまた変なことを言うやつが出てきて、ほかの連中も次々とそれに同調し始めた。ってことは、まさか……。


 名前:時田翔

 ハンターランク:F★★★

 所持スキル:(6)

 LRスキル【セーブ&ロード】

 URスキル【開眼】【殲滅】

 SSRスキル【神速】【魔物使い】

 SRスキル【フェイク】

 称号:《アルティメットシスコン》


「……はあ……」


 この分だと、また近いうちに僕の称号が《シスコン》に変わりそうだと思ってスキルボードを確認したら、さらにバージョンアップしていた。ははっ……さすが、大勢の人が覗いてる掲示板なだけあって、その影響力は認めざるを得ないところだね。


 まあ《幼女マスター》呼ばわりされるよりは遥かにマシなんだけど、《アルティメットシスコン》ってどっちかっていうとサツキに相応しい称号のような……。


「――ふう。これでよし、と……。少し予想外な結果にはなってしまったが……」


「いや、サツキ、称号なんてまた変化するだろうし、これでよかったよ。どうもありがとね」


「ど、どういたしまして、だ! カケルは私の恩人からな。それにしても、だな……」


「え、何が?」


「……気に入らない……」


 ん、サツキが何を思ったのか、リサのほうを真剣な顔でじろじろと見始めたかと思うと、その目の前に【瞬間移動】して、手元に光るものを出した。あ、あれはハサミだ。えええっ? 邪魔だし気に入らないってことは、もしかしてリサを消すつもり……?


「みゅ……?」


「サ、サツキ……!?」


 次の瞬間、シュパパッという鋭い音がしたかと思うと、パラパラと何かがリサの足元に落ちた。ああ、遅かった……と思ったら、髪の毛だった。あー、邪魔とか気に入らないとかってそういう意味なのか。びっくりしたあ。でも、よく考えたらサツキがリサを襲う理由なんてないよね……。


「いくらなんでも要らない毛が多すぎる。カケルの妹なのだから、身だしなみはきっちりしておかないとな」


「ははっ……サツキって本当に器用なんだね」


「す、少しはなっ」


 サツキは美容師でもないのに、あれだけ髪の毛を綺麗にカットできるんだから、【技術力向上・小】スキルを持ってるだけある。ノーマルスキルとはいってもなんにでも応用できるし、これを持ってる人と持ってない人では雲泥の差があるわけだしね。


「――どうだ、リサ?」


「わぁー! さっぱりしたぁー!」


 鏡の前でリサがピョンピョンとジャンプしてはしゃいでる。それまでボサボサだった彼女の髪がすっかり綺麗になっていた。


 さらにサツキはその勢いで、髪形もただのロングヘアからツーサイドアップに仕立て上げる力の入れよう。おおっ、そのおかげか、悪魔の角があたかも髪飾りのリボンのように見えて良いアクセントになっている。


「気に入ったか?」


「うんっ! これすっごくかわいー! わーい!」


「ふふっ」


 サツキとリサが打ち解けてるみたいでよかった。これでちゃんとした服さえ着せてやったら、少なくともリサがモンスターだってバレる可能性は皆無になりそうだね。


「お嬢ちゃん、ありがとー」


「どういたしまし――って! わ。私がお嬢ちゃん!?」


「ま、まあまあ、サツキ。僕も坊や扱いされてるし、リサはこんなあどけない姿だけど、悪魔でボスなんだから……」


「そ、それもそうだったな。あくまでボスか……」


「えっへん!」


 まるで僕らを従魔にしたかのように勝ち誇った顔のリサが、なんだか凄く本来の意味で悪魔っぽかった。まさに小悪魔といえるような佇まいだけど、弱点も知ってるし何より可愛いからいっか……。

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