やりないことリストで友達を成長させてやる

おりゅう

第1話 きっかけ

朝6時、俺は友達の本田 文久(ほんだ ふみひさ)からの電話で起きた。

「なんだよ、こんな朝早くに・・・」

寝起きということもあり、あくびをしながら俺が言う。

「大切な話がある」

その声はいつもの彼の声とはどこか違い、俺は目が覚めた。

「ん?どした?」

「お金を貸してほしい」

「え?」

彼は就職していて、俺は大学生。俺はバイトをして貯金もしているため、確かにお金は俺の方が持っているしかし、彼もお金に困っているわけではない。嫌な予感がした。

「・・・いくら?」

「30万」

頭が真っ白になる。

(おいおい、俺らまだ、19歳だぞ)

「何があったの?」

「話すと長くなるんだけどね」

(ああ、朝から、友達からお金を貸してほしいと言われる日が来るとは、しかも30万・・・)

そんなことを思いながらも、俺は彼の話を聞いた。

「いや~、街中歩いていたらね、キャッチにつかまっちゃってバーに入ったらいつの間にか30万だったんだ」

「え、おしまい?」

「うん」

・・・言葉が出なかった。

文久は中学生の頃の友達で、帰りに家の前で勉強したり、遊んだりしていた。

中学を卒業し、しばらく電話などをしていたが些細なことで喧嘩し、約2年、縁を切っていた。しかし、大学生になった俺は、人と縁を切るのがもったいないという考えを持っていた。

確かに、人と縁を切ることで自分の時間が無駄になるかもしれない。でも、俺は切りたくないと思ってしまったのだ。俺は昔から欲張りで、欲しいものは全部買い、やりたいことは全部やってきた。その時も縁を切りたくないと考え、メールした。LIMEはいつの間にか文久が退出してしまったので電話番号で文久のアカウントを検索し見つけて送信!

(あれ?俺やってること怖くね?)とも考えたが気にしない♪気にしない♪

『俺、中学性の頃の同級生、折本 翔太(おりもと しょうた)だけど元気してる?』

3日ほどして返信が来た。

『うん、元気だよ。』

『今から、電話できる?』

これが、二人の2回目の出会いだった。

彼は、俺が言うのもなんだけど不思議な子である。まず、家ではとにかく電話に出ないのである。理由は、家族に迷惑をかけたくないから。一見、良い子の考えともとれるが重要な電話にも出ないのは、かける方からしてみれば大迷惑である。

今回の件も「親に言った?」と聞いてみたものの、答えは分かっていた。

「言ってない」

俺と彼の言葉が被る。

(だよね~)

家族には迷惑をかけたくない。だからといって、30万友達に借りるか?

「自分の口座に入っていないの?」

「あるよ」

「あるんかい!!」

じゃあ、この電話は何の電話だろうか。

「でもね、銀行の口座が止められているの」

ああ、そういえば。

何も知らなければ、俺をだましている言葉にも聞こえる。

しかし、俺は彼の口座が止まっている理由を知っていた。

5日前、文久が講座の暗証番号が分からないと電話をしてきた。何回やってもあかないと。

ああ、始まったと思った。そう、彼は暗証番号4桁も覚えることができない。俺に、暗証番号を教えて、俺が覚えている。俺は何もしないが、少しというかめちゃくちゃ心配である。

「ああ、きっと前、暗証番号打ち過ぎて止められたんだよ。」

コンビニのATMで暗証番号を何度も打ちながら焦っている不審者を想像し、不謹慎であるが笑いそうになりながら答える。

「あ、そっか。」

「そうそう、だから社長に言って少し抜けさせてもらいな」

彼は、日曜日だけが休みであり、日曜日は銀行の定休日でもあるため仕事中、抜けさせてもらう必要がある。それに、支払期限は2週間らしい。利子がつくかもしれないので早めに返した方が良い。

「わかった。」

それから5日後、文久は社長に言った。彼はホウレンソウを知らない。報告、連絡、相談。家族だけでなく、会社にも何も言えない。しかし、言うとなれば、どこまででも言う。彼は社長にバーで30万ぼったくられたことまで社長に言った。日曜日定休日で口座が止まってお金がおろせないことだけ言えばよかったのに・・・

「怒られた~」

電話越しに彼が言う。

「そりゃそうだ」

「一人で返しには行くなって言われた。」

(そりゃ、ぼったくりのバーに一人で行ったら、また、ぼったくられるかもしれないからな)

しかし、俺がついていかないことは彼も知っていた。まあ、当たり前だが俺は親から、人にはお金を貸さない、危険なところにはついていかないようにと言い聞かされてきた。それを文久にも伝えていたため、彼のお金を貸してほしいという電話がきたときはとても驚いた。

「親についてきてもらうの?」

この答えも俺は知っていた。

「ついてきてもらわない」

また被った。

「じゃあ、どうするの」

「一人で行く」

「さすがにさ、親に言えよ。確かに、迷惑はかかるかもしれないけどさ。言わずにそのバーの人が家まで押しかけてきたらどうするの?もっと迷惑かかることになるよ。ばれるより自分から言う。それが大事だと思う。」

厳しい言葉だと自分でも少し思うが俺が、思ったことを言った。

文久の親のことは、たまに文久に聞くがそんな厳しい人ではないことが感じ取れた。ただただ、文久が人に物事を言うのを怖がっているだけである。

3日後、文久とカラオケに行くために直接会った。

・・・カラオケに言っている場合じゃない気がするが。

「親に言った?」

あれだけ言ったから流石に言ったかと思ったが返ってきたのは

「言ってない」

その、一言だった。

「もう、一週間しかないんだよ。どうするの?」

「その話は置いといて」

ああ。まただ。彼は、相談してくる割に自分がその時話したくない内容があればこちらが心配していても冷たくあしらう。そんな奴ほっとけば良いと考える人も多いだろう。しかし、俺はそんな彼とも縁を戻した。自分で言うのもなんだがバカのお人好しだと思う。

それから3日後、彼がお金を払う日がやってきた。それまで何度か説得したが彼は一人で向かった。バイトが終わった深夜0時LIMEを見ると『支払った、緊張した』ときていた。それを見た瞬間、俺はとても安心した。何とか、無事に返すことができて良かった。

30万という金額はとても大きく、彼にとって大きな損害となった。しかし、彼はぼったくりバーというものを(あまりうらやましいものではないが)体験したのだ。しかし彼は、言っていた。「確かに30万円渡したはずなんだけど、1枚足りませんねって言われてもう1万渡したんだよね」と

ああ、ぼったくりバーに1回の支払いで2回ぼったくられるって何事だろう。

俺は周りから普通じゃないと言われる。普通じゃないと言われるのは嫌いだ。

彼も、周りから普通じゃないと思われている。俺には、普通を教えてくれるものは何もない。しかし、彼の普通じゃない行動は俺でも少し分かる。俺のわかる範囲の普通を彼に教えてあげよう。俺の欲しい環境を友達にプレゼントしよう。彼がそれを求めるかは知らないがやってみよう。

「ねね、文久、やりたいことリストつくらない?」

「いいよ」

これは、折本翔太が本田文久をやりたいことリストを使い、成長させる物語である。

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