キスのカタチは人それぞれ

翠柘。

不器用な僕の愛情表現

「今日寒いね〜」


「うん、そうだね」


本当はもっと近くで話したい。

手を恋人繋ぎして歩きたい。

ギュッと抱きしめてみたい。

たくさんの愛してるを伝えたい。


だけど、不器用な僕はそれが出来ない。

どうしても勇気が出ないのだ。

それに、空回りしちゃう気がするから。


「ねぇ、私といて楽しい?」


「え……、も、もちろんだよ!」


「そう……」


誰かと付き合うのなんて初めてだから、本当に、何も分からないんだ。

でも、こんなんじゃダメだって分かってるから。

だから、今日こそは届けたい。


「あのさ……!」


手を繋ぐ、抱きしめるを通り越して。

振り返った君の後頭部を引き寄せた。

勢い余って歯が当たってしまったけど、そんなのお構い無しに舌を絡ませてみた。

君が困惑しているのが伝わってくる。

息の仕方が分からなくて、苦しくなって離す。


「……っ」


君は何も言わずにただ俯いていて、僕は焦った。


「ご、ごめんなさい!」


突然君の身体が小刻みに震えだして、顔を手で覆ったかと思うと、恥ずかしそうに笑い出した。


「君、超大胆だね!」


それから手を握られて、身体がビクッと跳ねる。

君は真っ直ぐに僕の目を見つめた。


「でも、そういうところが好き!」


幸せそうに笑う君があまりにも愛おしくて、僕はもう一度、唇を重ねた。


「うまく伝えられなくてごめん」


「十分伝わってるよ」


見つめ合う僕らの間を、冷たい風が通り抜けた。

それを合図に、どちらともなく恋人繋ぎして、ピッタリくっつきながら歩いた。



さて、これからどこに行こうか。

画面の前の君ならどこに行きたい?

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