雪女の雪華と神狐の銀星のどたばた🍫バレンタインデー💝
天雪桃那花(あまゆきもなか)
第1話 ハッピーバレンタインデーは妖怪もお好き
こんにちはっ!
あたし、雪女の雪華だよ。
ママが妖怪雪女でパパが人間のハーフなの。
美人でパワフルでお茶目な雪女のママと格好良くてちょっと頑固でピリッと厳しい人間のパパは、大恋愛の末に結ばれたんだって。
でも、お父さんは人間だけど四神獣の玄武の生まれ変わりで、すっごい力も持ってるからちょっと他の人間と違うかも〜。
そんなハーフ妖怪なあたしだけど、人間の世界で暮らしてます。
学校大好き!
たくさん面白いことが起きるから楽しいんだもん。
そうそう、もうすぐバレンタインデーだよね。
あたし本命チョコはあげる相手がいないけど、今年も大好きな親友の絵麻ちゃんと友チョコ義理チョコ作ります!
粉雪が舞う寒い寒い朝、あたしは仲良しの幼馴染みと待ち合わせ。
学校へは毎日一緒に行くんだ。
雪はだあい好き!!
だってあたしは雪女だから!
寒いのへっちゃら、いっぱい降ってくる雪や町中に積もった雪を見ると元気になっちゃう。
自分でも雪は狭い範囲なら降らせることが出来るんだよ。
雪だるまだってすぐにぱぱぱ〜って作れちゃうんだ。
だってウフフッ、あたしは雪女ですから〜!
でも、この力のことは人間たちの前では内緒にするんだぞってパパに耳がタコになるぐらい言われてる。
ママはけっこう楽天家だから「見られたら見られたよ、どうにかなるって〜」って。
私の考えはママに近いかな〜? パパに知られたらうるさくお小言言われちゃうから黙ってるけど。
力の強い妖怪ってバレたら悪い人や妖怪に悪用されるかもしれないから気をつけるようにってあやかし稲荷神社の権禰宜さんの緋勇くん(パパと同じ四神獣)にも言われてる。
待ち合わせ場所は、あやかし稲荷神社の階段下前の田んぼのあぜみち。
見慣れたメガネ男子の可愛い顔した男の子がこっちに向かってぶんぶん手ともふもふの尻尾を振っている。
「雪華、雪華〜!」
「銀星〜、おはよっ」
「おはよう、雪華」
あたしの幼馴染みの銀星です。
正体は妖狐、妖狐のなかでも神に使える神狐なんだ。
銀星のお父さんは私たちの住む風森町の加護をする偉い神狐で、お母さんは人間だけど神獣使いという巫女の生まれ変わりなんだ。ってことで、銀星もあたしとおんなじ妖怪と人間のハーフ、半妖って呼ばれる存在なんだよね。
銀星とは生まれた時からいつも一緒。
幼馴染みでも弟みたい。
二人で妖怪探偵社を結成して、妖怪や困ってる人を助けてるんだ。
「もうすぐバレンタインデーだね。今年も友チョコあげるから」
「……友チョコか」
「あっ、銀星には――」
「僕には……?」
「ほぼ家族チョコかな」
「はあっ? 家族チョコって……」
「あたしたち家族みたいなもんじゃない」
「うーん。もうせめて幼馴染みチョコにしといて。あのねえ、僕だって毎年雪華の手作りチョコレート楽しみにしてるのに」
「はいはい、ちゃんと銀星の分もあるよ〜。今年はなに作ろうかな〜、知り合いがいっぱい増えちゃったからたくさん作らないと」
そう言ったらみるみる銀星の顔が不機嫌になっていく。
なになに? なんなの?
「むっとしてどうしたのよ、銀星?」
「もしかして茨木先輩とか天邪鬼兄弟にもあげるわけ?」
「うんっ。欲しいって言われたし、絵麻ちゃんと一緒に作ってあげるって約束したから」
銀星がますますむっとした顔になる。
むくれた顔の銀星、……ちょー可愛い!
実はあたし、銀星の拗ねた顔が好きなんだよね。
そんなこと言ったら怒られちゃうし、機嫌をますます損ねちゃうんだろうけど。
「ねえ、雪華は僕のことどう思ってるの?」
学校に向かいながら歩いていたのに、不意に銀星が立ち止まる。
「どうって?」
「前々から聞きたかったんだ。いや、ずっと昔からかな。……僕は雪華が大好きだ」
「あたしも大好きだよっ! 銀星のこと」
「いや〜、その……好きってどういう好きか分かってる?」
「分かってるよ〜。一緒にずっと過ごしたりしたいって思う好きでしょ?」
「僕は雪華を特別な女の子として大好きなんだよ? 雪華が誰よりも一番好きなんだ」
「私も男の子の中では銀星が一番好きかな〜。あっ、でもでも茨木先輩も天邪鬼兄弟もわん太も緋勇くんとオロチも好きだな〜」
銀星は頭を抱えている。
えー? なんで?
仲良しで好きな人って、女の子も男の子もたくさんいたらとっても楽しいから良いじゃない?
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