第37話、レベリング再開

 3週間後。

 俺は東京井の頭公園内にあるFランクダンジョン『むさしの』にやってきていた。

 俺のレベルは今『1』。

 最弱のままだ。


 そんな俺の前方に、高さ2メートルぐらいの樹木がある。

 その陰からグリーンスライムが同時に3匹飛び出してきた。

 レベル的に言えば、苦戦は必至。

 いや一方的に嬲り殺されてもおかしくない。


 だが。

 今の俺はのレベル1ではない。

 俺はスライムから全力で逃げつつ、仮眠スキルを発動する。


 体がグラリと崩れ、意識が途絶えた。

 次の瞬間、俺は草むらに寝転んでいる。

 したのだ。

 そんな俺を丸ごと飲み込もうと、グリーンスライムが飛び掛かってくる。


「ふっ」


 俺は一瞬で起き上がると、グリーンスライムの背後に回り込み、腰に差したナイフを抜いて一刀両断した。

 空中で真っ二つに裂けたスライムが、パシャッと水たまりに戻る。

 まるで水風船でも斬ったように。

 体が軽い。

 のだ。

 更には筋力も漲っている。

 胸板や肩周りが数センチはデカくなっていた。

 肌の色もうっすら赤くなっている。


 更に追撃で、もう1匹も斬る。

 スライムは俺のスピードやパワーに全く対応できていない。

 同じく水たまりに変わる。

 最後の1体も同様だった。


「ステータスが上昇しました」


 遅れて、ポケットに入れていたスマホから声が聞こえてきた。

 仮眠による『パワーナップ』の効果をステータスが認識して読み上げたのだ。

 ちなみにだがパワーナップに加えてスタミナが全く減らない状態になっているので、俺はレベル1でもスライムを圧倒できている。


 続けて、ピロリン♪ と小気味のいい音が聞こえる。

 今度はレベルが上がったのだ。

 俺はステータス画面を確認した。

 確認すれば、レベルが『2』に上がっている。

 振り分けポイントを筋力STRに充てると、俺は画面をスライドし、仮眠スキルも確認した。



 ──────────────────


[スキル] 仮眠(レベル9:2/500000)

 1回仮眠することで熟練度を1得る。消費スタミナ:1


 ──────────────────



 この3週間。

 俺は死ぬ気で仮眠を取り続けることで、頬白にレベルを吸われる以前とほぼ同等の水準までスキルのレベルを上げた。


 やり方は正直荒っぽかった。

 場所は汚れてもいい場所ということで、風呂場。

 風呂桶に買いだめしておいたポーションをドバドバ入れて、浸かる。

 そして耳にイヤフォンを付け、爆音でアラーム音を鳴らし続けると同時に、額や胸、背中や後頭部にトゲトゲの剣山を幾つも貼り付けて、仮眠スキルを発動して頭を壁に打ち付けるのだ。

 気絶して数秒後にはあちこちに貼り付けた剣山が打っ刺さる痛みとアラーム音で目覚めるようにしたのだ。

 更には目覚めたらなるだけスピーディかつ全力で頭を壁に打ち付ける。

 そうすることで、眠るまでの3秒と目覚めるまでの3秒をかなり短縮できる。


 このやり方だと、普通にやれば6秒のところ平均4秒で仮眠が取れた。

 そうすれば1時間当たり900回眠れるから、50万を900で割って約555。

 555時間でレベルが上がる。

 それをぶっ続けで3週間やり続ける事で、なんとかレベルを9まで上げることができた。

 お陰で俺の肉体や精神はぶっ壊れる寸前まで行ったが、そこはポーション風呂に浸かることとレベルアップへの期待でなんとか耐えきった。


 全ては俺をこんな目に遭わせた頬白を一刻も早く倒すためだ。

 放っておけば次の犠牲者が出るだろうし、何より俺がアイツを許せない。

 そのためにやれる事は全部やりきる。


 以下が俺が獲得した仮眠スキルの効果欄だ。



 ──────────────────



 レベル1:【即眠】どんな場所でも3秒で仮眠を取ることができる。


 レベル2:睡眠後に【スタミナ回復量UP(小)】の効果を得る。回復量は50アップ。

 

 レベル3:【即醒】仮眠スキルで眠った場合3秒で目覚める。


 レベル4:睡眠後に【パワーナップⅠ】の効果を得る。


 レベル5:【即夢】仮眠時に夢を見る。


 レベル6:睡眠後に【スタミナ回復量UP(中)】の効果を得る。回復量は500アップ。


 レベル7:睡眠後に【パワーナップⅡ】の効果を得る。


 レベル8:睡眠後に【スタミナ回復量UP(大)】の効果を得る。回復量は5000アップ。


 レベル9:常時【スタミナ自然回復(小)】の効果を得る。回復量は毎秒5。


 レベル10:睡眠後に【パワーナップⅢ】の効果を得る。


 レベル11:********************。



 ──────────────────



 これも頬白にレべルを吸われる前と同様だ。


 ちなみにだが、今日までの3週間、自分のレベルよりも仮眠スキルを優先して上げた事にも勿論理由があった。

 今スライムを瞬殺したように、スタミナやパワーナップの恩恵を得ることもその理由の一つだが、一番は【スタミナ自然回復(小)】を取りたかったからだ。


 この【スタミナ自然回復(小)】がある事によって、俺は凄まじいレベリングをする事ができる。

 それをするためには、少なくとも最大スタミナ値が『54』になるレベル『5』になるまではここでレベルを上げる必要があるのだが。


 そんな事を俺が考えていると、不意に動物園の檻のような臭いがしてきた。

 獣族のモンスターが現れた時の臭いだ。

 直後、


「ケラケラケラッ!」


 笑い声と共に、小学生くらいの体格をした緑色の肌を持つ亜人が俺の前に現れた。


『グリーンゴブリン』だ。

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