夏祭り 編
第30話 見える噂
修学旅行も終わり、家を出ることなく、しかし頭の中はいろんなことで一杯で落ち着くことが出来ずに、ただ一つの答えが出てきたところで振替休日が明けてしまった。
布団から出て、コンタクトを付け、制服に着替え、顔を洗い、寝癖を直す。
そして、いつもの時間に玄関のドアを開くとお隣さん、
「あっ、おはよう。翔真。」
「おはよう、陽菜乃。」
「なんか、いつもと雰囲気が違う気がするけど。」
「あ~。まぁ、眼鏡じゃなくてコンタクトに変えたんだ。そのせいかな。」
「あの、その、か、かっ。」
「か?」
「か、過去の翔真に戻ったみたいでなんだか嬉しいなって。」
「過去の俺?」
「いや、何でもない。ほら、早く行かないと、学校に遅れるよ。」
そう言って、陽菜乃は少し顔を赤くして、急ぎ足で学校へ向かって歩いて行ったので、俺も急いで着いて行った。
そして、修学旅行の思い出など、他愛もない話をして学校に向かっていたその時、
「翔真、センパーイ!!」
と後ろから声がしたと思えば、次の瞬間には俺の背中に何かがのしかかって来た。
俺はバランスを崩しそうになるも、何とか持ちこたえその正体を確かめてみると、
「麻衣か。久しぶりだな。」
「久しぶりだな。じゃないですよ。修学旅行中も連絡くれたのあの一回だけだし。振替休日中も一回も連絡くれないってどういうことですか!」
「すまんって。お土産、麻衣にシーサー以外にも買ってきたから許してくれ。」
「ホントですか?!それなら許してあげます!」
「ありがと。それじゃあ、離れてくれるか?熱い。」
俺がそう言うと麻衣は俺からすぐに離れてくれた。
こういう素直な所は良いところだ。
「先輩、今日は眼鏡忘れたんですか?」
「ん?ああ。ちょっと色々あって、コンタクトに戻してみたんだが、変か?」
「いやいや、そっちの方が私はカッコいいと思いますよ。」
「そうか。ありがとな。」
そう言って、俺は麻衣の頭を撫でてやると嬉しそうに彼女ははにかんだ。
すると、そのやり取りを見ていた陽菜乃が話しかけてきた。
「あの、こちらは?」
「あ~、陽菜乃は知らなかったっけ。麻衣は俺たちと同じクラスの戸田 大樹の妹だ。前からちょっと関りが合ってな。」
「なるほど。戸田君の妹さんですか。妹さん、ちょっとこちらへ。」
陽菜乃は麻衣を俺から離れたところに呼び、二人で何かひそひそと話して始めた。
そして、戻って来たと思ったら、「さあ、翔真。早く学校に行きましょう!」「そうですよ。先輩、早く!」と二人とも、なんだか仲がいい感じで足早に学校に俺を連れて行く。
学校に到着し、麻衣は自分の教室に行き、俺と陽菜乃も自分の教室に入った。
少しゆっくり登校しすぎたのか、ギリギリの時間に到着したので、すぐにチャイムが鳴り、朝の会が始まろうとしていた。
「よし、皆来たな。」
先生は微笑みながら皆に話しかけた。
「みなさん、おはようございます。修学旅行も無事に終わり、今度は夏休みが楽しみになってると思うけれど、一つ連絡事項で例年通り、この地区を中心に行われる夏祭りのお手伝いをお願いしたいと思います。この夏祭りは学校の大切なイベントであり、皆さんの協力が必要不可欠です。」
先生のそんな声が響き渡り、クラス中に興奮と期待で胸が膨らんだ。
もうそんな時期かと俺は思って周りを見渡していると、クラスの皆、特に男子が先生の話に真剣に耳を傾けていた。
夏祭りは、学校と地域が一体となって盛り上がる楽しいイベントであることには間違いない。だが、俺はなぜこんなにみんなが真面目に話を聞いているのかがあまり分からなかった。
それからも先生は続き、皆それを真面目に聞いていた。
夏祭りの話が終わり朝の会が終わると、大樹が近づいてきた。
「なぁ、大樹。夏祭りの話中、皆真面目に話を聞いていたけど、なんでだ?」
「なぁに、お前そんなことも知らないのか?」
「何なんだよ。」
「夏祭りの最終日に花火が上がった時に一緒にいたら、結ばれるって言い伝えがあるんだよ。だから、夏祭りの話を男ども含め、皆気になるんだよ。」
私は驚きと興味が入り混じった表情で友人を見つめた。
「へ~。夏祭りに、そんな言い伝えがあるんだ。」
「これだから、翔真は。まぁ、せいぜい、楽しめ。いや、お前は夏祭りの魔法に苦しむことになるのかな。」
大樹は微笑みながらそう言った。
★★★★★
この度は
「LOVE GLASSES ~俺への好感度が0の彼女と別れたら、学校のマドンナ達が言い寄って来た。~」
を読んでいただきありがとうございます!!!!
皆様のおかげで好評のまま節目の30話まで書くことが出来ました。
続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを押していただけると嬉しいです。
みっちゃんでした( ´艸`)
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