クラスマッチ 編

第13話 見える急降下

考査も終わり、ただただボーっと週末を家でゴロゴロ過ごし、月曜日が来た。

休みは何でこんなにも過ぎるのが早いのだろうかと頭の中で愚痴りながらもいつも通り陽菜乃と学校へ向かった。


学校に到着してしばらくすると


「朝のホームルーム始めるぞ~。」


と先生のが入って来て、友達と話していた生徒たちも自分の席に戻り席に着く。


「一回目の考査を乗りきったお前らにご褒美と言っていい行事の連絡が二つあるぞ。」


それを聞き、クラス中が少し騒がしくなる。


「1つ目は、みんな楽しみにしているだろう、修学旅行についてだな。」


そう言ってプリントを配り出す先生をよそに、より一層騒がしくなる。


「はいはい、静かに。今配ったプリントに三つの選択肢が書いてある。自分の行きたいと思うところを丸で囲んで来週までに出すこと。選択肢は沖縄、東京、北海道の3つだ。希望が多かった一つに行くことになるからな。分かったな~。」


皆、先生の話を聞かずに早々と周りのみんなとどこにするか話し合っている。

前の席の大樹もその一人で俺の方を向いて話しかけてきた。


「修学旅行だってよ。楽しみだな。」

「そうだな。」


そんな大樹の額の数字は変わらず69だ。


「そんなことより、大樹。お前、考査の結果は大丈夫なのか?」

「ああ、今日朝先生によく頑張った。赤点はなかったぞ。って言われたから心配ない。」

「それは良かったな。」

「それで、それで。修学旅行どこ行く?」

「そうだな。大樹は行きたいところあるのか?」

「んー、沖縄もいいし、北海道も。東京も俺ら田舎もんには捨て難いな。」


そんな話をしていると、先生が再び今度はさっきよりも大きな声で話し始める。


「そして2つ目は来週行われるクラスマッチだ。」


クラスマッチ。それはクラス対抗で行う球技大会のことである。

各競技の優勝と総合優勝があり、毎年、豪華景品があるらしい。


「詳細が決まったので報告しておくと、競技は三つでバスケ、バレー、サッカーだそうだ。男女別で出る競技とチームを話し合っておくように。そして、景品だが、総合優勝したクラスには学食の5回無料券が一人ずつに配られるそうだ。MVP賞もあるらしいから頑張るように。以上だ。」


そう言って先生が教室を出ていくとクラス内は喧騒に包まれた。


「修学旅行もだけどまずは来週のクラスマッチだな。」

「だな。大樹はサッカーやってたからサッカーに出るのか?」

「もちろん。出るからには優勝目指す。学食無料券はデカい。」


普通の場合、学食無料券それは大きい物だろうが陽菜乃にお弁当を作って貰っている身としてはそれほど引かれるものはない。


「翔真は何に出るんだ?バス…、いや無いか。」

「いや、今回はバスケに出ようと思う。」

「お、翔真がやる気とは珍しい。MVP狙いか~?」


ニヤニヤと何かを見透かしているような顔で俺を見てくる。

それもそのはず、この学校ではクラスマッチに関するどこかの馬鹿が考えたようなしょうもない噂が存在する。


『MVPを取った男は人生最大のモテ期が到来する。』


この噂、ホントだとは言い切れないが、嘘とも言えない。

モテ期が来るということは好感度が上がるということ。

好感度が見える俺に持って来いということで、決してモテたいという考えではない。

とは言い切れない。


「ほっとけ。クラス優勝目指すぞ。」

「ああ。翔真がバスケに出るなら俺も頑張らないとな。」


そんな会話で朝の時間は終わってしまった。






お昼、いつものように陽菜乃と弁当を食べていた。


「翔真はクラスマッチ何に出るの?」


と陽菜乃が聞いてきたので、


「クラスマッチか。俺は今回バスケに出ようと思ってる。」

「え!?バスケに!?ホント!?」


そう言って陽菜乃は身を乗り出し、俺に急接近して聞いてくる。

目と鼻の先に陽菜乃の顔がある。


「本当だけど、何で陽菜乃そんなに喜んでるんだ?」


俺がそう聞くと、陽菜乃は顔をプクっと膨らませ、腕を組みながら俺を睨んでくる。

これはすさまじく怒っているが可愛さの方が勝っている。

が、俺は陽菜乃の額の数字を見て、焦る。




89





は!?

一気に11も下がった!?

今の会話に何か気に障ることがあったのか。

俺は急いで陽菜乃のに尋ねる。


「俺、何かしたか?」

「別に。」


確実に怒っている。


「何かしたなら謝るから。」

「翔真、そういうとこ敏感に気付く癖に……。忘れてるならもういいです!お弁当も没収です!」

「え~。そんなぁ。」


そう言って陽菜乃は自分だけ残りの弁当を食べ始めた。

俺はそれをただただ、見るだけの時間が続いた。


結局、弁当も返されることなく、額の数字も89から戻ることは無かった。






学校の授業が全て終わり、俺はスマホを確認すると珍しく何件かメッセージが届いていた。


1件目は麻衣から。


『翔真先輩!クラスマッチ何に出るんですか?』

『俺はバスケに出ようと思う。麻衣は?』

『先輩バスケ出来るんすか!?意外です。私は私はバレーに出ますよ!』

『そうか、頑張ろうな!』

『ハイ!』




2件目は彩香から。


『翔真、修学旅行どこ選ぶ。』

『まだ決めてないな。何処も魅力的で。』

『なら、沖縄にしよ。』

『いいけど、どうして?』

木羽優きうゆ先生の出身地。聖地巡礼できるかも。』

『なるほど。そう言えばいくつか沖縄が舞台だったね。』

『分かったよ。友達にも沖縄にするようにお願いしてみる。』

『ありがと。』

『行けるといいね。』



俺はそれぞれそう返信して、陽菜乃の数字のことを考えながら帰路に就いた。






★★★★★★





ここから2話ほどスポーツが続きますが、必要な話なので男どもの暑苦しい話、よろしくお願いします。




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