第3話 見える嫉妬
ファミレスを出て、大樹と別れたあと、俺は本屋さんに来ていた。
最近ハマっているミステリーの作家の
本屋に入り、すぐさま新作の本棚に目的の本が平積みされているのを見つけた。
俺はその本を手に取ろうとすると、同じ本に手を伸ばした人と手が重なってしまう。
「すいません。」
俺はすぐに謝り、手を引っ込める。
そして、その相手を見て驚く。
「
そう、その相手は学校三大美女の一人、そして今日一度だけ話しかけられた相手、
大きな声を上げた俺に対して彩香は自分の口に人差し指を当てて”静かに”というジェスチャーをする。俺も本屋さんだったことを思い出し、慌てて口を押える。
彩香のそのジェスチャーはなんだかものすごく色っぽかった。
それから俺たちはそれぞれ同じ本を一冊づつ購入して近くの公園に腰かけた。
「増田さんも
「彩香。」
「ん?」
「彩香って呼んで。私も翔真って呼ぶから。」
「わ、分かった。」
「うん。」
それから一瞬少し気まずい時間が流れたが、すぐさま彩香が口を開く。
「
「俺も最近ハマっちゃって。今までのミステリーとは一味違うって言うか。」
「そう。引き込まれる。分かってくれる人がいて嬉しい。」
「でも、昔の作品がどれだけ探しても見当たらないんだよ。他の作品も読んでみたいのに。」
「それじゃあ、私が持ってるやつ貸してあげる。おすすめのやつ。」
「マジ!?ありが・・と。」
「うん。明日学校で渡すね。それじゃあ、私帰るね。」
そう言って彩香はヘッドホンをして帰って行った。
俺はその後姿を眺めながら、頭の中を整理していた。
彩香と話しながら彼女の額の上に書いていた数字のことを。
「さすがに、見間違いだよな。」
俺はそう思いながら帰宅したのだった。
次の日も
「角田さん、今日一緒にお昼ご飯食べませんか?彼女さんいないんですし怒られないでしょう?」
「そうだね。いいよ。」
「ありがとうございます!」
それからも途切れることが無く、陽菜乃と楽しく話すことが出来た。
相変わらず高感度は100のまま変わることは無かった。
学校へ到着すると、彩香がすでに来ていた。
「彩香、おはよう。今日、早いね。」
「おはようございます。これ、渡したくて。」
そう言って彼女が渡してきたのは、昨日話した本だった。
そして、彼女の数字を確認する。
「やっぱりか……」
「はい?」
「いや、何でもない。『芥川家殺人事件』?」
「はい。私が
「そうなんだ。それは楽しみだな。読んだら感想伝えるね。」
「はい。待ってます。」
彼女は微笑みながらそう言って、自分の席に戻って行った。
昨日のはやはり見間違いではなかった。
今話して、そして見て、確信した。
彼女の額の上に書いてある数字は
100
だったのだ。
「角田さんって彩香と仲良かったんですね。しかも、名前……。」
「そうなんだよ。昨日本屋さんで偶然出会って、たまたま好きな作家が同じだったんだ。坂原さんも読んでみる?」
「いいえ、私は遠慮しておきます。」
「そう?面白いのに。」
その時、陽菜乃の数字が99に下がった。
俺はどうしてか分からなかった。
何か今気に障ること言ったかな。
「それじゃあ、またお昼ご飯の時にね。」
俺は原因が分からなかったので、陽菜乃と別れ自分の席に着き、彩香に借りた『芥川家殺人事件』を早速、読み始めた。
その後お昼ご飯までの間に陽菜乃と話したとき、数字が98にさらに下がっていた。
これは何としてでも早急に対処しなければならないと思いながら原因が分からないまま時は流れていきお昼ご飯の時間になった。
「「いただきます。」」
俺は陽菜乃と声をそろえ、お昼ご飯を食べ始める。
「坂原さん、何か怒ってる?」
「怒ってません!」
陽菜乃は口を膨らませながら、顔をプイと背ける。
「嘘だ。何かしたなら謝るから。」
「いいえ、大丈夫です!」
「坂原さん。坂原さ~ん。」
俺が何度呼んでも陽菜乃はそっぽを向いてお弁当を食べている。
これじゃあいっしょに食べている意味がないじゃないか。
そう思った俺は
「坂原さん、そのお弁当自分で作ったの?めっちゃおいしそうだね。」
「そ、そうですか?」
「うん。俺なんて毎回コンビニで買った弁当だから手作り弁当はすごいなと思うよ。」
「それでは、明日から角田さんにも作ってあげましょうか?」
「ほんと!?」
「はい。その代わり、お願いしたいことが二つあります。」
「なになに?」
「これからも私とお昼ご飯食べて欲しいです。」
「もちろん!こっちからお願いしたいぐらいだよ!」
この時、陽菜乃の額の数字が99に戻った。
「そ、それと、な、名前で、……」
「ん?」
「名前で呼び合いたいです。」
「名前?」
「増田さんとは名前で呼び合っていたので、私も名前で呼び合いたいです。」
この時何で好感度が下がっていたのかがやっと分かった。
俺と彩香との関係に陽菜乃は嫉妬していたのだ。
何てかわいらしい子なんだ。
「分かったよ。…陽菜乃。」
俺がそう呼ぶと、陽菜乃は顔を赤くしながら
「は、はい。翔真、、くん。」
それからは陽菜乃の機嫌も治り、数字も100に戻り楽しいお昼ご飯となった。
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