第6話 奇襲
【奇襲】
家康は打ち合わせ通り先鋒で織田軍の砦を落とした振りをして籠城…それに続いて各隊も次々と織田軍の砦を襲撃少数の織田軍は直ぐに敗走して砦を落とされる。
勝ちイクサとたかをくくった家臣が半笑いで義元に話しかける。
「義元様、織田の砦は全て陥落しました…信長は城に閉じこもったままとの事です、どうやら降伏するのも時間の問題ですな」
「ふっ、ここで寝てる間に降伏の書状が届くか…だがな殺せ!
あんな男狂いの傾奇者は要らんヘドが出る‼ 織田の血筋は女子供全て根絶やしだ! 先鋒隊に伝えろ城の中で震える信長の首を持って来いと!
わしらは信長を嫌う百姓が持って来た酒でも飲むか…酒の肴は時期に届く信長の首だ!」
イクサ半ばで気を良くした今川義元はまさかの酒差し入れの術にハマった!
今川本陣が酒盛りを始めたと、知らせを聞いた信長は家康に伝令を送り出陣を命じた!
人目に付かない様にして家康の下にたどり着いた伝令だが、その苦労も虚しく砦に入ると直ぐに殺された。
織田、今川両陣営の伝令を殺して家康は予定通り籠城を決め込んで動かない。
信長は影武者に般若の面を付けさせた…今回は5人に影武者をやらせ先頭に立たせ出撃させた。
織田軍出撃と共に空から尋常じゃない雨が降りだした…雨雲が作る闇と雨音、そしてまさかの酒盛りで今川軍は織田軍の出撃に全く気付かなかった。
織田軍の出撃に合わせて降りだした雨は激しさを増し落雷が鳴り響く…織田軍は今川本陣に突撃した!
勝ったも同然と雨をしのげる場所に固まって酒を飲んでいた今川軍の目の前に突然、般若が軍勢を引き連れ飛び出してきた!
今川軍は盛大に驚いて慌ててふためいた‼蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う今川軍…
織田軍が容赦なく襲いかかり落雷の如く蹴散らす!
たまらず激を飛ばす今川の武将達!
何事だぁー!
織田が来たのか!
狼狽えるなぁー!
迎え撃てぇー!
だが、織田軍の勢いは止まらない…義元目指して突き進む。
叫ぶ織田軍の兵士…
「今川義元の首を取れぇー!!!」
「わしの首だと、笑わすなぁー!!貴様らごときに取られるか…叩き殺してくれるわ!」
織田の兵士が我先にと、今川義元を目指し突き進む‼
義元の盾になり迎え撃つ今川の兵士達!
二手に別れて戦う合戦と違い、敵 味方入り乱れての乱戦だ…生き残りを掛けた合戦に兵士達は狂った様に剣を振り回し同士討ちもあちこちで起きている有り様…
何百もの命が散って逝く…
まさにこの世の地獄!!!!
戦いは織田軍優勢のまま進み、とうとう今川義元はまわりを織田の兵士に囲まれる!
切り付けて来る織田の兵士を叩き切る義元!
凄まじい生への執念を見せる‼
鬼の形相の義元が
怯む若い兵士を切り捨てた!
惨劇を繰り広げる狂戦士達…
織田の兵士が義元に後から掴み掛かる!
前にいた織田の兵士が義元を槍で貫いた…義元に掴み掛かる後ろの若武者もろとも串刺しだ!!
まだ息のある義元が槍を刺した兵士の喉に刀を突き刺す!!!
織田の狂戦士達が一気に義元に群がった!!!!!
そして…
地獄の祭りは終りを迎える…
今川義元の首を取ったぞぅー!!!!
うおぉー!!!!!!
吠える織田軍!!!
怯む今川軍!!!
総大将を取られた事が兵士の士気を乱す…
織田の各砦を落とした武将達が本陣に戻り織田軍と戦えば今川軍は圧倒的“数の力”で勝利したはずだが、総大将を取られて冷静に状況を把握出来ず逃げ惑い今川軍は勝てるはずのイクサで敗北した…
信長の奇襲攻撃に都合良く雷雨が降り、まさかの酒盛りや今川の武将達の錯乱具合など様々な出来事が重なり信長を勝利に導いた…
この奇跡は戦国の悪魔が信長に手を貸したからかも知れない。
織田軍一番砦 徳川軍
様子見で籠城している家康にも信長の勝利が伝えられた…
期待はしていたが信じられない思いに捕らわれる家康…だが信長に出陣してない事を咎められる前に、そうそうと退却していく。
このイクサで織田今川の両軍に良い顔しただけの家康は、なんと帰り道で今川に取られていた城がもぬけの殻なのを偶然見付けまんまと取り戻して居座るのだった。
永禄五年
徳川家康居城
城をせしめた家康は、城の明け渡しを言われる前に今川家の拠点である牛久保城を攻撃して反旗を翻す。
家康がこのタイミングで動いたのは、今川家と同盟の武田信玄が関東に進攻していて援軍に来れない状況に加え、織田信長とのイクサの傷がまだ今川軍は癒えて無い…それに対して徳川軍は桶狭間の戦いではほぼ無傷…叩くには絶好のチャンスと言う事だ。
激戦ではあったが今川軍に勝利して家康は西三河を攻略した。
家康は岡崎城に古参の重臣達を集めて、信長と同盟を結ぶ承諾を得るつもりだ。
「今川氏真を取るには織田家との密約を正式な同盟にする必要があると思わないか?」
「確かに隣国の織田が攻めて来ないとなれば今川に集中出来て戦い易くなりますが…織田家とはいささか因縁が多すぎると」
徳川と織田は互いに前当主のころ敵対していたので古参の中には織田家に怨みを持つ者が多い。
「だが過去の事…お前達古参の重臣がその過去を水に流せば徳川は復活してよりでかくなる‼」
「…しかし…離反者が出るのでは」
「徳川の為にはそれも仕方無いか…」
翌日、家康は正式な同盟を結ぶため西三河平定を土産に信長の下を訪れた。
「信長様この度、西三河を平定した事の報告に上がりました」
家康は桶狭間の戦いで出陣しなかった事などおくびにも出さすに切り出す。
「つきましては我々の密約の件ですが…正式に同盟を結んで頂きたいと思いまして…」
「そう堅くなるな、何年振りかしら?弱虫の子供が立派に成ったわね」
信長の子供の頃と変わらぬ対応に安堵した家康は同盟を確信して当時の様に信長を呼ぶ。
「姉様も昔にも増して美しく成られておりますね」
「ありがとう。貴方が同盟国なら私も嬉しいわ」
「この家康も姉様の力になれて嬉しく思います」
「家臣達が徳川との正式な同盟を急げと五月蝿くて、ちょうど連絡しようと思ってた所よ」
「美濃の斉藤ですね…」
「そう、龍興の代になってから生意気なのよ」
「我らも三河全土を平定するために今川氏真を倒さねばなりません…お互い早急に同盟を組む必要があると思ってます。積もる話もありますが同盟の調印を先に済ませましょう」
桶狭間の戦いを制して徳川を同盟国にした事で、織田信長は天下に力を示した!
今や各国の大名に知られた存在になった信長はもちろん、家臣達も有頂天になっていた。
信長は、結果を出した者への褒美に寛大だ…そのため有頂天の家臣達は信長を御輿に担ぎ上げ褒美と出世の為に命懸けのイクサも驚くほど自主的に参戦していた。
参考文献
織田信長Wikipedia
桶狭間の戦いWikipedia
徳川家康Wikipedia参照
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