第4話 斬首
【斬首】
魍魎の屋形に、信長の見舞いに来た信行、蔵人、勝家達三人を出迎えた信長は生気に満ちている。
「兄上…お身体の方はもう宜しいのですか?御病気と聞き駆けつけましたが…」
釈然としない信行の言葉を無視して御前を呼び出す信長。
「母上、信行が見舞いに来てくれましたよ」
「まぁ信行、わざわざ来てくれたの…」
「…これは…どう言う事だ? 兄上が病気だと聞いて見舞に来たのだが……」
上機嫌の信長と困惑する信行を見て不吉な予感に慌て出す御前だが、時すでに遅しだ、勝家が突然立ち上がり号令を掛けた!
「出合えぇー!!」
刀を持った家臣達が表れ信行と蔵人を取り押さえる!
勝家の裏切りに怒り、怒鳴る信行。
「勝家ぇ~‼ 貴様謀ったなぁー!!」
すかさず、信長が場を仕切る…
「黙れ信行! 二度に渡り私の暗殺を企むとは…お前の赦免は取り止めだぁ!」
半笑いで御前に話し掛ける信長…
「母上ぇ~!これはもう殺すしか無いねぇ~しょうが無いよねぇ~」
御前は悲痛な叫びで信行の命乞いをするが、信長は高笑いでその様を見て家臣に命令を下す。
「仕方無いなぁ~これは… 二度目だからねぇ~! しかた 無い なぁ~コ・ロ・ス ・ しか無いよぉ~
く・び・を・き・れ~~~‼」
御前の目の前で信行の首が跳ねられた!
ザシュッ
叫ぶ御前…
ギャアァ~!
アァ~!
ガァ~アァ~!
首の無い胴体から噴水のように血が吹き出す、その血を浴びながら拾い上げた信行の頭をつなげようと叫びながら胴体に押し付ける御前… もはや正気では無い!
「御前、貴女はこの暗殺計画に無関係のようね……んっ…… ?
聞いてる? …
あぁ… もう何も分かりそうも無いけど…
貴女は… このまま一生不幸な女として、そのイカれた頭で生き恥を晒してなさい フフッ」
こうして家督争いを残虐に終わらせた信長は、尾張全土を制して尾張国の支配者に君臨すると、独裁者振りにも拍車が掛かり、狂気と残虐性を増幅させて魔王はさらに邪悪になる。
【嫉妬】
最近、信長に呼び出される事が無い前田利家は新しい小姓で信長に可愛がられてる捨阿弥に嫉妬心から憎悪を抱いていた。
… 拾阿弥の奴…信長様に気に入られてると思っていい気になりやがって! しかし、拾阿弥に向ける信長様の優しさはなんだ…クソがぁ ……
嫉妬に身を焦がす利家は拾阿弥に信長から身を引くか 今死ぬか決めさせると言うとんでもなく勝手な理由で人気の無い場所に呼び出した。
しかしいつまで待っても拾阿弥はその場所に現れなかった…
拾阿弥はそもそも利家の呼び出しに応じる気などまるで無かったため当然利家は待ちぼうけになる。痺れを切らした利家は拾阿弥の居場所に当たりを付け探しだす。
… やはり、考えたく無いが信長様の所か …
拾阿弥が信長のお気に入りになった位から、利家は信長に避けられる様になった。それまでは、事あるごとに呼ばれて信長と共にしていた、ならば最近迄の利家がそうだった様に拾阿弥は信長様の所に居るはず。
… 何時もの溜まり場には居ない…となると城か、屋形 …
やはり信長と一緒だった拾阿弥、利家は拾阿弥と二人で話があると信長に切り出した。
「俺はお前などと話す事は無い…」
ただでさえ気に入らない拾阿弥の態度に怒りだす利家。
「貴様 立場をわきまえろ‼ 誰にものを言ってるつもりだ!」
信長は無言で二人を見ているだけだ。
「立場をわきまえろだと… それは、お前だろ。
お前はフラれたんだよ! いつまでも付きまとうな、まったく未練がましい。
今は、俺が信長様のお気に入りだ!お前はお払い箱何だよ‼」
利家もそんな事は分かっていた… ただ考えたく無かったのだ…
それを選りに選ってもっとも言われたくない拾阿弥などに指摘された…
嫉妬に身を焦がす利家は怒りを通り越して蒼白く冷静な殺意が沸き上がる!
「良くわかった、貴様の腹の中…
信長様を盾にした見事な迄のゲスぶり。
貴様は死ね‼」
「何だと てめぇ~! 俺に刃向かうって事は信長様に刃向かうって事だぞ… 良い度胸だ!」
「いい加減にして!」
信長が口を挟む。
「信長様からもハッキリ言ってやって下さいよ、こいつに お前はもう要らないと… 」
勝ち誇った顔の拾阿弥が信長に催促する、しかし信長はどちらの味方もせずその場を離れようとする。
「貴方達が争う事は禁じます。どちらも私の可愛い小姓、下らん事で私を困らせるな…
私は、もう寝ます…貴方達も今日は帰って頭を冷しなさい…これは命令です」
拾阿弥への嫉妬に狂う利家は信長の言葉を都合良くとらえる…
利家と拾阿弥が争うと信長様が困る?ならば簡単な事… 拾阿弥が居なければ争わないですむ!全ては拾阿弥が悪い、と結論付けたのだ。
「困らすのも今宵限りです」
そう言うと刀に手を掛ける‼拾阿弥は勿論 信長も青ざめた、利家は凄まじい早さで刀を抜き拾阿弥を切り捨てる‼
流石の信長も これには驚いた! 拾阿弥は肩から裂け内臓が見えている完全に即死だ。
見る見るうちに激昂する信長が叫ぶ。
「貴様ぁ~!
私は争うなと言ったはずだ!私に逆らうなぁー!」
「信長様を惑わす輩を切り捨てた…
貴方のためです」
「やかましいぃ~‼
誰か利家を捕らえろぉ~!」
集まって来る家臣達に捕らえられまいと利家が逃げる。
利家の背中に信長が叫ぶ。
「逃げるなぁ~! 利家ぇー!腹を切れ! これは拾阿弥を殺したからでは無い‼ 私の命に背いた罪だぁー!」
利家は嫉妬から拾阿弥が憎いと言う感情に任せ、拾阿弥を切り殺した!
その事に後悔はして無い… だが信長の目の前で殺し信長の逆鱗に触れた事、最愛の人に嫌われた事を悔やんだ。
信長の命令に背き拾阿弥を殺した利家は罪人になっている、だが利家は織田家の家臣達に評価が高い、信長が 尾張をまとめるのに利家の働き無しでは語れないほど貢献しているからだ。
利家が城を逃げ出し五日ほど経った頃、事件の全容を調べた重臣達が信長をなだめる… 事件から五日間経ったのが良かったようだ、もし事件の直後だったら信長が考えを変える事は無かっただろう…重臣達の説得で利家の罰は切腹から驚くほど減刑され、出仕停止処分となった!
信長にとって利家はやはり可愛い存在なのだろう… 出仕停止処分は解雇と同じ様なもの死罪からではあり得ない減刑だ。
出仕停止処分に減刑された利家は本来大喜びする所だが、信長に会えないのが死ぬほど辛いようだ…
人を殺してでも信長の側に居たと思う男だけあって、側近に返り咲く事だけを考える利家は織田軍のイクサに単身で許可無く参戦する様になる…
手柄を挙げる事で織田家の家臣に戻して貰うつもりでいる、イクサで死ぬかもしれないがそんなことはお構い無し、まさに命懸けの恋だ。
※参考文献
前田利家Wikipedia
岩沢愿彦『前田利家』吉川弘文館〈人物叢書〉、1988年(原著1966年)、新装版。ISBN 4-642-05133-3。
花ヶ前盛明編 『前田利家のすべて』(新装版) 新人物往来社、2001年。ISBN 978-4404029478。
大西泰正編 『前田利家・利長』 戎光祥出版〈織豊大名の研究 第三巻〉、2016年。ISBN 978-4-86403-207-0。
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