姫と剛力

@180point

第1話 グルーティアス

私の名前は『咲姫サキ』、今年で24歳になる至って普通のOLだ。


今、私は学生時代から付き合って8年になる彼…『剛(ツヨシ)』くんからプロポーズを受けていざ結婚しようとしている。


――――しかし。


「普通ありえないでしょ⁉そんな理由で通ると思ってるの⁉」


「いいじゃんかよ!絶対に咲姫の両親だって喜ぶって!」


「はぁ?父さんはともかく母さんには昔から言って理解も獲られてますぅ!

勝手に自分の都合の良い解釈しないで下さーい!

その大臀筋、毟り取って隣のボルダリングジムの壁に貼り付けるよ?」


「ケツの筋肉は関係無いだろ⁉

ともかく、俺は絶対譲る気無いからな!」


「私だってそこだけは譲歩出来ないから。

無理なら離婚だから!」


「…アンタらまだ婚姻届書いた直後やん。」




絶賛です。















―――――――――――――――


〜約8年前〜


「いやぁ助かったわぁ、今年で3年生はマネージャーであるウチも含めて引退やから後続がらんくて困っとったんや。

ありがとう!えーと…。」


「あ、咲姫って呼んでください先輩。」


「オッケーイ、サキちゃんな。

ウチは『大桐オオギリ 陽菜ハルナ』、ハルちゃん先輩って呼んでくれたってや!」


私は高校に入学してマネージャーとして水泳部に入部し、プールサイドでハルちゃん先輩なる関西弁の馴れ馴れし…フレンドリーな先輩から説明を受けていた。


「ここがプールで備品はあっちの倉庫…うんまぁ、あとはやっていくウチにおぼえるやろ!

所で、サキちゃんはなんで水泳部に?

中学の時やってたけどここには女子水泳部ないからとかそんなん?」


「………。」


「…サキちゃん?」


「あ、スイマセン。

水泳は特にやってなかった…んですけど。

部活動への所属が必須…だったので。

それに、ここの水泳部は…割と強豪ですしうわデッカ…。」


プールサイドで説明されてるのはよろしくない。

ひじょーーーーーによろしくない。


「…おーい、サキ女史ー?」


「と、言うわけで強豪校のマネージャーをやったら大学受験に有利かなと思った訳であります!」


「動機が不純やでー?

と言うかさっきから選手の準備運動チラチラ見てるのバレてるでー?

鼻血を拭いたらホンマの入部動機を正直に言いなさい。」


「はい!引き締まった男の筋肉らたいが見放題と思いました!

男子更衣室はどこですか?」


ティッシュを鼻に詰めながら高らかに答えた。


「正直でよろしい、誰が教えるかアホ。

でもまぁ、モチベが一つあるならえとしますか!」


「だって、今ストレッチしてる色黒の先輩は背中が化け物みたいにゴツゴツですし、その隣の先輩は多分だけど女子わたしよりおっぱいでかいでしょ?

長年水泳してきたのが筋肉に反映されててアレだけで米が無限に食えて血糖値爆上がり糖尿病待ったなしですよ!」


「…頼むから警察と病院のお世話になるような事は在学中はせんでな?」


「刑務所にドーピングで捕まった女子プロとか背中に般若を背負った看守が居ない限りは法の範囲内で筋肉をオカズにするので安心してください。」


「直前に更衣室の場所聞いてた女から言われても信用ならへんのやわ、これが。」


「ん?ハルちゃん先輩、今入ってきたエロいケツの人って高校からですか?」


ふと横を見ると長身で色黒、そしてまぁまぁのイケメン(私調べ)がプールに入り、ストレッチを始めた。


「エロいケツって誰やねん…。

って、か…そうやけど、どして?」


「いやだって、他の選手は線が細いのに肩幅が広くて如何にも〜って感じで『服買う時肩幅狭いかビッグシルエットの二択だろ!』ってツッコミたくなるのにあのケツは水泳選手ってよりもボクサーやプロレスみたいな体幹や下半身にも言い方は悪いけど筋肉ついてるな〜って思ったんで…ってヒメちゃん⁉︎」


「うん、ヒメちゃん。

姫乃ヒメノ 剛って名前だからヒメちゃんって呼んでるワケや。

それにしてもサキちゃん目が良いなぁ…ってどこ行くねん!」


気づいたら私は彼の元へ走っていた。

今思うとそんなに急ぐ必要もないのだけど、ついに見つけたに向かって駆けていた。




その結果…。


「ううぇ?」


いつの間にか蹴っていた地面は存在せず、視線の真ん中に捉えていたエロい大臀筋は姿を消してそこには男の脚が無数に生えた酒池肉林…もといプールの中が映されていた。

そう、私は


「ちょっ⁉︎何してるんだお前⁉︎」


泳げない訳ではないが、咄嗟のことで体が動かずに水中でもがく私を見て周りの筋肉の樹海が驚きながら向かって来る中、(恐らく)私が向かっていた方向からドボンと言う音と共にいち早く向かってくる腹筋。

先程の工口尻ヒメちゃんに抱き抱えられて私は救出された。


「大丈夫か?」


「ゲホッゲホッ!」


「水飲んだか?えーと…こう言う時は…。」


水から引き上げたは良いがその後が分からない高校生いっぱんじんがオロオロしてるが私は『大丈夫』と示すように手をかざし…。


「Cカップ…いや、下手したらDやEカップレベルはある?」


そのまま混乱に乗じて彼の胸を揉んだ。


「おーいサキちゃん生きとるー⁉︎

アカンやん、『プールサイドは走るな〜。』て小学校でも言われとるやん。」


「まぁ、アンダーも太いから実際は分からな…あ、ハルちゃん先輩。

大丈夫で〜す、生きてま〜す!」


「…多分アンタでも足が着くと思うから下ろして良いか?」


「あ、はい。

その前に先輩、



。」


「「…は?」」


部活動前の喧騒の中、二人の先輩の声が静かにプール内に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る