第5話 地上の花婿(葵side)①

 まどろみの中で、良平の声がした。


「葵、おめでとう」


 何がめでたいんだ?


 そう思いながら目を開けて自分を見下ろして見れば、いつの間にか白いタキシードに身を包んでいる。


 なんだこれ!

 こっぱずかしくて、こんなの着ていられるか!


 急いで脱ごうと上着に手を掛けたら、良平が笑い出した。


「おいおい、花婿なんだから着崩すなよ」


 花婿って、俺のことか?

 どういうことだろう。俺は一体誰と結婚するっていうんだ?

 

 未来の話か?


 いや、そんなはずはない。


 俺は陽以外と結婚する気はないんだから。

 

 驚いた顔を良平に向ければ、良平が呆れたように言った。


「おい、何ぼーっとしているんだよ。お前もマリッジブルーなんてなるのか? んなわけないよな。ようやく竹内と結婚できるんだからな」


「陽との結婚?」


「そうだよ、葵。今日はお前と陽ちゃんとの結婚式だ」


 そうか……陽とようやく結婚できるんだな。


 俺は驚きよりも安堵の方が大きかった。


 やっと―――陽に会えるんだ。

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