第12話 魔王と勇者
「....おい!しっかりしろ!」
子供の魔物を抱えながら俺は逃げる。
「逃げるなよ」
奴は剣を抜く
ヤベェ、来る
俺もすかさず剣を抜く
奴は剣をたった一振する
無音だった、無音ではあったが辺りの木が全て斬り倒される。
大木すらもだ。
「斬撃でこれかよ....」
俺は何とか、自身の大剣で防御する。
「....テメェ頭おかしいんじゃねぇのか?」
「そのガキを渡せ、でなければ貴様を切る」
「渡しても切るだろ」
上から巨大な何かが降ってくる。
「はっはー!よく分かったな!その通り!渡しても殺すし、渡さなくても殺っす!」
「おいおい、今度は超パワーさんか?ガキと若者二人相手に、そんな殺す気マンマンって......卑怯じゃねぇのか?」
「....若者?冗談はやめろ」
「いや、冗談じゃないって!俺、18....」
「って!おい!」
超パワー男が殺しにかかってくる。
何とか避けるが、後ろの木が木っ端微塵に弾け飛ぶ。
「話してる途中だろ!ふざけんな!」
「知らねぇよ、死ね」
おい、目がマジだ
お約束はどうなってんだよ!お約束は!
話がちげぇ!
いや、まぁ?
最初っから殺す気だって宣言してるわけだから、違うって訳でもないんだが
でも、人が話してる時は最後まで聞くってのが物語のお約束だろ!
「なんで、こんな世界に転生したんだ!俺!」
俺は大剣で後ろの大木を斬り逃げる。
――――――
「あ~ぁ、逃げられちまってやんの、どうする?追うか?」
「いや、追わなくていい」
「なんで?」
「あのガキはたまたま“居た”から追ってただけだ、命令とは違う」
「....?成る程」
「分かってないだろお前」
「いや、分かってるぜ?取り敢えず、命令された事をしようってことだろ?」
「....分かってるなら良い、だがあのガキは報告しおかなくてはな」
――――――――――
「ッチ!追ってきてんのかどうかもわかんねぇ!殺気消すの上手すぎだろ」
俺は何とか走って走って走って....
「ダンジョン....」
ここにきてダンジョンかよ。
ただ、追ってきてるのが分からねぇ、ガキの命も危ない。
「....となると、入るしかないか」
ダンジョンに入って奴らから身を隠す他ない
「ガキ、後はお前の運で決まる」
「気張れよッ....!」
気絶しているガキに、そう伝えダンジョンの中に入る。
――――――――――――
ガチャッ
ドアが開く
先程まで柔らかい雰囲気だったのが一気に殺気だち、開いたドアの方を見つめる。
ドアから1人の人間と、牛人族の子が怪我をしている。
子供は、人間にお姫様抱っこをされている。
「助けてくれ!」
ドアを開け、入ってきて開口一番がその一言だった。
皆が武器を取ったり、攻撃魔法の準備をする。
僕も剣を抜こうとし、警戒する。
だが次に出た言葉は、この場の誰も予想していないものだった。
「テメェら、指名手配中の魔人だろ?俺は殺されても良いから、こいつを助けてくれねぇか!?」
ウーさんと餓鬼さんはその言葉を聞くと武器を置き、セリナさんは攻撃魔法を打とうとするのをやめる。
警戒を解いたのだ。
僕も同様に警戒を解く
「....何があったか知らんが、分かった」
「本当か!」
入ってきた人間は、その言葉を聞くと嬉しそうな顔をし確認してくる。
「ただし、条件がある」
「あぁ、何でも聞く!だから頼む!」
―――
「....なぁ、だからといってこれは無いんじゃないか?」
大剣を持っていた人間は不服そうに話す。
「何がだ?」
「いやぁ、よぉ....」
何か話そうとするが餓鬼さんが遮る。
「無茶言うな、命があるだけでもありがたく思え」
「だとしてもよぉ、椅子に縛り付けるってのは無しだろ?」
「まぁ少し、やり過ぎ感は否めないですね」
スイの優しさを見て、大剣持ちの人間はなんとも言えない表情をし、スイに話しかける。
「そうだろう?スライムの女の子、君だけだよ俺に優しくしてくれんのわ!」
だが次に話す言葉で、スイすらも引くような発言をする。
「ところで君可愛いね、俺の仲間にならん?」
それを聞きスイはゾッとした顔をする。
「あんまり馴れ馴れしくしないでください」
ゾッとした顔で変人に言うと、変人は思わずショゲる。
正直、こんなスイの顔見たことがない
「んで、何でこんなところに魔神御一行様が居るんだ?」
変人は、話を切り変えようとしたのか、疑問を僕らに投げ掛ける。
「理由なんか話すわけ....」
モカが言い返そうとしたタイミングで、制止させようと僕は手を前に出す。
「理由は....話してもいい」
「お!マジか!?」
「が、名前と、何でここにいるか教えろ」
僕は、この男に情報を与える代わりに、交換条件を与える。
「えぇ~」
とてつもなく嫌そうな顔をする。
まぁ、理解は出来る。
だが、それとこれとは別だ。
「嫌ならいい、記憶を消して人間の町に転送する」
「ん~?ん?んん?」
変人の男は唸り声にもならないような、そんな声で悩み続ける。
「んー、まぁ、いいよ」
ようやく決心が着いたようだ
「まぁ、助けてくれたしな」
「俺の名前は....
山月 望 18歳
異世界転生者で....」
「“元”勇者だ」
(いやぁ、山月君!最高!さて次回は3月18日です。1週間空いてしまいます。本当にすみません。)
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