第10話 獣人と姉弟

リビングに向かうためセリナさんの研究室を後にし、リビングに入る。

そこには綺麗な容姿をした二人の男女がいた。

といっても歳は幼く、容姿端麗ではあるが頭の上に獣の耳がある。

所謂、獣人と言われる種族だろう。


「すごいな、餓鬼さん」

僕が、彼らを見た第1声はこれだった。

それもその筈だ、獣人は人間サイドであり魔物や鬼である餓鬼さんに懐くことは無い。


種族の生態として挙げられるのが


人に懐きやすい

人以外に懐きにくい

恩を忘れない

主人を決め、主人には絶対服従する

戦闘能力が他種族に比べ、ずば抜けて高い


の五つが挙げられる。




「あぁ、帰る途中に拾ったんだ」


「にしても獣人を仲間になんて....良くできましたね」


それを聞いて、ウーさんは餓鬼さんに言う

「俺も驚きでした!でも、一番驚いたのは....」

「こいつが人助けをしたことですけどね!」


そのウーさんの言葉を聞いて餓鬼さんはキレようとする。

しかし、獣人の男の子が餓鬼さんの前に颯爽と移動し、ウーさんを睨み付ける


「モカ!ウーさんは師匠の兄弟のような者です!敵意を向けるのは失礼ですよ!」

もう一方の座っていた獣人の女の子が男の子に注意を促す。


「でもよ!姉ちゃん!」

ウーさんを睨んでいたモカという男の子は、女の子の方を向き言い訳をする。


「はぁ....それに今は、師匠の主様もいるのですよ、まずは挨拶が先でしょう?」

モカの姉らしき女の子はため息をつきながら、席を立ち僕の目の前まで来る。

目の前まで行くと、お辞儀をしだし自己紹介を始める。


「お初にお目に掛かります、獣人種のミールと言います....貴方が師匠の主様である、ライト様....で間違ってませんか?」


「あ....はい」

余りの礼儀正しさから困惑してしまい対応が、あたふたしてしまう。


「そして、こちらが弟のモカです」


先程までウーさんを睨み付けてた獣人の男の子は、紹介された途端こちらを向きお辞儀をすると、元気よく話し始める。

「モカと言います!獣人の10歳です!よろしくお願いいたします!」



「よろしくね、ところで....師匠って言うのは?」


僕の疑問にミールが答えてくれる

「餓鬼様の事です」


「成る程、二人は兄弟なんだ....でも何で餓鬼さんと一緒に行動してたんだ?」

先程も言ったが、獣人は恩を感じやすく、従順な生態系をしている。

ただ、もう一つの「人以外に懐きにくい」という点が問題なのだ。


餓鬼さんは鬼だ

所謂、妖怪といわれる種族に属する


にもかかわらず一緒に行動していることが単純な疑問だった。

それに、先程「帰る途中に拾った」と言っていた。

ということは、そこまで日が浅くないということになる

ならば何故、ここまで懐いている?

僕はとてつもなく考えを巡らせており、正直、この二人を疑っていた。


魔王か、人間の手先とまで考えていた


「ライト様、心配しなくても大丈夫ですよ」

ウーさんが僕の考えを察したのか、疑問に答える。


「俺も、最初聞いたときは驚いたんですけどね....どうやら、帰ってくる途中といっても10年も前の事らしいです」


ん?

10年前?


僕も、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまう。


「ここからは私が説明させて頂きます」

ミールが、ウーさんに代わり説明をし始める。


「私達の親は殺されました」


「殺された?」

ミールの口から語られたのは衝撃的な話だった。


―――――

私が2歳、モカが0歳....産まれたばかりの頃です

獣人の、私達の集落に火が放たれました

犯人は小さかったので分かりません

ただ、犯人は私達の集落に放たれた火に乗じて犯人は一件一件殺して回ったのです。

一人、また一人

悲鳴がなり続け、とうとう私達の家になりました

しかし、両親は互いに協力し合い何とか私達を逃がしてくれました。

ただ、父と母は私達を安全な場所に逃がしてから、少量の食べ物だけを残し村に戻っていきました

村に戻る前に言っていた一言が、私は今でも忘れはしません


「これからは二人だけで生きるんだ、姉としてモカを守っていきなさい」

「どうか生き続けて私達の宝物、二人とも愛してるわ」


この一言は今でも覚えています。

同時に私はモカを抱えながら、生きるために逃げました


そこから、人を探して毎日モカを抱えながら人を探しました。


ある日、赤ちゃんだったモカの泣き声で目が覚めると、私達は知らない場所に居ました

整理された道、道には食べ物が幾つか転がっていました

混乱しながらも食べ物を幾つか持ち、モカを抱え、人を探しました

そこで餓鬼さんに出会い、色々なことを教えて貰いました

戦い方や、食べ物の知識、知恵やマナー、戦闘での心構え何かも教えてくれました

いわば、私達にとって餓鬼さんは大恩人であり、戦いの師匠であり、育ての親なのです


―――――――――――


「....これが私達の過去です」

ミールは話終えると悲しい表情になる。


「そうか....大変だったな」

正直、この話を聞いて疑っていて馬鹿だったと自分を責める。


「ま、まぁ....」

場の空気を察しウーさんが口を開く。

「まぁ、餓鬼にも良心があってビックリだ」


餓鬼さんに対し憎まれ口を叩き、餓鬼さんに睨まれる。


「お前と違って、“一人”で育てたからな」

餓鬼さんも負けじと言い返す。


これを聞いたウーさんも餓鬼さんを睨む。

「おい、どういう事だ?」


「だ・か・ら!どっかのセリナとスイに任せっきりの生活している奴とは違うって言ってんだよ!」


「餓鬼、お前、表出ろや」


「テメェとやるのは久々だな、腕鈍ってんじゃねぇのか?」


「アァ?やってやろうじゃねぇか!」


二人のお陰で場の空気が戻る。


二人ともありがとう


と感謝を心の中でする。

後でちゃんと二人にお礼を言おうとも思う。


だが、二人ともヒートアップしてしまい、そのまま外に出ていく


ミールが、その姿を見た後僕に聞いてくる

「いつもあんな感じなんですか?」


「ま....まぁな」

ミールはクスッと笑い言う


「あんな楽しそうな師匠、始めてみました」


「僕も久々に二人の楽しそうな姿見れて嬉しいよ」

その言葉を聞いてミールは咳払いをし僕に聞いてくる。


「師匠からも聞いてるとは思いますが、ライト様、私達を仲間に入れてはくれませんか?」


僕はこの言葉を聞いてニコっと笑いながら答える。

「勿論!これからよろしく」


「はい!」


(遅くなってしまい、大変申し訳ございません、次回は3月10日の予定です!ご意見、ご感想の程お待ちしています)

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