第2話 書類確認
side ファミール社長 加藤あかり
2023年 2月中旬
「社長、これが最後の書類のまとまりです」
そういって、女性の社員が最後の書類のまとまりを渡してくる。
「あ、ありがとう。そこに置いといてくれる?」
そういいながら、私は机の上においてある書類を一つずつ読んでいく。
私は加藤あかり、30歳。ちょうど、vtuberというものが出てきた時に、初めて見てみたのだが、そこから激ハマりしてしまい、今やvtuber事務所の社長をしている。
少し前から新人の募集をしていたのだが、ありがたいことに、1000件以上の応募があったため、今ちょうど次の面接に呼べるような人材を選んでいたところだ。昔は、社員何人かに書類を見せて選ばせていたのだが、あまりにもいい人材がいなかったものだから、社長である私が書類を一つ一つ確認しているのだ。
「わかりました。...いい感じの新人はいましたか?」
「うん、今のところ女性が50人、男性が50人ぐらいって感じかな」
けれど、まだ書類しか見ていなく、顔や性格などいろいろわからないところもあるから、絶対に受かるだろうな人はいない。
「そうですか。これが最後なので頑張ってください!」
「うん、ありがとう」
そういって、社員は別の仕事をしに行った。
よし、私も最後までやっちゃおう。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「うーん、いい感じの人はいないかなー」
残りの数が10個となったとき私の声が漏れた。
配信者、声優、社会人など、いろいろな人がいたのだが、なかなかピンっと来ない。
配信者や声優などは、過去になにをやっていたのかもよく調べているが、なかなか求めているような人達がこない。
「次が...あら、歌い手じゃない。今回の審査では初めてね」
歌い手といえば、うちの古参組の一人と登録者No3、登録者No6が元歌い手だったな。
全員女性で、古参組の一人は、歌い手として上手くいっていたが、vtuberにハマり、うちに申し込んできた。入ってきてからはゲームや雑談をメインによくやっている。うちがまだ小さな会社の時に入ってきて、今でもうちの会社を盛り上げてくれていることを本当に感謝している。
もう一人も、vtuberというものにハマって申し込んできたのだが、歌い手として上手くはいっていなかった。けれど、書類審査から面接までずっと、あつくvtuberについて語るものだから合格にした。…あの時は面接終わるまで、笑顔で明るくvtuberついて語るものだからびっくりした。
最後の一人は、書類や面接ではクールで物静かな感じだったのだが、歌ってみたを聴いて、驚いた。頑張れば歌手になれるのではないかと思わせるぐらい上手だったのだ。
これを聞いた瞬間に、合格は間違いなかった。
彼女は今や、うちの歌姫といっても過言ではない。
ただ、その分まだ生放送とかは慣れていなく、雑談なども上手なほうではないが、陰で話すトレーニングをしていることはわかっている。
「書類をみた感じ…、vtuberについてあまり詳しくはなかったのかな。歌い手としても、登録者を見る感じあまり上手くいっていないみたいね」
うーん、書類を見る感じ、歌い手として上手くいかなかったから申し込んできた感じかな。ここは、歌を聴いてみての判断ね。
そう思い、ミューユーチューブで動画を開こうとした時だった。
「社長ーー!」
今さっき話題にした子の一人がこちらにやってきた。
「あら、胡桃さんじゃない。事務所に来てたのね」
胡桃ひまり、うちの登録者No3の子だ。
いつも元気で明るく生配信をし、歌もうまいため、ファンもたくさんいる。
「はい!社長は何やってるんですか?」
「ちょうど新人募集の書類を確認していたところよ」
「へー!って、この人歌い手じゃないですか!」
そういい、胡桃さんが机の上に置いてあった紙を見始める。
「そうなのよ、今からこの方が歌っている、歌ってみたを聞くところよ」
「え!私も聞きたいです!」
元歌い手として、どんな歌を歌っていて、どんな感じで歌っているのか気になるのだろう。
「えーいいわよ、あなたにも元歌い手として、次の面接に行けるかどうか確認してほしいわ」
「わかりました!」
そして、私たちはこの方のミューチューブサイトにとんだ。
「結構たくさん動画あげてますね。あ!この曲私も歌ったことある!あとこれも!あ、これも…」
そういいながら、胡桃さんは画面をスクロールし、歌ったことがあるもの、知っているものなどを口にしていく。
ふむ、みた感じ再生数は少ないが、有名な曲やアニソン、マイナーなものでも盛り上がりそうな曲を選んで歌っているように見える。
だから、胡桃さんもほとんどの曲に反応している。
「胡桃さん、もうそろそろ歌を聴きたいのだけれども」
私は少し苦笑いしながら、彼女に問いかける。
「あ、ごめなさい」
「いいのよ、じゃー、一番再生数の多いこの曲でも聴きましょうか」
「はい!」
私はその曲を流した。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
流していた歌が終わった。
私はめちゃくちゃ驚いた。胡桃さんも目を大きく開けて驚いているように見える。
「胡桃さん…。どうだったかしら」
私は驚いたままでいる彼女に話しかけた。
「…えーっと、歌は上手です。ただ、今はまだ上手なだけって感じです」
それは私も思っていた。
「けど…なんて言えばいいのかわからないけど、胸に響く?感じがします。この方の歌声が」
そうなのだ、胸に響くこれが一番わかりやすいだろう。歌詞なども相まって、グッとくるものがある。
「…社長。私、この方面接…いや、合格でもいいと思います」
真剣な顔をして胡桃さんが言ってくる。
彼女がそこまで言うとは、それだけ将来に可能性があるのだろう。
「私もそう思っているわ。けれど、やっぱり面接は受けてもらうわ」
流石に、書類だけでの合格なんてできないからね。他にも、性格なども知りたいし。
「そうですか、けどこの方が入ったら多分もっとうちが大きくなる感じがするんです!」
「えー、大丈夫よ。面接には呼ぼうと思っているから」
私はそういい、面接は受ける人を一人追加した。
名前は…
伊東 蓮
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