30:古参ファンとの交流

——トオル視点——


 たまには視聴者との交流もしないとね。

 俺はそう思って一つのコメントに返信をした。


 彼は俺の配信を最初期から見てくれている人だ。

 どんな人か知らないが、とても彼には元気をもらっている。


 だからお礼も兼ねてDMを送ってみた。

 すると——。


「あっ、あの! 僕に戦闘を教えてくれませんか!」


 そんな返信がくるのだった。



   ***



 その日、空いているのはユイだけだった。

 だから俺はユイを誘ってそのコメントの相手と会うことになった。


 誘った理由は……まあ一人だと心細かったからだ。

 相手がどんな相手かも分からないので、ユイに頼った。

 するとユイは快く承諾してくれた。


 ユイたちとコラボした時は動画を彼女たちがあげてくれていたから、ある程度は人となりがわかっていた。

 だから物怖じしなかったが、今回は勝手が違う。


「こんにちは、トオルさん」

「ああ、やっほー。今日はきてくれてありがとう」

「いえいえ、トオルさんのためならこれくらい普通です」


 ユイはサムズアップしてそう答えた。


「しかし——どんな人が来るんでしょうね?」

「さあ。巨漢とかだったらちょっと怖いな……」


 それから五分ほどダンジョン前の駅で待っていると——。


「すいません! トオルさんとユイさんですよね!」


 そう声をかけてくる少年がいた。

 おそらく高校生くらいだろう。

 巨漢とかではなかったらしい。


 なんかどこかで見たことあるような顔立ちをしているような……。

 でも会ったことなんてないし、気のせいだろう。


「君がレイジ君?」


 俺が尋ねると彼は勢いよく頷いて言った。


「はい、そうです! 遅れてすいません! バイトが長引いたもので……」


 バイトかぁ、それなら仕方がない。

 ユイも優しげな笑みを浮かべると彼に言った。


「いえ、大丈夫ですよ。バイトなら仕方がないですし」

「あ、ありがとうございます! それに今日も指導の場を作ってくれてありがとうございます!」


 第一印象はすごく丁寧な少年だと思った。

 とてもしっかりとした少年だ。


「ええと、レイジ君は高校生とか?」

「はい、そうです!」

「それなのにバイトなんてえらいねぇ……」


 ちょっとおっさんくさいことを言ってしまった。

 俺の言葉にレイジは居心地悪そうに視線を泳がせる。


「いえ……うちは母子家庭なので僕が働かないといけないんです」

「あー、なるほど。これは申し訳ないことを言った」

「も、問題ありません! でも……できればバイトではなくダンジョン配信で稼げるようになりたくて……」


 なるほどなぁ。

 バイトをしているうちは確かにダンジョン攻略に力を入れることもできない。

 俺に頼りたくなるのもまあ確かにって感じだ。


「よしっ! それじゃあ早速ダンジョンに行ってみるか!」

「よろしくお願いします!」


 こうして俺は高校生の古参ファンと出会うことになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る