Vtuberには水着が必要かもしれない

前回のあらすじ コン子とロウ子でコラボ配信をしました。


 コン子とロウ子の初めてのコラボ配信は失敗に終わった。原因は二人の仲の悪さにある。だから海へ行こう!ということで海に来ました。


 照りつける太陽。さんざめく波の音。目の前に広がる青い海。そして隣には学年で一番可愛いと噂されている宮川さんとそこそこ可愛いストーカーの川上さん。今日は人生で最高の夏にするぞ!


 「よし!みんな行こう!」


 「やったー!海だー!」


 「へーいいところじゃない人も少ないし」


 みんなも楽しそうで良かった。僕たちは貴重品を海の家に預けた後、早速水着に着替えることになった。僕は先に水着に着替えて二人が出てくるのを待っていた。


 「二人ともまだかなー。仲良くしてるといいけど」


 しばらく待っていると先に川上さんが出てきた。


 「おーい。川上さーん」


 「何なのよ!いいじゃない少しくらい着替えを見たって女の子同士なんだから!」


 川上さんにはなぜか引っぱたかれた痕があった。どうやら宮川さんの着替えを覗こうとしてはたかれたらしい。この人宮川さんの事好きなのか嫌いなのかよく分かんないんだよなー。川上さんが僕の下に走ってきた後、水着を見せつけてきた。


 「どう?私の水着?かわいいでしょ!かわいいわよね?」


 なんでそんな自信あるんだよ。川上さんはピンクのフリフリが付いた水着だ。胸は控えめだが茶髪で小柄な彼女に良く似合っている。正直かわいい。


 「すごくいいと思うよ!かわいいよ!」


 僕が水着を褒めると川上さんは照れたようで顔を赤くしている。いや恥ずかしいのかよ。


 「ふん。当たり前でしょ!あなたに言われてもうれしくないわ!」


 なんだよ。さっきは褒めてって感じだったのに。そんなやり取りをしていると宮川さんが出てきた。


 「おーい。宮川さん。こっちー」


 宮川さんを呼ぶと、こちらに気づいてようでゆっくりと歩いてきた。


 「ふー。このストーカーは警察に突き出した方がいいわね」


 宮川さんは呆れた表情で川上さんを見た。一体何をされたんだ。気になる。


 宮川さんの水着は、上に水色のパーカーを着ているので見えなかった。くそ!見えない!


 宮川さんをじろじろ見ていると、気持ち悪い物を見る目でこっちを見てきた。


 「ここにも駄犬がいるわね。追っ払ってもらおうかしら」


 「ちょっと!犬扱いは困るよ!でもパーカーも似合ってるよ!」


 宮川さんは一瞬驚いたがすぐにいつもの顔になって歩き出した。


 「行くわよ」


 僕たちは宮川さんの後を追った。その後海の家で借りたビーチパラソルと持ってきたブルーシートを引いて早速海に行こうとしたのだが。


 「宮川さんも海行こうよー!」


 僕は浮き輪を体に巻き付けながら宮川さんを誘う。


 「私はいいわ。小説読んでるから」


 そう言って宮川さんは小説を読み出してしまった。残念。宮川さんの水着みたいなー。


 「もう。ノリ悪いわねー。行きましょう。タマ」


 「ちょっと!猫扱いもだめだよ!」


 僕たちは二人で海に向かった。


 「ひゃーー。冷たいわね」


 「うわ。冷たー!」


 川上さんは足を海水に入れて楽しんでいる。海ってこんな感じだったなー。子供のころ以来だ。僕は久々の海に年甲斐もなくはしゃいでしまう。


 「ほら!タマ!食らいなさい!」


 川上さんが水をかけてきた。


 「うわ!冷た!このーー」


 僕もすかさずやり返した。


 「ひゃあ。冷たい!やったわねタマ!」


 僕たちは馬鹿みたいに水を掛け合った。


 「行くわよ!タマ!あれ?ちょ・・」


 川上さんが水をかけようとしてバランスを崩してしまう。


 「川上さん!」


 僕は慌てて駆け寄りなんとか手を掴んで川上さんが倒れることを阻止できた。


 「ふーー。危なかったね。気を付けて」


 いや危なかった。浅瀬だから大丈夫だと思うけど。川上さんを見ると、キョトンとしている。


 「川上さん?」


 心配になって声をかけると。急に慌てて立ち上がって


 「ふん!タマの癖に生意気よ!ちょっと喉が渇いたから飲み物買ってくるわ!」


 と言ってどこかに行ってしまった。照れてるのかな?僕も女子と手をつなぐなんていつぶりだろうか。僕もドキドキしたことは黙っておこう。とりあえず宮川さんのところに帰ろう。宮川さんの下に向かった。


 宮川さんのところに戻ると、数人の男たちが宮川さんに群がっていた。


 「ねえ。君かわいいね。どこから来たの?」


 「俺たちと遊ばない?奢ってあげるよ」


 宮川さんは思いっきりナンパにあっていた。対する宮川さんはガン無視して小説を読んでいるさすがだな。


 「やばい。助けないと!」


 でもどうする?こんな状況アニメでたくさん見たはずだ。よし!これだ!


 僕は宮川さんのもとに行って黙って彼女の手を掴みそのまま堂々と歩いて逃げようとする。


 「は?何お前何してんの?」


 「この子俺たちが先に見つけたんだけど」


 ナンパ男たちが何かを言ってるが全部無視してそのまま歩きまくった。宮川さんも黙って僕の後をついてきている。しばらく歩くと、男たちはいつの間にかいなくなっていた。ふー。良かった。


 「ふー。しつこい人たちで良かったね。後、この前見たアニメが役に立ったよ」


 あのアニメ見といて本当に良かった。かっこいい助け方ではなかったけど一番平和に助けられる方法な気がする。


 宮川さんを見ると、腕が少し震えていた。怖かったみたいだ。あの宮川さんでも知らない男に囲まれたら怖いよな。


 「大丈夫?宮川さん?」


 「大丈夫に決まってるじゃない!さっさと帰るわよ!ポチ!」


 宮川さんは平気そうな顔で元いた場所を指さした。なんだ意外と大丈夫そうだ。


 「あっ。ごめんずっと手を握ったままだったね」


 僕が手を離そうとすると彼女がもう一度手を握ってきた。


 「犬にはリードが必要だものね。ほら行くわよ!」


 宮川さんは僕の手を引いて歩き出した。


 「ちょっと!だから犬扱いはだめだよ!」


 宮川さんの手を握りながら、意外と小さくて宮川さんもちゃんと女の子なんだなと思った。

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