シャーペンを人に向けてはいけない
前回のあらすじ となりの宮川さんはVtuberだった。
「やっぱり。そうなんだーー!!」
僕が大声を上げると、宮川さんは席を立ち怒りの表情をあらわにしてこちらに歩いてくる。右手にはシャーペンを持ちいかにも刺してきそうな雰囲気だ。こわい。
「ちょっと。宮川さん?」
僕は席を立ち宮川さんから遠ざかろうとするが、窓際に追い詰められ床に両手をついてしまった。宮川さんはどんどん近づいてくる。
そして右足を僕の横に置き、覆いかぶさるようにしてシャーペンを僕の顔に近づけた。やばい泣きそう。
「このことをだれかに言ったら殺すわ」
宮川さんはシャーペンをより僕に近づけた。ひいーーーこわい。
「は、はい。もちろん。分かりました!」
僕は首を縦に高速に振って命乞いをする。いやだ。まだ死にたくない。それを聞いた宮川さんはシャーペンを引っ込めて、ゆっくりと自分の席に戻った。良かった。
「ふーー。ひとまず大丈夫みたいだ」
僕は思わず胸をなでおろす。そしてお尻についたゴミを両手で払いのけて自分の椅子に座った。その様子を宮川さんはじっと見つめている。
「それで、何で私が「狐山 コン子」だという事を知ってるわけ?」
宮川さんはシャーペンを構えながら呆れた表情で言った。いやだ。シャーペンはいやだー。
「それはそのー。僕はVtuberが好きで昨日たまたま配信を見たときに声が同じだと気づいて」
僕は恐怖のあまり宮川さんと目を合わせられない。というか宮川さん本性はこんなに暴力的で過激なんだ。幸か不幸か宮川さんの驚きの一面を知ってしまった。
「ふーん。なるほど。声で気づいたってわけね」
宮川さんは足を組み換えて興味深そうにこちらを見てくる。今何を考えているんだ。
「はあー。知られてしまったのなら仕方ないわ。改めて「狐山 コン子」よ。よろしくポチ」
そう言って宮川さんは僕に向かってお手をさせるように右手を突き出してくる。
「だれがポチだ!そんな犬みたいな名前じゃないよ!」
僕は宮川さんが差し伸べてきた手を払いのけた。宮川さんは左手で右手の叩かれた部分をさすっている。
「まあいいわ。ところでさっきVtuberが好きって言っていたわよね?」
宮川さんはまっすぐこちらを見てそう言った。たしかに言ったけど。
「それでどのくらい好きなの?」
「うーん。新人Vtuberの初配信はほとんど見てるくらい好きかな」
僕は少し自慢げに言った。どうだすごいだろう。すると宮川さんは気持ち悪いものを見る目で僕を見て
「きしょ」
とだけ言った。
「きしょくないよ!ただVtuberが好きなだけだよ!」
僕は片手で拳を握って、必死に熱弁する。
「まあいいわ。とにかくあなたにお願いがあるのよ。ちなみに断ったら殺すわ」
宮川さんはナチュラルに脅してくる。お願い?一体なんだ?それにしても殺すが口癖になってないか?
「それでお願いって?」
「私を人気Vtuberにしなさい。じゃないと殺すわ」
宮川さんは笑顔でシャーペンを握りしめている。人気Vtuberに?何で僕がそんなことを。
「いや。普通にいやだけど」
ここは男として脅しには屈しないところを見せなければ。僕は断った。
それを聞いた宮川さんは一瞬固まった後、シャーペンを握りしめ笑顔でこちらに向かってくる。
「宮川さん!まずは落ち着こう!」
待って。話せばわかる。だからちょっと待って!
「ぎゃーーーーーー!!」
僕の悲鳴が教室中に響いた。
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