飼い猫なりの配慮

 俺はあざとい。


 野良猫の子として生まれ、仔猫の頃に今の主人が帰宅時に一緒に玄関に入ってやった。


 俺の狙いは当たり、主人の奥さんや坊ちゃんが俺を気に入り、生まれて間もないのに野良猫生活を卒業できた。


 奥さんや坊ちゃんは俺を抱きかかえたり触りまくるが、主人はあまり俺にしつこくしない。

 きっとツンデレなのだ……。


 休日は主人の横で一緒にテレビを観たり、近くで昼寝をしたりする。


 うっかり主人にくっつきまくると、俺は隣の部屋や廊下に運ばれてしまう。


 特に主人が部屋でパソコンをいじっている時は近くにいるだけで絡まないようにしている。


 この男は他の人間と違ってしつこくしてこないし、俺を嫌ってもいないので、居心地は案外よい。


 コイツのおかげで野良猫生活から脱却できたことに恩義もあるので、帰宅時は一回だけ足元にスリスリしてやるようにしている。


 俺なりにこの家族には気を使っていて、冬の夜は主人、奥さん、坊ちゃんの部屋に日替わりで出向くようにして、一緒に寝るようにしている。


 まあ、主人の場合はベッドの中に入ってしまうと、そっとベッドの下に降ろされるけど……。

 きっとコイツはツンデレなのだ……。


 先日、この主人が俺の餌を酒のつまみと勘違いして食べていて、奥さんに怒られていた時はさすがの俺も呆れた。


 利口そうな見た目をしているが、間抜けな一面もある。


 気になるのは最近、家に帰ってくると玄関で疲れた表情を見せること。


 コイツはツンデレだからあまり家で愚痴を言わないが、外では群れのボスに虐められたりもしているのだろう……。


 だから、最近はコイツのベッドの端っこで寝るように気を使っている。


 でも、うっかりと布団の中に入ってはいけない。


 コイツはツンデレだから、そっと俺をベッドの下に降ろしてくる。


 猫はきまぐれなどと言われるが、俺から言わせてもらえば、この主人の方がよほど難しい。


 でもまあ、たまに撫でられると嬉しかったりもする。


 明日は日曜日だから、また一緒にテレビでも観てやるか……。


 


 


 

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