第6話 有名配信者と決闘やっちゃうコラボ配信!
「さぁ、ここからはウルフ劇場。俺の本気、一ミクロンくらいは出してやらんでもない」
・はいはい
・……なんかいった?
・わーかっこいい(棒)
「なるほど、俺の金言は素晴らしさゆえ響かなかったか」
・響かないことを認めてて笑う
・ポジティブやね
・他者の評価を知らんだけでしょ
ウルフの初配信。
中堅配信者かつ、
ソロで、そして自身のチャンネルでの配信は初めてだ。
「話は短いほうがいいという。ここから討伐スタートとしようか」
ふぅ、と息を吐いて精神統一。
ダンジョンに満ちる魔力を活かし、俗にいうオーラを体現させる。
赤いオーラだ。波打っている。
「よく配信者がやるという奴らしい。まぁ、戦闘能力にプラスになるかといえば眉唾ものだが。敵があまりいないな。走るぞ」
・漫画で見るやつ
・すごいけどなんかチープに見える
・殺気が半端じゃない
ウルフは走り出した。かつてのスポーツ選手並みである。
スピードを出しすぎると壁に激突しかねない。カメラが追いつかなくなる。
デメリットを考慮し、ウルフにとっては「歩き並み」のダッシュだ。
「喋りすぎたな。ここから三分くらいは、黙って討伐する」
しばらくダッシュしていると、ようやくモンスターが現れた。
ゴブリンだ。複数いる。
他のダンジョンでは雑魚キャラとされている。
しかし、ここは高難度のダンジョン。ゴブリンとて決して弱い敵ではない。
そのはずだが。
――斬。
目にも止まらぬ速さで、手刀と蹴りが入った。
「……」
つまらなそうな顔をして、次々と現れるゴブリンを葬る。
倒しつつ、落とした魔石の回収も忘れない。
・おそろしく(以下略)
・見逃さずに済んだのはカメラのおかげなんだよな
・ここまで強いと、モンスターを倒すのが万人にできんじゃないかと錯覚するレベル
一般的な配信であれば、倒すのにも時間がかかる。
血が噴き出ることもある。生々しさが出る。
対して、ウルフは一撃必殺、とでもいえよう。血が出てすぐに、モンスターが灰になってしまう。
ウルフの視聴者としては良心的であろう。子供にも勧められる。厨二病の発症を促す悪影響を度外視すれば。
あらかた倒し終わると、ウルフはカメラ目線でドヤ顔を決めてみせた。
・こ っ ち み ん な
・はぁ……これだからウルフは
・最強の暗殺者だからといって、最も尊敬されるわけじゃないんだよ
ゴブリンをあらかた狩り終わると、風景がガラッと変わる。
「赤、やはり本能が求めるのは血の色か」
カメラが聞き取れないレベルで、ウルフはいった。
目の前に広がっているのは、灼熱のエリアである。
高い壁を挟んだ先には、マグマがあり、グツグツと煮えたぎっている。壁を突き破らぬ限りは落ちることはない。
モンスターをここに落として討伐する方法もあるが、これが人間の場合だと――配信でおちてしまえば、放送事故決定である。
さして熱すぎるわけでもないので、落下でもしたら、ゆっくりと命の灯火が消える。探索者にとって、嫌な死に方であろう。
・珍しく有名なエリア
・知ってるところだ!
・これってあの人がよく出没する場所じゃ
「(噂だと、あいつがいるらしいが……ここに着くまでに、時間をかけすぎてしまったな)」
ウルフの言葉を借りるなら、彼は最強の暗殺者ということになる。暗殺界隈では筋金入りだ。
しかし。
最強の暗殺者が最強の探索者であるとは断言できない。プロのサッカー選手が、メジャーリーグで大活躍できるとは限らないように。
現段階では、ウルフよりも上位の階層・ダンジョン・能力を有するものはいる。国内外を問わず、だ。
「……やってるな」
ウルフは、ある配信者を見つけた。
消えては現れを繰り返す。
瞬間移動系のスキルを持っている探索者が、いる。
・速いっ! ウルフよりは遅いけど
・キター!!
・あの人じゃん!!!!
ウルフの配信のはずが、突然のゲスト登場とあり、コメントの流れるスピードが一気に加速する。
内容は、もはやウルフのものではない。
「よっ、と」
マグマ側にいたはずの男が、空中から現れた。
華麗に落下し、すぐさま立ち上がる。洗練された動きだ。
「はじめまして、探索者さん」
金髪に青い目を持つ、長身の男。
「こちらこそ。あんたも、配信をしているようだが」
「そうだね」
ニコッと、男は澄んだ笑みを浮かべる。
「君は……」
「世界最強の暗殺者、人呼んでコードネーム【
「やはりね。僕はスネークさ」
スネークは、登録者数十万人台の配信者だ。ウルフの相棒、赤染茉理よりも登録者が倍以上多い。
イケメンかつ表面上の性格
多くの配信で投げ銭を解放している。額の大きさが尋常ではなく、もはや「お布施」とさえいわれている。
「ほぅ、こうして会うことになるとはな」
「なんのことだろう? 僕たちは初対面じゃないか」
「いまのは忘れてくれ。俺はあんたと初対面だからな」
・ん……?
・ウルフ、スネークと知り合いなの? え?
・おっと?
両者は意味ありげなやりとりを交わす。
なぜか。
彼らは、過去に会ったことがあるからだ。
「それで、ウルフさんは僕に頼みたいことがあるんじゃないかな」
「逆に聞く。スネークは、俺がなにをしたいと考える?」
「そうだね……
腕のある探索者同士が、己の
命までは取らない。攻撃が一発でも入った時点で、終了。
時計型端末の機能を使う。おこなうには、ダンジョンの運営元への許可がいる。
非公式の
一定の効果はあるものの、違反する者は未だに後を絶たないが……。
「よくわかるな。スネーク。あんたを俺のファン一号としてやってもいいぞ」
「君が僕のファンになってくれるならね」
「断固拒否だ。天地がひっくり返ってもありえない」
「お遊びはこの辺でいいかな?」
スネークは慣れた手つきで申請。
ややあって、通知がくる。許可が降りたのだ。
・盛り上がって参りました!!
・格上配信者にも傲岸不遜を貫くウルフさん
・おめでとう! またアンチが一気に増えたね!
「双方、同時に掛け声を上げたらスタート。いいかい?」
「当然」
ウルフは赤いオーラをまとわせる。
スネークは青いオーラを顕現させる。
どちらも戦闘に入る準備はできている。
「「――GO!!」」
ウルフVSスネーク。
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