伝説の俺様系暗殺者、ダンジョン配信はじめました〜相棒のギャルJKと強敵を狩まくりバズったのに、なぜか偽物扱いされている〜
まちかぜ レオン
第1話 いつも通りのコラボ配信!
「やっほー! みんなの太陽、
・あまあま〜
・待ってたぜ!
・我らが茉理ちゃんだっ!
ダンジョンが一世を風靡する時代を迎えた日本。
難関ダンジョンと名高い、東京ダンジョンの深層。そこで、現役女子高生の人気配信者、赤染茉理は、きょうも配信をしている。
ダンジョンの壁は、埋め込まれた魔石が、妖しい緑色の光を放っている。
異世界と評するのがふさわしい光景だ。
「ちゃんと映ってるかな?」
・きょうもかわいいよ
・相変わらず高画質すぎ
・大丈夫だよ!
ダンジョン産の素材から成るカメラが、赤染の側に浮かんでいる。
そんな特殊なカメラの映像が、動画サイトを通じて全世界に配信されている。
現在の視聴者は、開始わずか数分であるが、もう万単位だ。
なぜか。
それは、赤染が。
日本にとどまらず、世界でも人気を誇る、大人気配信者であるからだ。
「きょうの衣装、めっちゃかわいくない? テンション爆上がり、って感じなんだよね」
無骨なダンジョンとは対照的に、赤染の格好は華美だ。
金髪でやや低身長の彼女。
ダンジョンを潜る探索者にしては、やや露出度が高い。伸縮性に富んだ、赤いドレスを着用している。
彼女を知らぬ人が見れば――そんな者はさほど多くはないが――、パーティー会場に出かける少女、と映りかねない。
「本日は、人気企画!
・キタ〜!
・冷静に考えるとヤバい企画よな……。
・
コメント欄は、いつものように、非常に盛り上がっていた。
赤染は、腕につけている時計型端末から、ハイスピードで流れゆく膨大なコメントに目を通す。
「さてさて、実はきょうも、素敵なゲストを呼んでいますよっ!」
・どうせあいつ
・誰だろうな(しらばっくれ)
・ワクワク
「ゲストは、この方です!」
カメラが動き、ゲスト、と呼ばれた人物に向く。
「元特務機関A部隊所属……コードネーム、
黒系統で固めた服装をした、長身の男。
特筆すべきは、顔が狼である、ということだった。
ダンジョンにおいて、スキルによって獣人化するものはすくなくない。異様だが、いてもおかしくない、といったところ。
本人としては、やや作った声をもって、格好つけたつもりだったが……。
・厨二乙
・世界最強と謳われた暗殺者の名を騙る狂人じゃん
・こ な い で
・死人の名を騙るなんて冒涜をするなよ……
・自分を世界最強の暗殺者と勘違いしている哀れな最強探索者
「うーん、やっぱコメント荒れすぎてておかしいんですけど平常運行って感じだね!」
「俺の魅力が世界の先を行きすぎているだけだ」
「それじゃあ本題に入っていくね!」
・ガン無視で笑う
・不憫な狼さんかわいい♡
・やっぱりウルフ、鋼のメンタルだよなぁ
・本物より本物なんじゃないかって気がしてるわ
「ルールは簡単。このダンジョンにある、狼湧きまくりスポットにのこのこ忍び込んで、どんだけ殺せるか選手権、って感じ!」
・狼と狼、要は共食いなんだよなぁ
・同族殺しは控えてもろて
自称・特務機関所属を騙る異形の男・
が、その実力は折り紙つきだ。
「いまから向かいます!」
「……きょうも、この俺が勝つ」
「望むところよ!」
向かったのは、あるスポット。
そこに、巨大狼の好物を撒くと、あっという間に集まってくる。
これは本来、モンスターに襲われる危険性を上昇させる、危険極まりない行為だ。
だが、彼と彼女にとっては関係ない。
ウグググ、とモンスターの唸り声が、重なって聞こえてくるようになった。
奥の方から、赤い眼をした、
・きちゃっ
・並の探索者なら、あと十秒で五回は死んじゃうよ
・気をつけてね
その大きさは、人間よりもふたまわり以上であることは確実。
頭部に生えた強靭な角は、幾度となく探索者やら他のモンスターの腹を裂いた実績がある。
「ようこそ、私の宴へ……盛り上げ役がみな同じモンスターというのは、いささか盛り上がりに欠けるが――」
・ここ、赤染茉理のチャンネルだぞ(マジレス)
・乗っ取りはいけませんな
・まぁ、ウルフさんのおかげで伸びたところもあるし、実質半分くらいウルフチャンネルみたいなもんよな
「――死んでくれ」
高性能カメラも捉えきれぬ速さで、
彼の手には、短刀も長剣もない。完全に、素手である。
「負けないっ」
ゼロコンマ数秒遅れて、赤染は地面を蹴った。
対する赤染の
魔光剣、というのが正しい。魔力を刃として生成するからだ。スイッチを入れ、魔力を込めると、赤い刃が現れた。
「よっ、ほい、っと」
蹴り、殴り、突き、手刀。
この一連の動作で、四体が一気に死んだ。一秒にも満たない。あまりにも、スピーディー。
・えっ、もう死んだの巨大狼くん
・これってスライム戦の間違いじゃ、ないんだよな……?
・何度見ても目で追えない
「ハアアアアアアァァァァッッ!」
唸り声と同時に、赤染は魔光剣を振るった。
十数連撃、だったろうか。これだけで、一ダースもの
次々と湧いてやまない
目にも見えぬスピードで処理していき。
「はぁ、はぁ……
「俺は――」
「……えーっ? うそ、一体差で私の負け?」
「そうだ。ふっ、この俺にも及ばぬとは、茉理もまだまだらしい」
「く、く、くやしい〜!!」
赤染は、文字通り地団駄を踏んで悔しがった。
灰になって消滅しかけている
・いつ見てもすごいよ、この死体の山
・モンスター大虐殺した後のテンションとは思えん
・こいつら人間じゃないよ……
「ということで、今回の企画は。我らが
「ふざっけんじゃねぇ、このや……この狼人間!」
「事実をいわれても傷つきやしないさ」
「こ、この……じゃ、じゃあ! 今回はこの辺で! バイバーイ」
・夫 婦 漫 才
・もうお前ら結婚しろ
かくして、短い配信は終わったのだった。
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