第70話
会議室に1つの席を残して皆が座って待機する。
遅れて一人の男が入って来ると全員が立ち上がった。
「バンブー会長に、礼!」
全員がバンブー会長に礼をした。
バンブー会長が席に着くと同時に言った。
「座りなさい」
「着席!」
男の号令で全員が座る。
「これより、ソナパ奴隷派遣ギルドの会議を始めます」
【バンブー視点】
12人の幹部は実に見事に教育されている。
すべてにおいて効率が大事だ。
派遣業は雇用の流動性の観点で考えると実に理にかなっている。
安く奴隷を買って安く使うのが商売の基本だ。
奴隷は文句を言わない。
奴隷は逆らわない。
使う側にとって奴隷は実に都合がいい。
そして奴隷を買える財力を持った者は限られている。
だが、財を持った者からすれば奴隷は安い。
「今期の業績について説明させていただきます」
画面にグラフが表示される。
「今期は奴隷の価格が13%ほど上昇し、奴隷購入のコストは上がったものの、その他の指標は順調に推移し、ソナパは順調に成長しています」
説明が続いていく。
ギルドの成長は順調だ。
しかし、奴隷の価格が思ったより高くなっている。
「……今期の業績は以上となります。今後の方針についてバンブー様からお言葉を頂ければと思います」
奴隷が高くなった。
だが、奴隷の価格上昇を理由に依頼料を高くすることは出来るだろう。
とすれば、今後の奴隷購入をどうするか……
お母さん協会が物凄い勢いで奴隷を解放している事を考えれば、今後の奴隷価格は上昇し続ける可能性が高い。
合理的に判断すれば今の内に奴隷を買っておくのが理に適っている。
「「……」」
「奴隷の購入を増やします。施設で受け入れられるだけの奴隷を購入しなさい」
「はい!では、今期の方針は奴隷の購入を増やす事、そしてその教育訓練の強化でよろしいでしょうか?」
「いいでしょう。すぐに動きなさい」
4人の男が席を立ち会議室を出た。
すぐに奴隷の購入が行われるだろう。
順調。
実に順調だ。
【2か月後】
ニュースを見ていると驚くべき記事が目に飛び込んできた。
『4国すべてが冒険者への星制度を導入』
ギルドカード記事を開くと厄介な内容が書かれていた。
『Dランク冒険者を超える者は1つ星以上を持たない場合国の依頼を受けられない方針で4国が同意』
『お母さん協会の圧力が功を奏したか!?』
『冒険者ランクが低いままの冒険者に対して4国が支援する方針で合意』
『奴隷冒険者の場合は貢献は免除されるが、4国が奴隷解放を支援する方針で合意』
EランクとFランクの冒険者のままでいれば国が支援の名の下監査を行うだろう。
実質冒険者は貢献という名の負担を強いられる。
更に奴隷冒険者も支援の名の下監査が入るだろう。
やりにくくなる。
ぐぬぬぬ、計画の変更が必要か。
……利益は減るが、それでも問題はない。
【2か月後】
「バンブー様、また奴隷価格が上昇しました」
「またですか」
「はい、現状では1年前から比較して50%も奴隷価格が高騰しています」
「冒険者ギルドは奴隷価格高騰を抑える方針だったはずです」
「それを超えるだけお母さん協会が奴隷を爆買いしているのです。魔王の奴隷講座の配信が活性化しています」
私はその場でチャンネルを開いた。
イクスが毎日配信している。
想定外だ。
『寄付の呼びかけ』
『奴隷のその後を紹介』
『奴隷解放ファンドの設立、年利15%』
奴隷解放ファンド、これだ!
私はすぐに動画を再生した。
『魔王だ。タイトルの通り、4国すべてで投資可能な新しい投資商品を作った。現状年利15%と破格の利回りになっているが、奴隷の価格が高騰すれば利回りは下がっていくだろう。早めに投資をして欲しい』
やられた!
通常の投資ならば年7%も利益が出ればいい方だ。
年利15%は破格だ。
すぐにファンドを開くと、投資の純資産総額が爆上がりしている。
後追いでファンドを作っても先にいるお母さん協会のファンドには追い付けないだろう。
奴隷の購入費用は倍を超える!
雲行きが怪しくなって来た。
動きが速すぎる。
ん?4英雄の紹介リンクか?
他の英雄を見ていくと汗がだらだらと流れる。
ドラグが先駆者としてナインステートでファンドを立ち上げ他の3国に対して圧力をかけている。
パープルメアは悪徳ギルドを国に自動通報する仕組みを作って稼働実験を行っている、そしてどうすれば国が良くなるか各国の問題点をまとめた動画を公開している。
アクリスピは多額の資金を寄付して冒険者を雇い、お母さん協会の奴隷を教育訓練している。
4英雄が本気で奴隷を解放しに来たか!
私のギルドは、ネットで叩かれている!
このままではソナパの業績が大きく落ち込んでしまう!
まずいまずいまずい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます