第68話
【ドラグ視点】
コンコンガチャ!
俺はノックをしてすぐにイクスの籠る工房に入った。
「……それ、ノックした意味はあるのか?」
「形だけだ」
「で?」
「2つある。落ち着いたらイクスには奴隷派遣の見学に行ってもらう」
「もう一つは?」
「ブルーフォレストの冒険者星制度特区を進めている。グランドに任せれば問題無く進むだろう」
「3国はまだ冒険者の星制度を導入しないのか」
「する気配はない」
俺は余計な事は話さない。
聞かれた事だけを話していく。
色々話すとボロが出てしまう。
「奴隷の購入がうまくいっていないのか?」
「借金奴隷は3割買って、奴隷の値段が上がって来た」
「順調所か早いな」
「そうだな」
「……今日はおとなしいな」
「そんな事は無いぜ」
「……」
おとなしくし過ぎて疑われたか。
話題を逸らしつつ話をしておくか。
「3割だけの奴隷購入じゃまだみんなが問題だと思わないだろう。いつもみんなが気付くのは問題が起きて困ってからだぜ」
「鉱山や物流の人手が足りなくなるだろ?」
「足りない分は他から奴隷を引っ張ってきて回している。皆はそこまで先の事を考えて生活しちゃいない。所でいつまで引き籠るつもりだ?もうエリクサーは作っただろ?」
「ポーションが足りない。最近作っても作っても足りないと思っていたが、借金奴隷の3割を買ったからか。急激に多くの奴隷が戦闘訓練を受けているんだ。アクアマリン達が回復魔法の訓練をしても成果が出るまでには時間がかかる。慢性的にポーションは不足するだろう。俺はポーションを作る」
イクスは嬉しそうに言った。
俺も思わず笑ってしまう。
罠にはまってくれたか。
「イクス、お前嬉しそうだな」
「ポーションは必要だ」
「表に出たくないだけだよな?瞑想をするようにポーションを作っていれば落ち着くよな?」
「ポーションは必要だ」
「そうだが、この調子だと後数か月は籠るだろ?嬉しそうな顔が出ているぜ?」
「この調子だと……後3か月はかかるだろうな」
「おま、完全犯罪じゃねえか」
「犯罪じゃない。必要な仕事だ」
「奴隷派遣の見学は後にするのか?」
「後になる」
「このまま奴隷を買えばお母さん協会の資金が無くなる。ポーションだが、一部でいい。寄付をしてくれ」
「一部と言わず、薬草と瓶代が無くなるまで寄付しよう。倉庫にあるものはすべて寄付でいい」
「分かった。そろそろ行くが、たまには皆にも顔を出せよ。じゃあな」
「検討しよう」
俺は外に出た。
思わず顔がにやける。
イクスを10星冒険者にしようとすれば潰される。
だが、今は星制度は貢献度が自動的に、強制的に加算されていく。
そういう仕組みに俺が作り変えている。
つまり、イクスがポーションを寄付すれば強制的に星を取得する事になる。
イクスが裏で何をやっても取り消しは出来ない。
そう作ってある。
イクス、お前は時間の問題で10星冒険者だ。
気づいた時にはもう遅い。
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