第61話

「ちょ!ちょっと待ってくれ!俺はドラグと男の子で!契約すると言ったはずだ」

「ぎゃははははははは、焦るなって!俺は男と契約するとは一言も言ってないぜ」


「僕は女だよ」

「でも、僕って言ってるだろ」

「言葉使いが紛らわしかったけど女だよ」


「イクス、レディーを、言葉遣いだけで判断するの、良くない。ぷくくくくくく」

「ちょっと待て、ドラグううう!アクリスピいいいいいい!やってるな?」


「ぎゃははは、何がだ?」

「ぷくくくく」


「その笑い方!ヤッテるな!」


 ドラグとアクリスピは耐えられなくなったようにゲラゲラと笑い出した。


「おう!ちょっとだけやったぜ!俺から紹介する。俺の孫娘だ!!」

「そのどや顔やめろ!しかも孫娘かよ!」


「俺がジェンダに口止めした。こいつはまじめだからかなり強めに口止めした」

「私も、やってあげた」

「アクリスピ、良いことしてあげたみたいな言い方はやめろ」


「この瞬間を!待ってたぜ!!」

「だからどや顔やめろ!!」


「ごめんなさい!」

「いい、ジェンダはいいんだ。ドラグ!アクリスピ!そこに並べ!」


 ドラグとアクリスピは素直に並んだ。

 俺は長めの雷撃をお見舞いするが、終わるとまた笑い始めた。


「メシウマ、イクス、カレー専門店まだあ?」

「作る予定はない!まだ未定だ!」

「俺も食いたいぜ!」

「2人は黙れ!一旦黙れ!」


「ジェンダ、大丈夫だ。すべての責任はあの2人にある。あんな大人になってはいけない!あんな大人になるのは駄目だ!!」

「う、うん、分かったよ」


 コメントを見るとジェンダの評価が上がっているのが分かる。


『おお!僕っ子か!』

『かなりかわいい!結婚してください!』

『ジェンダの性格で女ってかなりいいよな!最高じゃないか』

『女として憧れるわ。あんな顔と体で生まれてたら人生変わってたと思う』

『美女パーティー確定か』

『これはバズるぜ』


「疲れた。今日は休ませてもらう」

「お母さん、パープルメアがクリスタルタートルを持って来て欲しいって」

「……分かった」


「おかあさん、断ろうか?」


 そう言いながらニャリスはゴレショを俺に向け続ける。

 それ、されてる時点で疲れるんだよなあ。


「ニャリス、気を使っているのは分かるがその配信が1番疲れるからな」

「私が持って行きます!」


 アクアマリンが手を上げた。


「いや、いい。走って気分を変えるのも……悪くないか。だが、ありがとう」

「い、いえ」

 

 アクアマリンが照れた。


 俺はクリスタルタートルやその他の素材もすべて受け取ってベアーブックに戻った。

 素材を渡すとすぐに宿屋に入り、皆の配信をチェックした。

 最近配信をチェックしていなかった。


 まず、アクアマリンパーティーは……全員美人過ぎるとバズっている。

 

 カノンは救い手教会にお金のほとんどを寄付して、会長代理と対談していた。

 動画を再生する。


 会長代理のエムリアはまずい!

 見ればダメージを受けることは分かっているが抗えず動画を再生した。


『イクスさんは孤児だった私を助けてくれました。イクスさんの為なら体を売る覚悟さえあります!イクスさんは奴隷を救って注目される前からすでに奴隷をすくっていました。救った奴隷はこの救い手孤児院協会で』


 俺は動画を止めた。

 エムリアが前に出たか。

 エムリアもグランドと同じで酔ったように俺を讃え続ける所がある。 


 俺が立ち上げた孤児院協会の情報も漏れている。

 ニャリスの動画を見るとそれが分かった。

 

 タイトルを見るだけでバレた事が分かる。

 自由にしてもらったのは失敗だったか?

 俺はジョーカーを解き放ってしまったのか?

 だが、カノンが寄付をして気分が良くなればそれはそれでいいのかもしれない。



 ……

 孤児院協会の隠蔽は、絶望的か。

 

「ん?グランドとエムリアが対談、だと!」


 ニャリスは爆弾を落としていた。

 あの2人が組んだらまずい。

 強力過ぎる!


 あの2人は人格者で優秀だ。

 だが、俺を讃えすぎる所がある。

 優秀な人間が俺を持ち上げると話がおかしくなる。


 俺はニャリスの動画をクリックした。


「グランドさんとエムリアさん、お母さんの事を教えて」


 あ、これ駄目な奴だ。


 く、このタイミングで電話か。


「もしもし」

『どうも、グランドです。突然ですが救い手孤児院協会会長代理、エムリアさんと、竜族にして王族、狂わぬ狂戦士のドラグさんと大洞窟前で話をして色々と進展がありまして』


 嫌な予感がする。

 さっき見ようとした動画の件か。


『孤児院と奴隷解放活動を、新・イクス協会に統合し、ブルーフォレストの他に大洞窟に第二の拠点を作る案で盛り上がっています。今丁度ドラグさんの配信をしています』


 ドラグ、そっちか!

 もぐらたたきのように違う所から問題が噴出する!

 あの動画の次はドラグの配信か!


『今ドラグさんからリモートで参加するようにとお声がかかっております』

「そう、か」

『大分お疲れのようです。どうでしょう。後日私の方からまとめた動画を作成しドラグさんの動画にアップする形でもよろしいでしょうか?要点のみ、3分程の動画にまとめようかと』


「い、いや、それは」

『はい、今ドラグさんからイクスさんが断ってもやると言っています。私もそこまで言われれば断れません』


 グランドは水を得た魚のように更に活性化した。


「ぐぬぬ、ドラグめ」


『それでは、ゆっくりお休みください』


 俺はギルドカードをしまった。


 そしてベッドに横になった。


 もう無理だ。








 




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