第31話

「所でニャリス、いつまで配信を続ける?」

「命令されたらやめるよ?」

「いや、いい。魔王であることをみんなに知らしめる」


『何かが始める!』

『おかあさん配信に外れ無し!』

『来た来た来た来た!』

『アニスを何とかしてくれ!頼むぜ!』

『アニスマジでむかつくわ』


「アニス、お前は俺の奴隷にふさわしくないようだな。契約を解除する。もう一度地下で過ごせ」

「は!何言ってんのよ!私を売ればあんたのイメージが下がるわ!それくらいわかるのよ」


「アニス、跪け」

「何言って、ぎ、ぎいいいいいいいいいああああああああああ!」


 アニスが痛みで転げまわる。

 俺は奴隷であるアニスに命令した。


「アニス、従わなければ苦しみ続ける。もう一度言う。アニス、跪け」

「わか、分かったわよ」


『お母さんが命令した!』

『命令するのは初じゃないか?』

『マジでか!』


「アニス、イクスとの契約を解除し、ギルドの所有に戻す!」


 アニスの左手薬指が光った。


「アニスは、確か200万ゴールドだったな。代わりの少女がいれば1人購入しよう」

「ま、待ちなさいよ!あ、あんた!こんなことしたら配信を見ている人間が許さないわよ!小さな少女を捨てるなんてありえない!ありえないのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 アニスが騒ぐが、ギルド職員に地下に連れて行かれた。

 俺は代わりの少女を奴隷として購入し、ゴレショに向き合った。


「皆に言っておく。俺が出来る事は限られている。最低限の働きすらしない、自ら自活しようとする意志の無い奴隷は救えない。もし、アニスに愛を持って向き合える者がいたら購入して世話をするのだな」


『これ、ガチの奴だ』

『いつもと雰囲気が違うぜ』

『だが、目が離せない。何故か引き込まれる』


「むしろ、アニスを売るのが遅すぎた。見てもらった通り、奴隷少女の世話をしているのはBランクの冒険者パーティー3組だ。つまりすべてエースクラスだ。言っていなかったがかなり安い値段、いや、ほぼボランティアのように手伝って貰っている。そんな中、アニスのような者の世話を押し付け続ける結果となった。完全に俺の失敗だった」


『情けないねえ。少女1人救えないか』

『↑そこまで言うならお前がアニスを救ってくれ。頼むぜ』

『完全に同意』

『何で俺が!?俺は関係ない!』

『あれだ、助けるか、黙っているかどっちかの方がいい』

『俺は出来ていないお母さんに意見を言ってやっただけだ!俺が救うのは違うだろ!馬鹿なのか!』


「ご主人様、コメントが荒れてるよ?」

「そうだろう、俺への批判は当然出る」

「違うよ、お母さんを批判するコメントをみんなが叩いてるんだよ」


 この国の者は温和でまともな者が多い。

 思っていたより批判は無いようだな。

 冒険者のギークが泣き出した。


「またあんたは、いや、イクスは、俺を救おうとしているのか。俺は、俺はイクスに訓練をつけて貰って!付けてもらったからあああ!Bランクになれた!自分で背負い込まないでくれ!!」


『お母さんはBランクを育てていたのか!』

『目が離せない。何かが生まれる予感がする』

『見守ろうぜ』



 隣にいた冒険者のエルナとセインがギークを止める。

 全員Bランクパーティーのリーダーだ。


「イクスはまた責任を被る気だ!!分かるだろうが!!全部自分のせいにして配信を流して!!批判を受ける気だ!!」

「それがイクスさんの意志だ」

「そうよ!イクスがそうしたいからそういしているの!我慢しましょう!」


「お前らだってイクスに助けて貰ったからBランクパーティーになった!イクスが俺達を助けてくれたから!!イクスの言葉を忘れたのか!!」


「俺は何も話していない。コメントは落ち着いたようだ。そ、そろそろ配信を終わらせようではないか」

「……命令されたら、やめるよ」


 ニャリスは冒険者を映して配信し続ける。



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