第30話

「契約だけで5憶ゴールドを超えますが、大丈夫ですか?」

「問題無い」


「動画視聴の広告収入や投げ銭の収入はまだ入っていませんよね?」

「問題無い。、うむ、とは言え、先に会計を済ませたい」


『お母さんがギルドに配慮してるwwwwww』

『やさしいいいいいいいいいいいい!!』



「ここからはつまらない事務処理と奴隷契約だ。くっくっく、動画配信を終了する」



 ギルドカードを見るとコメントが大量に流れていく。


『見たい!』

『そのまま継続希望!』

『そのままにしてくれ!』


「う、うむ、ここからは事務処理だが、つまらないとは思うが配信を継続する」


 俺は1億を入金し、更に奴隷購入の代金も支払った。


『すげえ!6憶以上払っている!』

『お母さんは稼ぐ必要が無いんだな~』

『そりゃあれよ。万能の救い手・イクスだぜ?英雄だぜ?』


「次は奴隷契約を行う。体調が悪い者は後日に回して構わない」

「大丈夫です。全員行けますよ」

「全員少女か。では始める」

「そうですね。後でやりましょう」


 これが終わったら次は少年を解放しよう。


 俺は流れ作業のように奴隷契約を結んで100人すべてと契約を終わらせた。


『一応言っておくけど1人と契約するだけでそこそこ魔力を使う。数人と契約するくらいなら大丈夫だけど100人一気に契約するのは異常』

『おかあさんは力を隠す気が無い。吹っ切れたか』

『なりふり構わなくなったお母さんは最強らしいからな。アクリスピタンが言ってた』

『お母さんは金持ちで優しくて強くて見た目も好き。コミュ障だけどそこも好き』


「次は魔力診断だ」


 1人1人手を合わせて魔力診断をしていく。


「魔法使いの風属性、戦士、戦士、アサシン、錬金術師」


『なんか、魔道具を使った健康診断みたいだ』

『俺も思ったwwwwww』

『お母さんは魔王先生コミュ障英雄だな』


「次は武器を選ぶ」


 外に出て大量の武具と素材を出した。

 奴隷が収納から出した物を見て驚く。


「む、いきなり出して驚かせてしまったか」


『そういう問題じゃない!量だぞ!量!』

『量!多すぎ!!』

『溜め込みすぎ!』

『いつもどこかずれているお母さん』

『全部初心者装備と安い素材だけど、売ればかなりの額になるだろうな』


 みんなに武具を配っていく。


 小さい奴隷少女がぶかぶかの鎧を着て喜ぶ。


「いかん、いかんな。少しサイズを変えて作り直す」


 俺は防具に魔力を送って作り直した。


『今の何!』

『今一瞬で作り直してなかったか?』

『革新の魔女のようだ!』

『俺錬金術師だけど一瞬で作るのは無理よ。普通は手作業と併用して魔力を消費し過ぎないように仕上げるのがデフォ』

『やばない!?』


「靴のサイズが合わないか。手直しをする」


 靴に魔力を送り込み、サイズを調整した。


「鎧がもう無い。今から作るか」


 俺は素材に魔力を送って初心者装備を作った。


『一瞬で出来た!だと!』

『呪いは大丈夫か?』

『俺も思ってた』

『こんなことしてたら厄災の呪いは治らんよなあ』


「配信はここまでだ」


 俺は配信を終了させた。


 その後しばらくの間アクリスピがアクアマリンとカノンを連れてうな竜とイートトードを狩り続けた。

 アクリスピの舌は子供だ。

 唐揚げとうな竜の炭焼きを毎日食べていた。



 ニャリスは配信を続け登録者数を増やした。

 100人の少女たちは受付嬢とエース冒険者が教育と訓練をしている。

 やっと進みだしたか。


 俺はアサルトアントの巣に乗り込んでクイーンを倒して過ごした。

 ギルドにアサルトアントを納品し、金を稼ぐ。

 アサルトアントは最近数が多い。

 被害が出る前に潰しつつ甲殻を供給しておけば100人の奴隷の武具を錬金術師が作ってくれる。


 その後は寝て過ごした。


 しばらくしてギルドに向かうと冒険者が俺を捕まえる。

 受付嬢も俺の近くに来た。


「イクス!言う事を聞かない子供がいる!何とかしてくれ」

「そうだったのか。すまない」


 何日か様子を見て大丈夫だと思っていた。

 その為寝て休養していたが失敗だったか。


「実際におかしい部分を見てみたい」

「動画にまとめています」


 ニャリスが俺にゴレショを向けて配信を始めた。

 受付嬢が大きめの動画再生機を持って来た。

 やる事が大掛かりだ。


「もしかして、相当やばいのか?」

「やばいです」


 俺は動画を再生した。


『あんた!戦士なら魔物を止めなさいよ!』


 眉間に皺を寄せた少女が前で戦う少女を怒鳴った。


「この怒鳴ったやつが問題の少女だよな?」

「そうです。名前はアニスです。人には怒りますがアニスはサボってスライムを倒しません」


「倒せないわけじゃなくて倒さないんだよな?」

「はい、やれば出来るのですが、働きたくない子です」


「なるほど、自分はスライムを倒さないけど人には厳しいか」



『そこまで言うならアニスも魔法で倒しましょう』

『そうよ、パーティーで協力して戦いましょうよ』


『はあ!あんたらが情けないのが悪いんじゃない!』


「注意すれば怒り出すのか」

「そうです。何か言えば常に何倍にもなって返ってきます。冒険者や他の子にも嫌われていて、みんなアニスと組みたがらないんです」


「他にもあるか?」

「はい、まずずる休み自体が多いです。そしてアニスは魔王さんが甘いからこのままの生活が続けられると言っていました」


「他の冒険者も言いたいことがあれば言ってくれ」

「ああ、色々あるぜ!とにかくアニスは自分に甘く他人に厳しい。殴ってやろうかと迷ったが女の子を殴るのもどうかと思って殴っていない」


「うん、すまなかった。他にはあるか?全部吐き出してくれ」

「叱っても効かないわ。叱ると他の子のせいにしてその子を怒鳴り始めるのよ」

「苦労を掛けた。他にあるか?」


 俺は皆の愚痴を聞き続けた。




 みんなの言葉が止んだ。


「すまなかったな。アニスはどこだ?俺が話をする」

「今入って来た子です」

「ああ、いるな」


 俺はアニスに近づいた。


「アニス、機嫌が悪い理由があるなら聞きたい。何故みんなに迷惑をかけるんだ?スライムを倒さなかったり、サボったり、人のせいにしていると良い事がない。だが理由があるのなら聞きたい」

「はあ!私はやっているわよ!働いてないのは私のパーティー連中でしょ!!」


「違うんだ。動画を見てくれ。客観的に自分を見」


 アニスは怒鳴りながら俺の言葉をシャットアウトした。


「あんた偉そうな事言ってるけど全然奴隷を救えてないじゃない!魔王なんて名乗ってるけどただの間抜けよね!そんな間抜けなあなたが私に指図しようとしてんじゃないわよ!」


「動画を見て欲しいと言ったんだがそれについての回答が指図するな、か?」

「言っておくけど私を売ればあんたがやろうとしている事に傷がつくわよ!私は小さい子供なんだから!あんたが私にひどい事をしたらすぐにみんなが知る事になるわよ!」


 アニスは勝ち誇ったように言った。


 俺は説得を続けた。



 ◇



 結果駄目だった。

 何か言おうとすると大声で怒鳴り、都合が悪くなると俺の批判を始めて話を逸らす。

 サイコパスか。


「よし、分かった。もういい」


 アニスはもう駄目だ。


 そう来てくれるなら、こっちも遠慮はいらない。


 遠慮しなくていい、本当に助かる。

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