第26話

【翌日の朝】


 パープルメアの動画をチェックする。

 ニャリスが司会をしながらスライムの洞窟にカノンを連れて行く。


『サンダー!』


 カノンが放った雷撃でボススライムが倒れる。


『どんどん行けますわ!』

『おお!体力もあって雷魔法が強い!逸材だよ!』


 カノンは、ニャリスやアクアマリンより強くね?

 ニャリスとアクアマリンがDランク冒険者だ。

 カノンは、Cランク以上だろう。


 パープルメアはにっこりしながら戦うカノンを見ていた。

 手を出す必要は無いと判断しているのが分かる。

 

「カノンは、強いが、」


 思っていたのと違う。

 俺がやりたいのは力の無い奴隷を冒険者として鍛えて解放させる事だ。

 アクアマリンは早く結果を出すために良い武具を渡した。

 次は訓練を受けていない少女を低コストで育て、出来る事をみんなに見せたかった。


 まあいい、今は現状把握だ。

 次はアクリスピの動画をチェックする。

 またニャリスがコラボしている。

 あいつ、登録者を吸い取るようにコラボしている。


『ここがアサルトアントが異常発生したポイントだよ!さっそく巣に入るよ!』


 アクリスピがバトルアックスで女王アリがいる深部まで乗り込んで倒していた。


『ふぉおおおお!クイーン討伐!アクリスピTUEEE!』


 今度はニャリスの動画を見ると、またパープルメアとコラボしている。

 ゴレショの検証をしているが、途中でテンションが上がりすぎて鼻血を出していた。


『うおっしゃあああ! もう少しで登録者数8万!』

『ニャリス、鼻血が出ているわ』

『えへへ、エロ過ぎてやっちまったぜ』


 登録者数8万越えか。

 働きすぎだろ。


 俺の切り抜き動画が、たくさん上がっている。

 見ていたらキリがないか。

 動画のチェックを終わらせてギルドに向かう。




 ギルドに入るとパープルメアとニャリスがコラボ配信をしていた。

 アクリスピも巻き込んでいるが、アクリスピは暇そうにしている。


「おお!お母さんが来たよ!ゴレショ、あっち!」

「ニャリス、無理をしすぎだ」


 ゴレショが俺に目を向けた。


「やめろ、それと働きすぎると倒れるぞ」

「パープルメアが帰る前にコラボしとかないと!チャンスは今しかないよ!」


 もうパープルメアと馴染んでいる。

 そしてやめる気はないか。


「アクアマリン、カノン、今日は一緒に魔物狩りに行きたい。ニャリスはここでコラボ継続で良いな?」


 OK!と手で合図する。


「今日はよろしくお願いしますわ」

「カノンとアクアマリンにゴレショを渡しておく。今日はカノンのチャンネルで動画配信をしたい」


「アクアマリンにやり方は教わりましたわ」

「うん、じゃ、行こうか」


 アクアマリンのチャンネル登録者数は6万越えニャリスは8万越えだ。

 新しくチャンネルを作ったカノンに配信して貰い登録者数を上げておきたい。

 ニャリスは自分よりチャンネル登録者数が多い人とコラボしたがる。

 アクアマリンとカノンの登録者数を増やせば勝手によって来るだろう。


 アクリスピが椅子から立ち上がった。


「私も、行く」


 ゴレショの配信に飽きたんだろうな。


「分かった、行こうか」


 俺・アクアマリン・カノン・アクリスピのパーティーで沼地に向かう。




「くっくっく、魔王だ」

「アクリスピ」

「アクアマリンです」

「おはようございます。わたくしは新しくイクス様の奴隷になったカノンですわ」


 礼儀正しく礼をした。


『パープルメアから来ました!』

『娘にしたい!いい子過ぎる!』

『チャンネル登録したぜ!』


「カノン、続きを頼む」

「はい、万能の救い手・偉大なるイクス様の奴隷カノンのチャンネルへようこそですわ」

「ん、ん?ん?」


 俺はすぐにギルドカードを取り出してチャンネルをチェックする。

 カノンのチャンネル名を見ると『万能の救い手・偉大なるイクス様の奴隷カノン』と書かれてい。


『素早い!お母さんが気付いたwwwwwww』

『今気づいたのかよwwwwwwwwww』

『来た来た来た来たあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああwwwwwwwチャンネル登録ううウウウウウウウウウウ!』


「カノンよ、このチャンネル名は、その、良くないのではないか?」

「ご主人様の名前を押し出す事でチャンネル登録者数を増やし、ご主人様の負担を減らしますわ」


「ぐぬぬ、だが、このチャンネルはカノンの物ではないか。俺を押し出すのは、その、違うのではないか?」

「わたくしはご主人様の奴隷ですわ。もしお気に召さない部分があれば命令してくだされば従いますわよ?」


「命令はさすがに行きすぎだ。だが」

「イクス、早く行く!」


 アクリスピは笑いながら言った。


『命令したくないお母さんwwwwwwwww』

『自分は目立ちたくないけどカノンのチャンネル登録者数は増やしたい矛盾』

『ほんとそれな、2つの目標が噛み合っていない』

『矛盾しているから面白いんだろ?』


「矛盾はしていない。何を言っているのだ?」


『こいつ!今見てるぞ!コメントを見ている!』

『まずい!監視されちまった!』

『煽るチャンス来たああああああああああああああ!!』


「さて、そろそろ巣に入ろうではないか。くっくっく」


『来た来た来た来たあああああごまかし来たああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』

『無かった事にするスタイルwwwwwwwwwwwwwww!』


「俺が見る事でコメントが荒れるか。いかん、いかんな。魔物の生息地についたか。コメントを見ている場合ではないか」


 俺はギルドカードをしまった。


『お母さん完全敗北』

『見られていても見てなくてもどちらでもいいのだよ』

『切り抜き班、スタンバイOKです!』

『解析班も到着しました!』


 沼地にたどり着くとイートトードが現れた。

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