264 SSランク冒険者を雇える程の報酬が払えると?
さて、ガンザルダンジョンだ。
王都の真ん中にある…というか、ダンジョンを中心に街が発展しており、別の所にあった王宮も移転して来て更に大きくなった。
40階からなるこのダンジョンは定番地下洞窟型で、10階ごとに転移魔法陣とフロアボス、セーフティルームは各階、35階からはフィールドフロアでセーフティルームはなくなる。
他のダンジョンと一つ違うのは、階段がなく、階層移動は転移魔法陣なことだ。
前後にしか移動出来ない、という仕様らしいが、転移魔法が使えるシヴァだと階層移動が普通に出来るような気がする。転移ポイントが各階に設置されてる、ということなのだから。
まぁ、ちゃんと順番に行くつもりだが。
攻略が足踏みしている理由の一つには、セーフティスペースとして使える階段がない所もだろう。
逃げ込める所が一つ減るのは大きいし、フィールドフロアではセーフティスペースがまったくなくなる。
街の中にあるダンジョンの例に漏れず、ガンザルダンジョンもダンジョンの出入り口を防壁で囲んであった。
外部からの侵入を防ぐのではなく、スタンピード対策だ。
浅層は新人、初級冒険者の狩場なので、シヴァは走り抜け、邪魔な魔物も切るのも五匹までにし後はよける。ドロップ品が多過ぎても困るからだ。
今回はランニングではなく、もっとスピードを上げた走り込みで、駆け抜けて行く。高ステータスの自覚はあったが、走り込みでも息切れ一つせず、疲れもしないのには我ながら驚いた。
まだまだ自覚が甘かったらしい。
フロアボスがいる10階、20階はリポップ待ちの行列が出来ていたので、シヴァは通り過ぎたが、24階のモンスターハウストラップにかかった冒険者パーティは放っとけなかった。
逃げられないよう部屋の扉は閉まるのだが、シヴァには探知魔法、【魔眼の眼鏡】の千里眼で内部まで見透かせるし、扉なんか関係ない。
魔物はスティールリザード、ストーンゴーレム、アイアンモンキー…と硬い系魔物ばかり十六匹。
冒険者は六人パーティで、回復役らしき一人は頭を潰されていて手遅れ。
斥候らしき男は脇腹を抉られて倒れ、女剣士は撥ね飛ばされて背骨が折れ、男剣士は肘から先の左腕を失い左目を
Dランク三人(斥候、女剣士、魔法使い)、Cランク二人(男剣士、女槍使い)、Bランク一人(回復役)のため、パーティランクとしてはCランクもなさそうだ。
人間と魔物との距離が近過ぎるため、シヴァはまず、部屋の片隅に結界で囲んだ安全地帯を作り、影転移で冒険者たちを移してから殲滅した。
ドロップに変わっても男剣士の腕は見当たらない。食われたか。
血止めをして次は斥候、内臓も足りなかったが、このぐらいなら命に別状がない。
回復魔法で治し、最後は女剣士。背骨以外にも色々折れていたので、【スリープ】をかけてから整復し、回復魔法で直した。【スリープ】を解除するが、ぐったりとしていた。
怪我をしていた三人も、すり傷程度だった女槍使いと魔法使いも、絶体絶命のピンチから状況が激変したことに呆然としていた。
「
ドロップ品を回収し、結界も解除してから、シヴァはそう教えてやった。
「す、すまない。ありがとう。助けてくれたことも」
女槍使いが礼を言って死んだ仲間に駆け寄ると、魔法使いもペコリと頭を下げて同じく駆け寄った。
怪我は治療したし、とシヴァがそのまま放って置けば、せっかく助かった五人は遅かれ早かれ死ぬだけだろう。
大怪我だった場合は怪我を治したからすぐ戦える、というワケではないのだ。血も足りないし、身体と精神のダメージもある。
そして、外に出られる転移魔法陣は10階、20階、30階、40階だけで、前後のフロアに行ける転移魔法陣は、各階バラバラの位置にあり、今の24階から20階にフロアを渡って行くことになるからだ。
今後のことをどうするか?と考え、目の前に助けてくれた明らかに強者がいる場合、選択肢は限られる。
「あ、あの、ずうずうしいお願いだが、こんな状況なので、20階まで護衛してくれないだろうか?出来る限り報酬は用意する」
「お願いします!このままではわたしたち、外に出る前に殺されてしまう!」
「お願いします!」
強者にすがるしかない。
やはり、エスケープボールを用意していなかったか。
十代後半から二十代半ばぐらいまでの、若いパーティなので経験も浅いのだろう。
浅層に何度か潜ってエスケープボールが出るまで進まないのが、堅実なパーティだ。更に堅実だと万が一のためのポーション各種、救命のマジックアイテムも用意している。
まぁ、堅実なパーティなら無理はしないし、欲をかいてフェイク宝箱に釣られ、モンスタートラップになんかひっかからないが。怪我の状況からして、そんな感じだ。
「SSランク冒険者を雇える程の報酬が払えると?助けた礼も出来そうもないのに?冒険者は自己責任だ。見込みが甘く備えも不十分だったことを悔いるんだな。努力もせず頭下げただけで思い通りになったら世の中楽でいいが、そう美味い話なんかないぞ」
世の中の厳しさを味わってもらおう、とシヴァは突き放して部屋を出た。
SSランク、の所で冒険者たちは愕然としており、追いかけて来ることはない。
壊した部屋の扉はそのままなので、魔物が部屋に入れないよう冒険者たちも出ないよう結界を張っておく。
室内の魔物がリポップするにしても二時間かかるので、しばらく放って置き、シヴァは踏破に戻った。
それから、シヴァは一時間とかからず38階まで到達し、そこで隠蔽をかけてから転移で24階に戻り、見込みの甘い冒険者たちを1階の転移魔法陣側まで転送してやった。
ステータスはとっくにチェックしてあるので、後ほど取り立てる予定である。
代価は金じゃない方がタチが悪いと思い知ることになるだろう。
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