147 何これ?溶けるんだけど、肉なのに!
さて、そろそろお昼だ。
雨の中食べるのも何なので、騎獣ごとイディオスの住処近くに転移する。
「ちはー」
『ほんっといきなりだな。どうかしたか?』
「どうもしねぇけど、昼飯一緒に食おうと思って。あっちは雨で景観も悪いし」
『雨なのか。やっぱり、離れると気候が違うんだな』
イディオスの住処周辺はすっきり晴れていたが、木陰で涼しい。
「よし、冷たいご飯にしよう。かき玉汁は温かいけど」
シヴァは作り置きした色々巻き寿司とかき玉汁を出し、イディオス用の皿と深皿に盛った。
巻き寿司のネタはマグロ、イカ、サーモン、シーチキンのサラダ巻き、魚介といくらを入れた太巻きと様々だ。もちろん、すべて魔物である。
アボカドを入れたカルフォルニアロールも作りたかったが、アボカド自体、見付けていない。
『…!!美味いな!これも!』
「元の世界の料理、巻き寿司。加工してある物以外は、魚の鮮度が大事だし、生では食べられない魚も多いんで、この世界では普及してねぇんだよ。どこかにあるとは思うんだけど。ちなみに、これは全部ダンジョン産の安心食材」
ダンジョン産の食材程、安全なものはなかった。
『そうなのか。でも、我は状態異常無効なので何でも食べられるんだが』
「だからって、寄生虫がいるような物は食いたくねぇだろ」
『まぁ、それはなぁ』
「…あっ、ワイバーンの肉もあったんだった。ちょっと焼いて食ってみる?」
『美味いのか?』
「らしいぞ。キーコがそう言ってたし」
シヴァは作業台を出し、キレイな霜降りのワイバーンの肉を適当な厚さに切り、魔石コンロにフライパンを置いて、焼いてみた。
味付けはシンプルに塩コショウで。
いい感じに焼けた後は食べ易いよう適当な大きさに切って、イディオスと自分の皿に。
「うま!!何これ?溶けるんだけど、肉なのに!」
シヴァはその美味しさに感動したが、
『…こんなに美味い肉、食べたことがない…』
とイディオスはやや呆然だった。
何百年も生きているのに、今更知ったこともあるのかもしれない。
「ワイバーン、ちょっと殲滅しに行こうかな」
『こらこら、魔物を狩り過ぎるのもバランスを崩すんだぞ。動物でもそうだろ』
「じゃ、ダンジョンでワイバーン肉がドロップする所ってないかなぁ」
『自分のダンジョンのどこかでドロップさせたら…あーまぁ、無粋か、それも』
「なんだってば。だったら、コアたちに直で肉もらうって。…しっかし、ワイバーンって牛に近いかと思えば、豚っぽいかも」
『いい所取りな感じだな。部位によっても違うのだろうか』
「かな?それは次回にしようぜ。肉食べ比べで」
『いいな、それ。そういえば、このワイバーンはどうしたんだ?道中で遭遇したのか?』
「そう。結構、街の側にいたんで、流れて来たんだと思うけど。五匹」
『ああ、それなら移動中だったのだろうな』
そんな話や転移トラップのひっかかり具合や雑談をしながら昼食を終えると、シヴァは再び旅の空に転移した。
『続きから』が出来るのが転移魔法の使い手の便利さだが、普通の魔法使いだとこうも転移を連発出来ないし、長距離も限界があったことだろう。
何かと規格外のシヴァだからこそ、出来る旅だとも言える。
『ごろ寝旅』も。
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