119 貝のつぼ焼きにはご飯!
アルはさっさと10階まで戻り、転移魔法陣で1階に転移。
またバイクを出して飛行して港に戻り、そこからは歩いて冒険者ギルドへ。
時間はそろそろ四時。フルーツ収穫に勤しみまくっていた割には早い時間だった。
さほど並ぶことなくアルの順番になり、依頼品である【人魚の羽衣】を出して依頼報告する。
「ええっ?そんなにすぐ出たんですかっ?すごいですね」
受付嬢に驚いて感心された。
今日、初めてダンジョンに潜って1階~10階まで踏破した、とは思ってなさそうだ。10階まで踏破したことがあるなら、10階の転移魔法陣からなら1階降りるだけなので。
「もう一つあるんだけど、依頼主が買い取る?」
「はい。出来ればたくさん欲しいとおっしゃられてましたので。二つも出たんですか。ドロップ率を上げるマジックアイテムでもお持ちです?」
「実はそういった称号持ちなんだよ。確実とは思わなかったけど、多く狩れば出るとは思ってて」
「あ、そうなんですか。そうじゃないと、やはり難しいドロップでしょうね」
話しながらも受付嬢は依頼達成処理をさくさく終わらせた。
優秀な人らしい。
そして、もう一つの【人魚の羽衣】はギルドで預かり、アルの希望する額で買うならよし、買わないのならギルドが同額で買い取ることになった。
…ということで、アルには二つ目の羽衣料金も合わせて報酬金額が支払われた。
続いてアルは買取カウンターへ行き、他のドロップ品を売る。
低ランク魔石や別にいらないドロップはさっさと売るに限る、だ。食材があまりないので、持っておきたいドロップもない。
【人魚の涙】は思ったよりは買取金額が高かったが、それだけだ。いらないので全部売った。
トモスダンジョンのよく出るドロップは定額なので、計算するだけだ。買取金額書類をもらって再び受付に行き、支払ってもらう。数は多くても浅層なので大した金額じゃない。
アルがギルドから出ようとした所で、見た顔を見付けた。
「よぉ。護衛はもう終わり?」
「あ…はい。あの時は依頼主が失礼しました。寛容に流してくれる相手ばかりじゃないと、後で注意しておきましたから、またどこかで会った時は態度を改めているかと思います」
そう、トモスの街に入る前に前にいた商人一行の護衛だった。
「敬語いらねぇって。別に気にしてねぇけど、確かに気が短い奴だとヤバイ態度だったかもな。ま、依頼終わった後まであんたが気にすんな」
じゃな、と片手を挙げてから、アルはギルドを出た。
物陰に入って転移。
イディオスを連れて再びトモスの街に戻り、市場へ行った。
場所は調べなくても分かる。魚介類の網焼きや串焼きでいい香りが漂っていたからだ!
この街でも醤油はメジャーな調味料らしい。魚介類全般に合うのだから当然か。
『どれからにしようかと目移りするな!』
「イディオスの胃袋、ほぼ無制限なんだから好きなだけ食べろって。ぬいぐるみの代金だってたっぷりあるしさ」
『では、あの貝から』
「サザエぽいヤツな」
名前とサイズは全然違うが、外観は。
貝のつぼ焼きを二つ買い、アルは側のベンチに座って食べる。
イディオスには皿を出して、中の貝を爪楊枝で出し、適度に冷ましてやってから。
「おお~濃厚で美味い!ご飯が欲しい!…あるや、そういえば」
アルはご飯の入った土鍋を出してイディオスの深皿に盛り、アルは自分の分は茶碗によそい箸で食べた。
「うんうん、これこれ」
『おお、確かに合うな。ご飯と』
「ご飯、持ち歩いてるのか、兄ちゃん」
貝の屋台のおじさんが笑いながら声をかけて来た。
「おう。日頃の備えってヤツだな。現に今助かってる」
「違いねぇ!…あれ?温かくないか、そのご飯。まさか、そのマジックバッグ…」
「いやいや、火魔法で温めただけだって」
…ということにしておく。つい無造作に出してしまったが。
「あ、なんだ。そうだよな。時間停止付いたヤツなんか、その辺にあるワケがなく。兄ちゃんの魔法もすごいけどな!」
「そりゃどうも」
『今はアルなんだから、自重せねばな』
『だな。戦闘はすぐ慣れたから油断してたかも』
アルも念話で返す。
通信バングルで念話通話を使っていた所、自然に『念話』スキルが生えたのだ。イディオスやコアとのやり取りで、念話のやり方が何となく分かったこともあるのかもしれない。
スキルは中々増えなかったので、ちょっと嬉しい。
その後もアルたちはイカ焼き、刺し身、海鮮スープと色々食べ、アルは有限胃袋なので、夕食のため、そこまでにした。
イディオスはまだまだ食べるので、アルの分は空間収納にしまって、後から楽しむことにする。
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