031 物騒な名前の布団

 鑑定スキルが生えた所で、鑑定したい物があった。

 ダンジョン1階の隠し部屋から出た革手袋だ。

 ギルドの鑑定では革手袋というだけで空間収納の品名も同じくだが、宝石の付いたキラキラ宝箱の中に入っていたのだ。

 普通の革手袋ではないに決まってる。鑑定レベルのせいで分からなかったのかもしれない。

 じーっとじーっと見てみると、詳しい鑑定が見えて来る。


【革手袋・ゴーレムを作ることが出来る】


「え、マジで?」


 意外過ぎる効果に、アルはいそいそと革手袋をはめ、ゴーレムを作ってみようとしたが、どんなゴーレムにしろ魔石が必要なのが分かった。

 Bランク以上の。


「え~?Bランク魔石は一つしか持ってないからもったいないし~」


 これまた下層に行ってからのお楽しみか。

 ふと思い付いてジーンズを鑑定してみると、


【異世界のジーンズズボン・コットン素材での最高品質。防御力+15】


「…何か付与されてるよ、勝手に」


 他の物はどうだ、とマジックバッグにしまった物をまた出して鑑定したが、寝具類には付与はされてなかった。とりあえず、で作ったからか【良品】程度だった。


 こだわった羽布団はすごい名前が付いていた。


【虐殺の羽布団・ランニングバードの羽を贅沢に使った逸品】


 その通りだけど、名前にすんなよ、とちょっとやさぐれてみたり。


 ちょっと思い付いて羽枕も作ってみた所、


【虐殺の羽枕・ランニングバードの羽を贅沢に使った極上品。夢見は悪くならないが、いい夢を見るとは限らない】


などと補足が入っていた……。

 逸品と極上品の違いはいかに?


 Tシャツは薄いからか、【防御力+5】で、これも良品だった。さほどこだわりがないのが反映されてるらしい。


 河原にいるついでに、川底の砂を土魔法で河原に集めた。

 あちらの世界と同じなら川底には珪砂が含まれているハズ。

 目的はガラスだ。出来るだけ透明度の高い取っ手付きマグカップ型のグラスをイメージ。

 飲み口は薄く。

 ……成功!


「火魔法付与で耐熱に出来ねぇかな?」


 すると、温かいのも冷たいのも関係なしにこのグラスで飲める。

 丈夫に丈夫に耐熱耐熱、と心の中で思いながら付与。鑑定!


【丈夫な耐熱ガラスのマグカップ・熱湯可。鈍器としても使えて便利なグラス】


 …鈍器まで求めてなかった。

 何だか鑑定を使うごとに、鑑定結果が変な方向に突き進んでるような気がする。

 同じマグカップ型グラスをもう三つ作り、ガラスのティーカップセットを八客作り、せっかくなのでティーポットも作った。

 ティースプーンは鉄で作る。これも八本。


 さて、そろそろお昼なので昼食にしよう。

 よし、オークとんかつをトッピングしたカレーライスと茹で野菜サラダにしよう。

 今、作るのは茹で野菜サラダとドレッシングだけだ。ダンジョン産香辛料で、少しぴりりと効かせる。


 ダンジョンツアーのための作り置きは昼食分のサンドイッチとクッキーだけにして、朝、マジックバッグに移し替えることにする。食べる間際ではバレそうなので。

 夕食とおやつと朝食はそのたびに作ることにする。

 パン屋でパンをたっぷり買って来なければ。少し固くなってもフライパンで温めれば美味しく頂ける。

 …ホットサンドメーカーは?

 錬金術で作ってしまおう。

 鉄の量が心もとないので土台は土魔法、鉄コーティングで。


 アルは準備をするうちに、どんどんダンジョンツアーが楽しみになって来た。

 もし、我儘なお子様たちなら、バッチリとシツケを入れてやる。

 ダンジョン内では親の威光など何の役にも立たないのだから。

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