異世界謝罪専門事務所〜異世界でも土下座します〜
Blue Raccoon
プロローグ
白い部屋
そこに白く狭い部屋があった。
大きさは大体、6畳ほど。
狭い部屋だがとても清潔そうでどこか神聖な空気が漂う部屋だ。
その閑散とした部屋の隅にはただ黒電話が1つだけポツリと存在する——
——
ある日部屋に来客があった。
その来客は部屋に突如として現れた。
現れたのは派手に着飾った女。
パーティの最中に呼び出されたのだろう。
(え?……え!?ここはどこ?)
女はかなり狼狽しているようだ。
当たり前だろう。
先ほどまで違う場所にいたのに、気づいたら知らない部屋に立っていたのだ。
女は辺りを見回し出口を探す。
この部屋は密室だ。
どこにも出口は見つからない。
女は部屋を見回しているとあるものに目が止まった。
黒電話だ。
この白い部屋の隅に置かれる明らかな異分子。
存在感のあるそれに好奇心が刺激される。
ゆっくり一歩。
また一歩。
何か恐れるように女は黒電話に近づいて行く。
(何だろ、この黒い箱……)
どうやら、女は黒電話のない世界から来たらしい。
遂に女の手が届くところまで近づいた。
彼女が黒電話の前まで立ち止まる。
そして不思議そうに
上から眺めーー
左から眺めーー
右から眺めーー
黒電話持ち上げて
下から眺めーー
(何も起こらないじゃない……)
次に女は正面にあるダイヤルに視線がいく。
女がダイヤルに触れる。
ギギッと音がした。
女は勢いよく一歩下がり、頭を抑えて蹲る。
何も起きない。
当たり前だ。
ただの黒電話だもの。
恐る恐る女は顔を上げる。
(何も起きないじゃない)
また女は黒電話に近づく。
そしてダイヤルに指を入れ回す。
ギリリリ。
ギリリリ。
静かな部屋に鈍い金属音が響く。
(何も起こらない……)
ギリ。
ギリリリリリ。
(…………ふむ)
ギリリ。
ギリリリリリ。
ギリリリ。
ギリリリ。
(なんか、ちょっとたのしい。玩具の類いかしら)
女は少し楽しくなってしまったらしい。
いろんな番号に指を入れてはダイヤルを回す。
一通り黒電話と戯れた女はふぅと一息ついた。
そして、黒電話の横に手のひらサイズの手紙が置いてあるのに気づく。
(あれ?さっきまで手紙なんてあったかしら?)
女は少し警戒を高める。
最初からあったのなら気づかないはずがないもの。
危険かもしれない。
危険かもしれないが好奇心が邪魔をする。
女は手紙を手に取った。
そして上から目を通していく——
-お困りのあなたへ-
はじめまして。
この部屋はあなたの謝罪の入り口。
あなたが強く謝りたいと願った時。
そして
あなたが謝らなくてはいけないと世界が判断した時。
この部屋はあなたの前に現れます。
共に解決策をみつけましょう。
私達は何があってもあなたの味方です。
手紙を読み終えるとすぐに電話に着信が入ります。
※電話とは隣にある黒い箱のことです。
※電話が鳴ったら上に乗ってる小さな箱を手に取り耳をつけてください。
※電話は着信専用です。
-謝罪専門事務所『ムーンライト』-
(意味、わからないわ……)
まるで宗教勧誘のような手紙だ。
女は、その怪しい手紙を読み終えると元あった位置に置く。
ジリリリリン——
手紙を置くと同時に黒電話が鳴り始めた。
いきなりの大きな音に女はビクッと肩を震わす。
(やはりこれが黒電話なのね)
ジリリリリン——
ジリリリリン——
ジリリリリン——
(上のこれを取ればいいのよね)
戸惑いながらも女がおずおずと受話器を取る。
音が止んだ。
すると
『もしもし————』
そんな小さな声が聞こえてくる。
女は辺りを見回す。
もちろん周りに人はいない。
『もしもし————』
声は受話器の先端から聞こえている。
そして女は声が発せられた場所へと耳を当てる。
「…………あの、誰ですか?」
『あ、お電話ありがとうございます。私、謝罪専門事務所『ムーンライト』のワビスケと申します。まずはあなたの謝罪について——
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