被害者たち
その後俺たちは他の事件現場を続けて見て回ったが、成果はほとんど得られなかった。
第一の事件――第六街区・センターステーション――成人女性型ヒューマノイド――勤務先の炭素資源管理センターから帰宅途中、駅に入ってきた電車に身投げし大破――復元されたログに暴走直前の思考回路への高負荷以外は特段の異常なし。
第二の事件――第三工区・ハイドロジン
第四の事件――第一工区・
この辺りまで来ると俺もさすがに退屈な気分になってくる。特に、第四の事件の現場で、ヒューマノイドが溶鉱炉に沈んでいく映像はあくびをかみ殺した時に出る涙無しには見られなかった。
「次で最後ですが、どうされますか?」
俺の集中力が落ちているのを検知してか、シモンがそんなことを尋ねてきた。
「もちろん行くとも。ここで引き返したら何もしていないのと一緒だ」
そう応じてから、ひときわ大きなあくびをする。俺自身、事件解決に繋がる有力な手がかりが見つかることはほとんど期待していないが、万が一ということもある。それに、今は退屈にしか思えなくても、後に天啓を得るためのきっかけになることだってあるのだ。地固めの調査を疎かにするわけにはいかなかった。
「カメラの映像を確認するだけなら環境適応センターでもできます。体力を使って出歩かなくとも良いのでは?」
「まぁ、お前ならそうなんだろうけどな」
生憎と人間は、無駄に思えるような遠回りをしないことには目的地にはたどり着けないように出来ている。
第五の事件――第八街区・ハイウェイ――成人女性型ヒューマノイド――勤務先の量子コンピュータ生産プラントに出勤中、突如高架道路上にオートモービルを止め
て、道路下に転落し大破――復元されたログに暴走直前の思考回路への高負荷以外には特段の異常なし。
結局俺たちは、最後まで発見らしい発見もできないまま帰途についたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます