昇格試験
「今話題のルーキーコンビですね!!」
二人のパーティ申請は難なくシャロンに受理され、Eランクへの昇格試験の説明を受けることになった。
「私達って話題になってるんですか…?」
「まぁ、年長者と女の子という珍しい者同士というのもありますけど、やはりユーリさんのいきなりFランク試験を受ける女性がいるというのが注目されていますね。」
ユーリは何も考えていなかったが、教えられてから周りを見渡すと、確かに視線を感じる気がした。
「Fランク試験とEランク昇格試験、どっちの言い方がいいですか?」
「それは難しいなぁ…FランクよりEランク言う方が強い気がするけど、受かってからEランクって言う方が達成感あるよなぁ?」
「そんな事より説明を聞かないと!」
シャロンはアリエルに怯えることも無く普通に話している。私がおかしいのか?とユーリは考えてしまう。
すると、シャロンが「こほん」と咳払いをした。
「お二人は役職をご存知ですか?Eランクになり、それ以降ダンジョンに深く潜るなら、最低でも3種の役職の仲間でパーティを組む必要があります」
「知っとるで!
「そうです!ちなみに、お二人の適正は何でしょうか?」
「二人とも治癒師や」
先程、治癒師と名乗ったせいで、治癒以外が得意なんです!…とはとても言い出せなかった。
「ソウデース」
「そうですか…では今回の試験も大変そうですね」
(た、大変な試験…)
ユーリは思わず身構える。
「わしは多少なら攻撃魔法も使える!任せろ」
アリエルのやる気が隣にいるだけで伝わってくる。しかし、ユーリもEランクにならなければ、二人を追い抜く事など夢のまた夢だ。
「Fランク試験…それは…!」
「それは…」
「スライムの討伐です!!!!!」
「えっ」
拍子抜けした顔でシャロンを見つめるユーリ。
「なっ、なんやてぇえええええ!??」
隣のアリエルがいきなり叫び出し、ユーリはビクッと肩を震わせた。
「ふ、二人では無理か…スライムにはわしの攻撃魔法も吸収されてしまうかもしれん…」
「そうですね…やはり治癒師が二人というのが痛いですね。魔法師ですら、攻撃魔法の威力の低い初心者冒険者の方は苦労しますもんね…」
「クソっ!仲間を増やさな無理なんか…!!?」
アリエルとシャロンが真剣な顔で討論している。
対するユーリは悩んでいた。
────自分の知ってるスライムか、否か!?
自分の知っているスライムなら一人でも余裕だ。しかし、違うかった場合、アリエルも危険に晒すことになる。しかし、もう一度このパーティ募集を始めると思うと憂鬱で仕方がない。
(鉱石や砂採集の帰りに、ツルハシでついでに狩って帰ってたあのスライム…!?スライムは魔法学院の時から討伐対象だった初級モンスター…。いやしかし、そのスライムでここまで真剣に二人が悩むのか…!??)
「うーん…」
シャロンとアリエルはそんな事で悩んでいるとはつゆ知らず、初討伐任務が不安なんだろうなぁと思い、優しい目で見守る。
「傭兵としてランクが上の冒険者を雇うか?」
「いくら位するんですか?」
ユーリが見せて貰った数字は彼女が今日稼いだ金額の三倍の値段だった。
「す、スライムにこの値段…」
ユーリはその金額に目を丸くする。
「スライムというより、同行してもらうのにお金がかかんねんなぁ」
「このお金払うくらいなら、私が死ぬ気で戦います!!!」
「いや、命は大事にせなあかんぞ。命あっての治癒や」
「と、とりあえず!今からだと、暗くなって魔物も増えてしまいますので…。明日お二人で探索に行ってはいかがでしょう?無理そうならそのまま撤退して、傭兵依頼すればいいと思います!」
二人は少し考えて頷いた。
「では!こちらをレンタルします。じゃーん!通信魔道具です!!」
「おおお!憧れの冒険者魔道具!」
アリエルの目は輝いている。
そこにはイヤリングがあった。
「最新型は不特定多数と連絡先交換ができたり、文章も送れちゃうんですよ!!残念ながらこのレンタルは初期型ですけどね!パーティを組んでいる人同士で、この同じ通信アクセサリーを付けていると会話ができます!この石に手を当ててください!」
二人はシャロンに言われるがまま石に触る。すると突然魔力を少し吸われた。身構えてなかった為、背筋がゾッとする。
「はい、お二人がこのイヤリングの魔具に登録されましたので、離れていても連絡が取れます!」
「やったな!ユーリちゃん!!!」
アリエルは嬉しそうに耳にイヤリングを付ける。ユーリは少し慣れてきたとはいえ、未だにアリエルの容姿が怖かった。
「こちらはとても古いので使い勝手が悪くて…申し訳ないです。新調したいのですけれど、この試験の為だけなので、予算がおりないんですよね」
「Eランクになったらお金貯めて、良いやつを買えってことやな!」
「基本外しててもらって、任務の前に付けるといいと思います!では、説明は以上ですので、明日頑張ってくださいね!」
シャロンは両手でガッツポーズをとる。
「じゃあ明日の10時にギルド会館前で!!よろしくな!」
そう言うとアリエルは街を背にして帰って行った。ユーリは「お腹減ったなぁ」と言いながら酒場を目ざした。
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