女子会
「って事があってさぁ!!」
ユーリは今日あった出来事をドロシーへ話す。
「うっわ…それは最低だわ」
ドロシーはユーリの話を聞きながら顔を保湿する。
「そのリアって子知ってるわよ。あまりいい噂は聞かないわね」
ドロシーは、家族で宿屋酒場を営んでいる分、人の噂には詳しかった。
「女の子ぉ!!って感じだった…悔しい、ムカつく」
ユーリはスライムで作ったクッションを伸ばし、八つ当たりする。
「ユーリ、ちょっと髪乾かしてよ!風の魔石も安くないのよね。あとスライム製の調合保湿剤無くなるから頂戴」
「…ドロシーも私の事結構使うよね、ウィンド。保湿剤は家に帰らないと無いや」
ユーリはドロシーの髪に手をかざす。
「私は友達だからいいのよ!でも明日には出ていけって言われたんでしょう?どうするの、出ていくの?」
「一緒に住んでたけど、家賃払ってたのはカイくんだし…。ただ家具とかは私が作った…」
「え、なに!?採集以外にもクラフトもやってたの!?あと料理よ!詳しく聞かせなさいよ!」
ユーリがドロシーの髪を乾かし終える。すると彼女はベッドから椅子に座り、足を組んでこちらを向いた。
「…カイくんが帰ってきたらヒールの効力のあるお風呂入れて…」
「えっ、ちょっと待って何それ欲しい」
「家に対魔の陣引いて」
「セキュリティやっば」
ユーリの言葉にドロシーが相槌する。
「スリプル…あ、さっきの男に使ったあれ。子守唄で寝かしつけて、薬剤になる草の採集と砂集めに出る」
「さっきのやっぱり魔法だったのね…」
「朝4時位まで採集採掘して、そこからごはんの狩りを始めて…」
「いや待てストップ。時間えっぐ。ツルハシもって剣まで持っていくの!?」
「え、聞いてくれる?持ち運び大変だったから収納術習得しちゃったー!」
軽いノリでとんでもない事をサラッと言う。
だが、昔から割とあることでドロシーには耐性があった。
「まぁいいわ…食材ならまとめて市場で買えば良いじゃない」
「少しでも新鮮なものをって思うじゃん?その延長線で調味料等も研究して作ってたら、レベルが上がっちゃって…。いやでもさすがの私も畜産は諦めたから!臭いと管理がねー」
臭いさえクリア出来たら畜産もする気だったのか?…と言いたい気持ちを飲み込むドロシー。
と言うかいつ寝ているのかも怪しい。
「魔道具は使わないの?」
魔道具とは魔石をはめると使える、自分が使えない魔法でも使えるようになる便利グッズだ。
「一生懸命頑張る私が…」
「あー、わかったわかった」
そう。恋は盲目、猪突猛進がここまで似合う女はユーリ以上にドロシーは知らなかった。
「魔法学院での一件…やっぱり懲りてないわね」
「ぐっ」
ユーリの目が露骨に泳ぐ。
「実際問題どうするの?暫くは泊めてあげるけどずっとは無理よ、あんたいると狭いもん」
「え、泊めてくれるの!?ドロシーの事だから一日泊めてあげただけでも感謝しなさいよね!?って言って来ると思ってた」
「出ていきたいなら出ていっていいわよ」
「出ていきたくないけど…野営するか…」
「やめなさい…。あんた、そういう所よ!?ちょっと鏡見てみなさいよ!!肌も荒れ…綺麗じゃない!なんでよ!!」
髪は腰まで伸び、前髪も顔を隠すほど長いので見えづらいが、肌はとても綺麗だった。
「わたしもヒール風呂入ってるから…」
「ちょっと、今日からこの家にヒール風呂沸かしなさい!!!」
ドロシーの美容の薬品は、大体ユーリの調合品を使っていた。
「こほん。そうじゃなくて、その髪鬱陶しいでしょ?切りなさいよ!あと服も買いなさい!」
「確かに慣れすぎて…何も思わなかった。服は、カイくんの報酬じゃ買える余裕無かったから。流石に裁縫のスキルを上げる時間なくて…」
何も知らない人から見るとユーリの髪は不衛生に見えた。
ユーリは「確かに」と納得して手を髪にかざす。
「ちょっと待ちなさい!?あんた自分の風で髪切ろうとしてない???」
「え?あ、うん」
それを聞いたドロシーはユーリの腕を掴む。
「ユーリ!自分を大事にしなさいって、何回言ったらわかるのよ!!魔法学院の時と同じじゃない!!」
ドロシーは悲しそうな顔をしながら、真剣な目でユーリを止めた。そして机の上に置いてあった封筒を取って手渡した。
ユーリは中身を確認する。そこにはお金が入っていた。
「え、何これ?受け取れないよ」
「今日のバイト代だと思って受け取りなさい!」
「だとしても多いよ」
中には2万ゴル入っていた。一日のバイトでは到底賄えない大金である。
「そのお金は、明日の投資分よ。私も一緒に荷物を引取りに行くから、よろしく。良いから早く寝なさい!!」
ベッドの下には布団が敷いてあり、ドロシーに言われるがまま横になる。
「明日は忙しくなるわよユーリ!……おやすみ」
「おやすみドロシー」
そう言って光の魔道具を消した。
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