第11話 芽衣の誘い。
テスト最終日の試験中。
テストに向けて勉強したおかげで早く解くことができて、今は試験の終了を知らせるチャイム待ちである。
『キーンコーンカーンコーン』
チャイムが鳴って全科目の試験が終了した。
この学校は試験日の時は12時前に帰れるので結構腹が空いた。
財布を確認すると、4000円と少し金に余裕があった。
帰り支度を済ませ、席を立つ。
莉子の席へと向かうと、後ろから肩を叩かれた。
誰だろう?と思い後ろを振り向くとそこには芽衣がいた。
「あの、明人くん、今日放課後時間ありますか?」
「放課後?」
芽衣に放課後の予定を聞かれたことは一度もなかったので、俺の聞き間違いかと思ってしまった。
「うん、放課後なんだけど、よかったら一緒にお昼ご飯食べに行きませんか?」
「それはいいけど、どうしたの?」
気になったので誘った理由を聞いてみると、芽衣は少し恥ずかしそうに顔を赤くした。
「その……アニメの話?がしたくて…!」
アニメの話?って芽衣の言い方的に誘った理由は特にないのだろう。
まぁ、ヲタク友達の芽衣がせっかく誘ってくれたのだから行こうかな。
「今期もアニメは豊作だから共有したいよねー、お金ないから近くのファミレスとかで大丈夫?」
腹も満たせて、しかも芽衣とも話せるという一石二鳥でファミレスを選んだが、そういえば、放課後に女子とファミレスに行くのなんて人生初ではないだろうか。
そう考えると、青春ラブコメアニメの主人公に近づけた気がして少し嬉しくなる。
「はい!大丈夫です!さぁ、行きましょう!」
芽衣が話を終えて歩き出してしまったので芽衣にもう一度話しかける。
「莉子に先帰るように言ってくるから少し待ってて」
「分かりました」
芽衣にお願いして俺は急いで莉子の席に行く。
莉子は俺を待っていたようで席に大人しく座っていた。
「明人、早く帰ろ!今日はテスト終わったから一緒に何か……」
「そのことなんだけどさ、今日はちょっと用事があるんだよね」
莉子の言葉を遮って、俺は言った。
「えっ……、どうして!?もしかして、委員会とか?」
前回放課後に買い物しに行った時の帰り、すごい対抗心的な感じで芽衣のこと睨んでたからなぁ……正直に言うか迷う。
でも、隠すようなことでもないから正直に言うか。
「芽衣とこの後一緒に話そうってなったんだよね」
俺が正直に話すと、莉子は「えっ!?」驚いた表情をした後、芽衣を見た。
「伊那さんと?それってデート……?」
目をうるうるとさせて縋るような目で俺を見てくる。
これはデートと答えてはいけない気がする。
まぁ、好きな人に向かってほかの女とデートしてくるなんて絶対言わないけど。
それに、芽衣はデートのつもりで誘ったわけではないと思うので、この放課後の誘いはデートではないだろう。
「デートではないよ」
「そかそか、じゃあ先に帰るろうかな、じゃあねー」
俺の否定にどこか嬉しそうに「うんうん!」と頷いて満足したのか先に帰ると言ってくれた。
「ごめん、莉子また明日」
莉子が教室を出るときに謝罪をした後、俺は芽衣と合流した。
「話は終わりましたか?」
「うん、終わったから行こうか」
そう言って俺と芽衣はファミレスに向かって歩き出した。
でも、その時俺は気付かなかった。
俺と芽衣の後を追う、彼女の姿を。
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