第2話 イメチェンした俺に焦る幼馴染。


莉子と一緒に帰ったその日の夜。俺はさっそく自分磨きについて調べた。


色々調べた結果、まずは髪形を変えようとなり次の日が土曜日だったので髪を切りに行った。長髪だったので結構時間はかかったが、結構サッパリし前髪は目が見れるくらいの長さになった。髪のセットの仕方も教わったので、これで週明けの月曜日には莉子を少しは驚かせられるはずだ。


そして日曜日はとりあえず勉強をした。あと、一応ワックスの練習もした。

今までも決して成績が低かったわけではないが、高いわけではなく稀に莉子より酷い時もあった。この現状を変えるべく復習をし、休憩時間で筋トレをしているとあっという間に寝る時間になっていた。

切りのいいところで俺は勉強を終えて、ベッドに横になる。


ついに明日は、莉子にイメチェンした俺を見せるのか……

と言っても二日じゃそんなに変わってないと思うけど。

それでも、髪形が変わったので今から会うのに緊張する。

髪をセットして会うのなんて初めてだからなぁ……

これを機に、莉子に男として見られるといいなぁ……

なんて、願っていると疲れのせいか寝てしまった。


***


月曜日、私はいつも通りの時間に起きる。

アラームを止めると、ふと先週のことについて思い出した。


「明人、どうしっちゃったのかな……」


あの時の明人は心ここにあらずな感じで、私にあまり目を合わせてくれなかった。

表情もどこか悲しそうで、あんなことは初めてでどうしたら良いのか分からなくて、お互い黙ったまま家に帰ってしまった。


も、もしかして、私嫌われちゃったのかな?

明人の彼女になるために、垢抜けたりして頑張ったんだけどなぁ……


好きな人に嫌われる。

仮の話であっても、そう考えただけで胸が締め付けられた。

私が何かしちゃったのならちゃんと謝ろう。

明人とぎくしゃくした関係になんて絶対なりたくない。


そう決意して私は身支度をする。

朝は時間があまりないので、急いで朝ご飯を食べて髪が整っているか玄関で最終チェック。


「うん、これで大丈夫かな!それじゃあ行ってきまーす!」


私の隣の家が明人の家なので、すぐに到着した。


いつもなら、ここですぐにインターホンを押して会いに行くんだけど、あの時の明人の悲しそうな顔を思い出して中々インターホンが押せない。


何度あの日のことを思い出しても私が明人を怒らせるようなことをした記憶がない。

あったことと言えば……告白されたくらいかな?

でも、明人は私のこと恋愛的な意味で好きじゃないから関係ないよね……

それはそれで悲しいけど……

色々考えるけどやっぱり何も原因は思い付かなかった。


とりあえず、いつも通り元気よくいよう!と考え、深呼吸をしてからインターホンを押す。すると、ドアがガチャっと開いて中から制服姿の人が出てきた。

この前のことが不安で明人の顔を見れないでいると、近づいてきた明人が私の前で止まった。


「おはよ、莉子」


「う、うん、おはよ!あき………と?」


俯くのをやめて、元気よく明人の目を見て挨拶しようとすると、目の前に見たことない人がいた……

え、でも明人は一人っ子なはずで、親戚にこんなカッコいい人がいるなんて聞いたことなかったし……


えっ、誰なの!?

私が戸惑っていると、その男の人は恥ずかしそうに髪を触った。


「ど、どうかな?髪セットしてみたんだけど……」


「えっ、あ、明人なの……?」


「うん、そうだよ」


「そ、そうなんだ……」


驚きすぎて声が出ない。

え、明人がカッコよくなっちゃった………

どうしよう、明人を好きなのは私だけだったのに、このままだと明人が女の子にモテちゃうよ……



それにしても、突然どうしちゃったのかな。

もしかして、好きな子ができたとかかな?

もしそうなら私ここで泣いちゃうんだけど……

とりあえずイメチェンした理由が知りたくて私は明人に聞く。


「イメチェンいいね!でも突然どうしちゃったの?」


私の質問に対して明人はどこか辛そうな表情をして答える。


「まぁ、自分磨きしないとなぁって……」


自分磨きしないと?

少し言葉に引っかかったけど、私はそれどころじゃなかった。

続けざまに私は別の質問をする。


「もしかして、そのまま学校行くの?」


その格好のまま学校に行っちゃったら、クラスのみんなが……

私はなんとか引き止めたくてそう質問すると、明人は残念そうな顔をした。


「そのつもりだけど、似合ってなかった…?」


そう言って、明人は俯いてしまった。

間違って伝わってしまったので私はすぐに訂正する。


「ち、違うよ!?似合ってるんだけど、そ、その……ね?何て言うのかな……」


どう言い換えても、明人を傷つけてしまいそうで途中口籠ってしまう。

私の言葉を聞いてか明人はまた恥ずかしそうにしていた。


それから沈黙の空気が流れて、またこの前みたいな空気になっちゃいそうで、私は引き止めるのを諦めて話を変える。


「それよりさ、明人!早く学校行こ!」


「う、うん、そうしようか」


強引に話を終わらせて私は二人並んで歩き始める。


ちらっと明人の横顔を見る度に悲しくなる。

今の私では、明人に釣り合ってないと思う。

それくらい明人は変わっちゃった。


学校に着いたらどうなるのかな?

他の女子からアプローチされて付き合ったりするのかな……?


しちゃうよね……

せっかく垢抜ける努力して明人の隣にいられるようになったのになぁ……


明人に彼女が出来たら、私泣いちゃうよ……

明人の彼女に、私はなれるのかな……


学校に行くのが、心配でしょうがなかった。

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