第12話 一ノ瀬 蓮
「おじゃましまーす」
伊東雅美は部屋に上がると辺りを見渡しながら綺麗に片付いてるね、と感想を述べた。
「小さい頃から部屋だけは綺麗なんですよ」
「テレビが無いんだねえ、若者って感じだね」
築年数が比較的新しい一Kのマンションにはテレビが無い代わりに大きな本棚があり小説がびっしりと並んでいる、他にはベッドとローテーブルがあるだけのシンプルな部屋だ。
「そんなに歳は変わらないじゃないですか」
二十六歳になる雅美はやたらと自分のことをおばさんだと卑下していた、十八歳の蓮とは実際八個離れているが二十歳の設定なので六歳差だ。
「じゃあすぐに作るから聖斗くんはゆっくりしててね」
この女には何の恨みもない、しかしあの男の妻になってしまったのが運の尽きだと諦めて貰うしかないだろう。
「僕も手伝いますよ」
後ろから抱きしめると一八二センチの蓮より頭一つ以上小さい雅美はコチラに向き直り蓮を見上げる姿勢になる。
「ダメだよ」
そのセリフは無視してキスをすると舌を絡ませた、食事なんてどうでもいい、さっさとこの女を物にして計画を先に進めなければならない。
「んっんっ」
唇を離すと雅美は濡れた瞳で蓮を見つめてきた、そのままベットに促すとあっという間にブラのホックを外して乳房を口の中に含んだ。
「んっ、聖斗くん、気持ちいい……」
見かけよりも豊満な乳房に吸い付きながらこの顔でスタイルまで悪かったらどうにもならなかったな、と心の中で毒づいた。
スカートの中に手を突っ込みパンツの中に手を入れるとすでに考えられないくらい雅美は濡れていた、あらかじめ指先に仕込んでおいた覚醒剤を雅美のあそこに塗り込むと喘ぎ声は次第に大きくなっていく。
この方法だと蓮も覚醒剤を常用する事になるが先の事など何も考えていないしどうでも良かった。
「聖斗くん、ゴムは……」
蓮が生で挿入しようとすると辛うじて雅美は呟いたが、その言葉が聞こえなかったフリをしてそのまま挿入した。
「ん――――――――」
構わず腰を振り続けるとあの日見たDVDの映像がフラッシュバックする――。
明が単身赴任で福岡に行く、高校卒業間近に聞かされた蓮は自分も付いていくと提言した。
「蓮は大学があるだろう、せっかく希望の大学に入れたんだから」
「でも家族二人なのに」
「葵だけじゃなく蓮もファザコンだったとはな」
明は笑ったが寂しそうな笑顔だった。
「そんなんじゃないけどさ」
蓮はしぶしぶ快諾した、実際問題どうする事もできない。
今の家は蓮一人では広すぎるので売りに出してお互いに賃貸マンションに住む事に決まった。
家の買い手も決まらないまま引っ越しの日は迫っていた、蓮は荷造りが終わるとダンボールが積み上げられたリビングで昔の記憶を蘇らせる。
生まれた頃からこの家に住んでいた、明と二人きりの今とは違い母親と葵がそこにはいた、母親のことはあまり覚えていないが優しい人だった気がする、家にはいつも葵がいた、ご飯を作る葵、洗濯物をたたむ葵……。
八歳年上の姉は蓮にとっては母親のような存在だった。
葵が死んだ時、蓮にはなぜ死んだのかが理解出来なかった、当然だろう。当時の蓮に自殺で死んだなんて言う訳がないし聞かされても理解出来なかっただろう。
リビングを出て葵の部屋に入った、部屋は当時のままになっているが明が豆に掃除をしているので綺麗に保たれている。
壁に掛けられた制服に目をやる。
「こんなに小さかったのか……」と一人呟いた。
葵の部屋を後にしてリビングに戻る途中で明の部屋が目に入った、開きっぱなしのダンボールが三つ、これしか持っていくものが無いのだろうか。
いくらなんでも少なくないか、蓮は首を傾げながら明の部屋に入りダンボールの中身を確認する。一つは洋服のようだがあまりオシャレに興味がない明ならこんなものか。
隣のダンボールには本や雑貨、CDが一枚、乱雑に放り込まれていた、ミスチルのアルバムを手に取るが明が聞いているのを見たことがなかった。そもそも聞く機材がない。
なんともなしにCDのケースを開く。
『七月十日 ☆☆☆☆☆』
マジックで書かれた中身をみて血液が逆流してきた、葵の命日だったからだ。
何だよこれ、まさか葬式の映像が入っている訳でも無いだろうが、気になった蓮はリビングに戻りDVDのデッキに滑り込ませた、明は仕事なのでまだ当分帰ってこない。
『ちゃんと咥えろよ』
五十インチの大画面に映し出されたモザイク無しの陰部を見てタメ息を付いた。
(なんだよ、無修正のエロ動画かよ、しかも女子高生ものって)
蓮はこれを見ながら自慰をする明を想像すると笑いが堪えきれなかった。
(言ってもまだ四十六歳だからな、オナニーぐらいするか)
DVDを消そうとリモコンを画面に向けた時、四つん這いになった女子高生の制服がどこかで見たことがあるような気がした。
「あれ?」
女子高生は四つん這いになり後ろからも挿入されている、撮影している男の陰部を加えているせいで顔がよく見えない。
蓮は立ち上がると葵の部屋に向かう、掛けてある制服を確認すると心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる。
再びリビングに戻ると早送りする、先程とは違う体位で挿入しながら撮影している場面になり早送りをストップさせると、女子高生の顔がしっかりと確認できた。
「お姉ちゃん……」
女子高生の目は虚ろで表情がなく、蓮が知っている葵と同一人物とは思えなかった、しかし葵が自殺した理由がこの行為のせいだということはすぐに理解できた。
画面に映る葵の目はすでに死んでいた――。
「雅美さんイキそうだよ、中に出していい」
「ん――、だめ、聖斗くん」
「でも俺、雅美さんの中でイキたいよ……」
腰を振るスピードを上げながら耳元で囁くと雅美はウンウンと頷いている。
「ダメだ、イクよ!」
「聖斗くん、出して、中に出して!」
雅美は行為が終わりしばらくすると、フラフラとおぼつかない足取りでキッチンに向かいハンバーグを作りだした。
「聖斗くん、お皿あるかなあ?」
キッチンから雅美が顔を出す。
「すみません、料理をしないもので皿もないんですよ、これしか」
紙皿をキッチン上部に設置された棚から取り出すと雅美に手渡した。
「いいよ、本当に料理はしないんだねえ」
紙皿にハンバーグを盛り付けてソースをかける、付け合わせにはブロッコリーと人参、ジャガイモの上にはバターが乗っている。
「食べる時にスープ温めてね」
時計を確認すると雅美は慌てた様子で帰り支度を始める。
「聖斗くんと一緒に食べたかったけどごめんね」
預けた子供を迎えに行く時間なのだろう、すでに二十一時を回っている。
「いえ、本当にありがとうございます」
雅美を抱き寄せてキスをすると、名残惜しそうに扉を開けて出て行った。
「はー、疲れた」
ベッドに倒れ込むとスマートフォンに着信があり液晶には明の名前が表示されている。
「もしもし」
「飯食ったか?」
「まだだけど」
「どうだ、たまには一緒に」
「良いね」
「赤羽駅前で待ってるからすぐこれるか」
「了解」
通話が終わると裸の上半身の上からシャツを羽織り出かける準備をする、ハンバーグが乗った紙皿をゴミ箱に捨てると蓮は自宅を後にした。
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