第2話 序章
ラウルス銀河団の最端に惑星「ナッタ」と呼ばれる猫人の国があった。
猫人とはヒト型人種の一つで、簡単に言えば猫のような特徴を持った
ナッタはいわゆる小惑星と呼ばれる小さな星だった事もあり、一族の王が統治する平和な惑星国であったとされてる。
ナッタの人々は海に囲まれた惑星内にある唯一の大陸…といっても小さな陸地ではあるのだが、この地で上手く自然と調和しながら、機械文明とは異なる生き方をしていた。
このナッタの人々が暮らす大陸の中央に王都と呼ばれるには幾分ささやかな都があった。
そしてこの王都の真ん中にあるのは大きな湖であった。
王宮も都も、この湖の周りをぐるりと囲むように立てられていたが、湖は神聖視され人の手が入る事は無かったようだ。
と言うのも、初代ナッタ王はこの雄大な湖の深部にエネルギー源鉱石を発見し、この鉱石から発するエネルギーを元に、元々豊かな土壌であった湖岸の周りにあるわずかな平地と、森の恩恵を活かしながらこの地に国を興す事を決めたとされているからである。
そして湖の底にあるエネルギー源鉱石が何であるか?は代々の王のみに口伝され、人々が暮らすには十分なエネルギーの恩恵を「湖神ナッタ」の恵みとして受け入れ、王族は神の意志を預かる神子(ミコ)の一族であるとし、一族の長を王として敬い穏やかに暮らしていた。
しかしこの平和な猫の惑星は今から10年前に忽然と姿を消した。
*****
今から10年前の夜の長さが一番長いとされる日、ナッタの王宮に大きな轟音と振動と共に王の間の床が割れ、そこから火の手があがった。
崩れる王宮の様子と、揺れる大地の異変に不吉なモノを感じたナッタの王は、息子と娘を銀河団の直轄地である恒星レイムリアへ非難させるようにと近衛の隊長に指示を出し、その他の兵を従え民の避難を行うべく城下へと向かった。
ナッタの幼い王子は最後まで父と共に残り、民の避難を手伝うと抵抗したが、まだ子供であった彼の抵抗は近衛の隊長に敵うはずも無く、我が子を恒星レイムリアへ避難させるように言い渡した主君の姿にナッタの行く末を案じた隊長は、王の名と意志を守れるものはあなた様だけであり、ナッタの国を無くさないで下さいと告げ、小さな王子を宇宙船へと押し込んだ。
聡い王子は現王である父の様子と近衛の隊長の言動に「良くない何かが起きている」と察し、言いようのない不安を抱えながら、先に脱出した妹の船を追うように惑星外へと脱出した。
程なく宇宙空間へ投げ出されたナッタの王子を乗せた船内で、彼は自身を乗せた小さな船の小窓にへばり付き、その小さな目を大きく見開き星の異変を見つめていた。
数分後、惑星の深部からゴォォォンと地を這うような轟音が這い出し、その間を縫うように光が飛び出すと、ナッタの王子を乗せた小さな宇宙船は眩しさを感じない閃光の中に包まれ、王子はこの輝く真っ白な空間にたった一人きりでいるような感覚を覚えた。
やがて静かに光が閉じ、再び宇宙が暗闇へと変わる頃、惑星ナッタがあった場所はただの広い宇宙空間が延々と広がるだけであった。
小さな窓から何もかもが消え失せた暗闇をぼんやりと眺めていたナッタの王子は、ふと力が抜けたようにずるりと床へと崩れ落ち、このまま彼の意識も暗闇へと落ちてしまった。
こうして惑星ナッタはラウルス銀河団より忽然と姿を消したのである。
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