学園戦争(旧)

小鳥遊 マロ

第1話 戰爭

 ──4月7日、薩摩鶏ノ岬沖海上


「おい、おいっ! サクラ、しっかりしろ! おいっ!」


 クリスティーナは必死に私の肩を揺する。


「……んっ……ん?」

「良かった、気が付いたか!」

「あれ? 私……何をしてたんだっけ……」


 何だか頭はボーッとするし、甲板のあちこちからは火の手が上がってるし、それに複数の悲鳴が聞こえてくる。


「さっき頭をブツケて、軽く記憶喪失を起こしているな。──サクラ、私たち第一遊撃部隊は本土防衛作戦である『天一号作戦(菊水作戦)』を遂行するべく、ミタラシ沖を出航した。そして、敵であると遭遇し今は戦闘状態にあること。思い出したか?」


 クリスティーナは壁にもたれ掛かる私に手を差し伸べる。


「……うん、思い出したよ。ありがとう、クリスティーナ」


 私はその手を取り、立ち上がった。


「よしっ! 急いで弾薬を運ぶぞ!!」

「分かった!」


 私たちは、必死に戦う生徒なかまたちのところに弾薬箱を運ぶため作業を始めた。


「「「うああああああああ!!!!」」」

「林、しっかりせい、林!!」


 弾薬を運んでいるこの瞬間も、次々と仲間たちが航空機による爆撃や機銃により痛々しく命を散らす。

 

「衛生兵、衛生兵ッ!!」

「こっちにも頼む! 衛生兵!!」

「あぁ、分かった!」


 駆け付けた衛生兵の生徒も忙しなく負傷した生徒たちを運ぶ。


「「どぅああああああああ!!」」


 そこへ、航空機が機銃で攻撃をしかけてきた。


「あ゛、あああ゛っ゛!!」

「クソッ! アイツら、ワザと衛生兵を狙っているだろ!」

「弾を、弾をくれーー!!」

 

 修羅場と化したこの戦場の中、私は呟いた。


 「ねぇ、先生……私はどうすればいい?」


 *    *    *    *    *

 

 ──7月7日、レッドココナ島 


 日の丸帝国陸軍は、暗闇の中をお腹を地面につけて匍匐前進していた。菊の髪飾りをつけた金髪の少女、キクもその一人。

 憎っくきフィフ公たちに奇襲攻撃をしかけ、ひと泡を吹かせてやるためだ。

 陸軍歩兵大尉であり、大場は手で静止をかけた。ここで待機して、翌朝に攻勢を仕掛けるという意味だ。

 日の丸帝国陸軍の兵士生徒の中には、戦意を滾らせている者や死ぬのが恐ろしく怯えながら神に祈りを捧げる者、日の丸ハチマキを締め直す者などが居た。


 ──翌日未明


「愛しのデパートのバーゲンセールが恋しいよ」

「俺はトゥインキーが恋しいさ。あの味が今でも忘れられない」

「私はコーヒーだな。戦争に入ってから一口も飲めていないからな」


 フィフスタ軍の兵士生徒たちは悠々と雑談したり、腹ごしらえをしていた。

 そしてその油断をしている敵兵に対して銃口を向け、息を潜める日の丸陸軍。──敵との距離は僅か15メートル。


 ダン、ダダダダン、ダダ、ダダダダンッ!!

 

「うっ!(英語)」

「うあっ!(英語)」


 この時、緊張感が不足していた一部の敵兵は不意打ちにあい、やられてしまう。


「襲撃だー!(英語)」

「戦闘態勢っ!(英語)」

「来客だ! デイサ!(英語)」


 ドッカーンッ!


 フィフスタ軍の兵たちは仲間がいる塹壕へと走り、銃弾から逃れる。


 ヒュゥウウウウウウン、ドカーンッ!!


「「「「「うあああああああああっ!!」」」」」

「突撃ィイイイイイッ!!」


 味方の咆哮に大場も負けじと軍刀を振り、力強く叫び突撃を開始。


「「突撃ィイイイイイ!!!!」」

「突撃ーーー!!!!」

「「うあああああああああああッッ!!」」

「討ち取れー!」


 大場が指揮する部隊もそれに続いた。

 日の丸陸軍は味方の擲弾筒による爆発音で一斉に立ち上がり、ラッパ手の突撃ラッパとともに、万歳突撃(白兵突撃)を敢行した。

 フィフスタ海軍陸戦隊・兵站へいたん部隊は玉砕攻撃をしてくるデイサに対し塹壕に設置した機関銃、“ブローニングM1919重機関銃”や自動小銃などで応戦。


 日の丸陸軍は銃弾が飛び交う中、一人でも多く道連れにしようと走り続ける。


「……先生、助けて下さい。──うああああっ!」


 キクはやられていく仲間を見て泣きながらも、大声で自分を押し殺しフィフスタ軍を一人、また一人と銃剣で刺していった。


 

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