第2話
2話
その日は仕事で残業してて、僕が残されたことに対して納得いかなかったのと。それでも冷静に戦って最終的には圧勝で帰ってきたのとで。鬱憤を晴らすという意味と祝杯という意味で珍しくビールを飲みたくなった。
いつものセブンマートに立ち寄ると今日もタムラさんがいる。
ビールを買う僕に対して彼女は
「年齢確認お願いします。いくつなんだキミは〜。かわいい子には年齢を聞いちゃうゾ!」といたずらっぽく言う。
「24」
「見えすいたウソをつくんじゃない」
「…仕方ないなあ」
確かにこの頃の僕はまだ髭もほとんど生えてこないし、脚なんかひょろっと細くてまるで中学生だ。大人って感じの体型はしていない。仕方ないので僕は証拠として免許証を見せる。
「…本当に24?やだ、同い年じゃない。ごめんなさい、あなたあんまり可愛いから。実は10代なんてこともちょびっとあるかな、なんて本気で思ってた。へへへ。」
「いいんだ、慣れてるよ。」
少しずつ、ほんの少しずつだけど、彼女との距離は縮んでいった。思えばこの日同い年だと分かった時から彼女と話すことは多くなってきたような気がする。
ーーーーー
ある雨の日。僕はまたセブンマートに寄ってから帰ることにした。しかし彼女はいなかった。いつもシフトが同じわけではないからそんな日だってあるだろう。
少しだけガッカリして缶コーヒーとパンを買い(さて帰るか)とその時、ドザッと勢いよく雨が急激に強くなった。滝のような大雨だ。
あと3〜4分も歩けば家という距離だが、この雨量はさすがにやり過ごそう。傘があるとはいえ、こう大雨では足元がびしょ濡れになってしまう。靴の中が濡れるのは嫌なのでここは待機、マンガでも読んで少し待つか。と店内に戻ると彼女がいた。私服だ。森ガール的な服装をしていた。すごく似合う。
「今あがり?」
「そうなんだけど、雨すごいね」
などと話しているうちに弱まってきた。
「弱まったしオレ帰るわ。じゃあまた」
「待ってよ。私傘ないの」
いや、売ってんじゃん!と思ったけどそういうことじゃないなと思った。
「…入ってけば」
「へへへ。ありがと」
60センチの普通サイズの傘だ。大人2人入れるギリギリだった。
ほぼ密着した状態でタムラさんの歩幅に合わせて歩く。
僕の脚は171センチの身長の割には長いしタムラさんは身長が150センチくらいしか無かったので意識して歩幅を合わせてないと置いていってしまいそうだった。
「あなたのお家、方向だけはいつも見て知ってるわ。私も同じなの。こっちよね。」
(いつも見てんだ…)
「うんまあ、近くだよ。タムラさんちは?」
「私んちも近いから、いつも歩いてきてるの」
その方向はほとんど一本道なので多分タムラさんちと僕のうちは同じ通りにあるのだろう。
そう思ってしばらく歩いたが、そろそろ自分のうちに着いてしまう。彼女のうちはどこなんだ。
「着いた。ここがおれの部屋。なんだ、タムラさんちの方が遠いのか。そしたら傘は持ってっていいよ。おれここだからじゃあね。」
「通り過ぎたわ」
「え?」
「私んちはもうとっくに通り過ぎてるの。でも2人で歩きたかったから。」
何を可愛いことを言い出しているんだこの子は
そんなこと言われたらもう…
「上がってく…?」
「へへへ…うん。上がってく」
僕はタムラさんを部屋に上げた。
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