相合傘の思い出
光野彼方
第1話
◎相合傘の思い出
1話
その日、僕は家から1番近いコンビニであるセブンマートの新商品の冷製パスタを食べたくなった。前々日から気になっていたのだが、まだ買おうという決断をするには至っていなかった新商品だ。
初めて見た日は雑誌を買う分しかお金を持ってきてなかったし。昨日はそんなに暑くなかったので気分じゃなかった。
しかし、今日は暑い!これは冷製パスタを買えということじゃないか?僕は期間限定と新商品に目がないタイプだ。今日の昼飯は決まった。ちなみに、お昼に食べるから昼飯と表現したが、本当言うとこれは晩飯にあたる食事だった。なぜなら僕は雀荘の夜メンバー。夜に出勤して昼ごろ帰って寝る生活なのだ。今から食べるのは晩飯の役割を果たす食事なのである。
冷製パスタを手に取ってレジに並ぶ。レジに店員は2人おり2人とも若い女の子だった。そこへ頑固そうな老人が順番を無視して精算しようとする。
僕はスッと腕を伸ばしてそれを止めた。
「このコンビニはフォーク並びなんです。ほら、足元を見なよ。」
足元にはフォーク並びでお願いします的な誘導をするテープが貼ってある。しかし視野の狭い人ならそれに気付いてないだけの可能性はあるのでなるべく穏やかに僕は言った。
「おっ、おお。そうか。」
恥ずかしそうに老人は最後尾に向かっていった。恥をかかせてしまったのは悪かったなと思ったが、しかし割り込みはダメだ。僕だけが迷惑するわけじゃないしな。
僕が会計する番が来た。レジの女の子は学生だろうか。いや、実は23歳くらいなのかな。背は低いけど。子供ってわけじゃなさそうだ。けっこう長いであろう黒髪をお団子にしていて、それが彼女には似合っていた。瞳の大きな綺麗な子だ。
すると彼女はこう言った。
「あたためますか」
冷製パスタである。
「う…まぁそれも美味しい可能性はあるが今日の所は普通に食べてみるよ。あたためは不要で」と僕は冗談を言ってみた。すると彼女もその意味がわかったようで
「ヤダ〜恥ずかしい」となった。
あんまり面白かったからつい名札を確認してしまった。
(アルバイトのタムラユウコさんか)
これが僕とタムラユウコさんの出会いだった。
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