【034】即興お題漫才闇鍋バトルその2
「はいどうもダブルマグナムです」
「お願いします」
「先程トップバッターが見事に煮崩れていきましたけども」
「そんなん言うあかん! 俺らは俺らで頑張っていかんと」
「まあ確かにそうなんですよ。言うても僕らもベテランの域に近づいてるわけですから」
「年数だけはな」
「ここはひとつバシッと決めて、先輩らしいところを見せていきたいと思っております」
「ええ心意気や」
「ちなみにお題は二つ増えまして、歌と未確認飛行物体が追加となっております」
「余計に難しい言うことやなー」
「でな、新しいゲーム考えてきたんやけど」
「ちょっとちょっと、煮崩れる気配しかせえへんねんけど大丈夫かいな?」
「大丈夫大丈夫。俺が考えてきたんはアナログのゲームや」
「アナログの」
「せや。対戦形式やねんけど、それぞれの手元に六枚のカードがあるのよ。かけ声と共にどれか一枚選んで出して、カード同士の相性で勝ち負けが決まるという、まあ、その……平たく言うたらじゃんけんや」
「それ言わんでええ奴ちゃうの」
「カードには絵が描いてあって、忍者、河童、黒猫、鍋焼きうどん、未確認飛行物体、歌の六種類」
「お題に沿っててここまでは問題ないな」
「忍者と河童やと、忍者が勝つねん。なんで言うたら河童の特技は相撲で、でも忍者は忍者刀を持ってるから結局リーチの差で忍者の勝ち」
「河童と忍者は忍者の勝ち」
「で、黒猫と河童。河童にはもうひとつ特技があって、尻子玉を抜くことが出来るねん。忍者は二足歩行やし素早いからなかなか思うようにはいかへんねんけど黒猫は四足歩行なわけですよ」
「と言いますと?」
「彼らはずっと肛門まるだしですからもう尻子玉抜き放題」
「言い方言い方」
「もうあんなもん河童にしたら高級ビュッフェですから」
「だから言い方よ」
「これはもう圧倒的に河童の勝ちですわ」
「……色々思うところはあるけど、とりあえず続き聞こか」
「で、忍者と黒猫。これは黒猫の勝ち」
「いや猫みたいなもん忍者刀でバッサリやん?」
「黒猫が前を横切ると不吉なことが起こると言われております」
「まあ確かに」
「一方の忍者はと言いますと、活動時間は基本的に夜中」
「そりゃそうやわな。隠密行動せなあかんし」
「時代背景を考えると、忍者は街灯もない真っ暗な道を行くわけですよ」
「まあ行くわな。暗い中を」
「そんな真夜中の、街灯も漆黒の裏街道を走ってたりとかしたら、もう黒猫はね、これもう忍者の前を横切り放題ですよ。ビュッフェですわ」
「ビュッフェ関係ないやろ今回は」
「これで忍者と河童、河童と黒猫、黒猫と忍者は三すくみの構造になっておるわけです」
「じゃんけんと一緒やな」
「で、鍋焼きうどんのカードの話をしましょう」
「ややこいなー、もう三枚でやったらええんちゃいますの?」
「最後までお聞きなされ!」
「忍者に影響されて時代劇っぽい返しすな!」
「鍋焼きうどんのカード。これは河童と忍者には食べられて負け、黒猫は猫舌やから鍋焼きうどんの勝ち」
「二つに負けて一つに勝つんやったら弱いやん」
「でも鍋焼きうどんは熱々やから熱々チャンスがあります」
「なんやねんそれ?」
「鍋焼きうどんのカードを出して勝ったときに、即座に鍋焼きうどんにぴったりの具材を言うと二勝したことになります」
「エビ天! とか玉子! とか言うたらええの? ちょっと簡単すぎへん?」
「いや以外と出てけえへんねんて。咄嗟やから。慌ててポテサラ! とか言うてまうねんて」
「いやそれはないやろ。ちなみにポテサラに和出汁めっちゃ合うからな」
「そうなん?」
「試しにほんだしふりかけて食うてみて。いやそんな話しちゃうねん」
「で、次に歌のカードやねんけど、忍者と河童は感動してまうから歌の勝ち。黒猫と鍋焼きうどんには通じなくて負けるカードやねん」
「いや待って。河童って歌聞くん?」
「めっちゃ聞くよ。沼も川も視界悪いし退屈やん。歌は河童界の娯楽としてまあまあウエイトでかいよ」
「まじかー」
「いやもうめっちゃ聞く。L⇔Rとか聞く」
「古いなあチョイス」
「最後に未確認飛行物体やねんけど、キャトルミューティレーションていうて、あいつらは地球上のあらゆる物体を誘拐できるねん。せやから忍者河童黒猫鍋焼きうどんは全部負けで、唯一歌だけは誘拐できませんよと」
「めっちゃ強いやん! みんなそればっかし出すからゲームとして成り立たんやろ」
「でも未確認やから、このカードで勝っても勝ったことにはなれへんねん」
「いやどういうこと?」
「勝ちさえも未確認やから」
「ほなこのカード出す意味ないやん?」
「連敗を止めたいときとか場の空気を変えたいときとかに出すちょっとお茶目なカードやねん」
「いらんやろ未確認飛行物体」
「そんなわけで絶妙なバランスで成り立ってるこのカードゲームやねんけど、一つだけ問題があるねん」
「なによ?」
「カードの種類が多すぎて、三人以上でやると永遠にあいこが続くねん」
「もうええわ!」
----------
(本文の文字数:1,989字)
(使用したお題:「永遠」「鍋焼きうどん」「ニンジャ」「河童」「黒猫」「うた」「未確認飛行物体」)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます