第6話 chu!可愛くてごめん♡合コンデビューなのだ①

芹沢小鳥の高校生活の出だしは順調だった。

元々物怖じしない性格もあり、男女問わず話しかけるので小鳥はクラスの人気者といえた。


そんなある日の放課後。


「芹沢さん!ねぇ、よかったら次の土曜日、3対3の合コン来ない?」

クラスメイトの三沢茜は小鳥に聞いた。

彼女は明るく社交的で、比較的男友達の多いクラスの顔役だ。


「え!?合コン?」

小鳥は思わず言葉が詰まった。


きたあああああ!早速きたああああ!高校入学してわずか2週間!

早くもイケてる女子の登竜門!合コンの誘い来た!

小鳥は心のなかで思わず叫んだ。


「えー!?アタシ行ってもいいの?」

「もちろんだよ!地元の中学の同級生だけど、合コンしろってうるさくて!芹沢さん来てくれたら凄い!助かる!」

「うん。土曜日は空いてるし。別にいいよ」

「ほんと!やった!じゃあ、土曜日お願いね!」

茜は小鳥に手を振るとそのまま去っていった。髪の毛が少し茶色い今どきの女の子だ。


「えー?小鳥ちゃん合コン行くの?」

奥村一路は驚きというよりは、ウキウキした声で言った。

「うん。誘われちゃった!アタシもついに合コンデビュー!高校入ってよかったー!JK最高!」

「わかりやすく浮かれてるね。まぁ、普通にしてれば普通にモテるよ」

木崎傑は小鳥の浮かれっぷりを、少し冷めた目で見ている。


小鳥は合コンに来ていく服を選抜するため、奥村一路と木崎傑を家に呼んだのだった。

「それじゃあ、キザ!頼むよ!アタシ史上最高のコーディネートをお願いね!」

「わかったわ。でも、アンタ…選ぶほど服がない…」

「!!?そこを何とかして欲しいからキザに来てもらったんじゃん!何とかしてよー!アタシこれに掛けてるんだから!」

小鳥は傑にしがみついて懇願した。


「ちょ!ヤメてよ!分かった!どうにかするから!」

傑は有り合わせの服でコーディネートした。タイトなデニムとシンプルなTシャツに薄めのアウターで、小鳥の長い髪の毛を整えた。


「わぁ!小鳥ちゃん見違えるよー」

「今のアイテムだとこれが限界ね。化粧でもする?」

「わー!キザ!ありがとう!二人共私に彼氏が出来てもずっと友達で居てね!」

小鳥は二人を抱きしめるようにして言った。


「ちょ!ヤメてよー」

「ウザい!マジで!」

一路と傑は小鳥が抱きついていくるのを迷惑がった。


「だいたい気が早いんじゃない。服装なんてどうでも良くて、肝心なのは中身・性格でしょ!」

傑は浮かれている小鳥を窘めた。


「む、それはそうだけど…」

「いい。こと。本当に合コンで上手く行きたいなら、これだけは守りな」

傑は小鳥に合コンで上手くいくようにレクチャーするのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「こんにちは〜」

「はじめまして〜」

合コンの場所は街のカラオケボックス。


男性陣は茜の中学の同級生という涼介と言う少年とその友達二人が今回の参加者である。

女性陣は茜と小鳥、茜の友人とい花音という少女だった。


合コンは和やかに始まり、楽しげな時間が続いた。


「二人共かわいいね〜。茜は流石だな!」

涼介は飲み物のジュースを片手に女性陣に言った。


「はぁ!?私は可愛くないっていうの?」

「ち、ちがうよ〜!三人ともチョーカワイイ!アカネちゃん最高!」

涼介は茜をヨイショしておどけてみせた。

「ちょっと〜なんなのそれ〜あははは」

茜は楽しげに笑った。


「な…なにこれ?何このチャラさ?何なのこの軽快なトーク!?これが合コン!?なにこれ最高かよ!?なにこの心地の良いどうでも良さ!涼介くんチャラくてカワイイ!!」

小鳥は心のなかで思った。

彼女はカルチャーショックを受けながらも、合コンを存分に楽しんでいた。

傑の言いつけを徹底的に守り、常に聞き役に回りおしとやかに過ごしていた。


「ねぇ、小鳥ちゃんは普段何している人?」

涼介の友達が、小鳥に話しかけてきた。


「ええぇ〜私ですかぁ〜?うーん、読書したり…音楽聞いたり…あ、あと犬の散歩かなぁ〜」

小鳥は傑に言われたとおりに、「当たり障りのない会話のみに徹するべし」という金言を守っていた。


「へぇ!ワンちゃん飼ってるの?何ていう名前?」

「あ、ショコラっていうんです。私ワンちゃん大好きなんです!」

「そうなんだ!可愛い名前だね。ウチも犬飼ってるんだよ〜」

「え〜本当ですか?凄い!偶然ですねぇ〜!」

小鳥は「しょうもない事も大げさに反応すべし」という傑の言葉を頑なに信じた。


「どうしよう!?こっちの子もなかなかのイケメン&優しげ!ちょっと舌っ足らず話し方もカワイイ!ワンちゃん連れてデートなんて素敵!」

小鳥は心のなかで妄想全開で思った。


「やだ。さっきからお話できてないけど、花音ちゃんとずっと話してる子も素敵!あんまり笑顔が無いけど、たまに見せる笑顔にキュンとしちゃう!?」

小鳥は他の男子のチェックも怠らなかった。


合コンは場馴れしている茜と涼介の場の作り方も非常によく、盛り上がっていた。

だが、この直後ちょっとした事件が起こってしまう。

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