合法ロリ保育園の園長になりました

三一五六(サイコロ)

プロローグ1

「どうぞ、お座りください」


 僕は眼鏡をかけた年老いた女性の言葉に従い椅子に腰掛ける。

 目の前には年老いた女性と年老いた男性。二人とも椅子に座っており、手には数枚の紙とボールペン。


 現在、僕――小好こよしはるは人生かけた教員採用試験の個人面接中。

 僕の夢は小学生の時から変わらず小学校の先生になること。

 その夢にまた一歩近付くため、何としてでも個人面接を合格したい。

 個人面接の練習は何度もしてきた。そのおかげで自信が持て、緊張はしてない。

 筆記試験は知識だが、面接試験は気持ちだ。

 面接官に僕が教師になりたいという熱い気持ちを伝えるのが大切。


「それではお聞きします」


 女性面接官の瞳を貫くように見つめ、僕は「はい」と力強く返事。


「では、あなたが教師を目指している理由を教えてください」


 最初の質問は王道中の王道。

 教員採用試験の面接において出ないことはないと言っても過言ではない質問だ。

 当然、僕はこの質問に対しての回答を考えており、何ヶ月も噛まずに熱意を込めて言う練習をしてきた。面接官はこの回答を聞き終わった時には心を奪われてることだろう。

 それほど自信がある、否、自信しかない。

 僕の回答を聞いて何も感じなかったら、面接官がおかしいぐらいだ。


「はい。私が教師を目指している理由は、小学生ぐらいの子供を心の底から愛し、好いてるからです。背が小さく可愛らしいところや艶のある綺麗な肌と少しぽっちゃりとしたお腹、発達途中の何とも心地の良い柔らかな体は何物にも代えがたい魅力で溢れてます。加えて、声変わりしてない高い声は至高という言葉以外に表現できません。他にも汚れを知らない純粋無垢な心や元気に走り回る姿、ドジをしてしまい泣いてしまうところも最高と言えます。また、低身長によって生み出されるナチュラルな上目遣いは人に癒しと快楽を与えてくれますし、満面の笑みで「先生!」と叫びながら構ってくる姿は、こちらを笑顔にしてくれます。私はですね、そんな子供たちと信頼関係を築き、仲良く接したい。最終的には仲良しという関係を越え、愛し合いたい。欲を言えば、手を繋ぎ歩き、ハグをして笑い合いたい! はぁ、はぁ……いえ、本当は頬に「チュ」とかされたい! 「チュ」したいっ! そして発達途中の体を触り、子供たちの成長をこの手で! 目の前で見てあげたい!」


 その言葉の後、息苦しさを感じ、一度呼吸を整え、上下に動く肩を落ち着かせる。

 つい語りに語り過ぎてしまい、言葉の間に息継ぎを入れるのを忘れていたようだ。

 まったく、あんなに練習をしてきたというのに、本番でこうなってしまうとは……。

 数秒、頭の中で反省。面接官二人のほうを改めて見つめ、発言を再開する。


「私は教師として子供が大人に変わる瞬間を見届け、大人に成長させてあげたいんです。それが私が思い描く夢であり、教師を目指す理由です。以上です」


 途中少し熱くなって息を荒げてしまったが、最後まで完璧に言い切った。

 子供たちへの熱い熱い『愛』。子供たちの『魅力』。子供たちと接する『未来』。

 全て面接官に伝わったに違いない。

 目の前で面接官の変わっていく表情を見てるので自信はある。

 間違いなく、あの表情は僕の言葉に心を動かされた表情だった。

 今まで感じたことのない熱意を感じ感動したはずだ。


 僕が言葉を言い終えたというのに、未だに面接官二人は黙ったまんま。

 紙に何かを書くこともなく、ずっと僕を見つめている。

 その瞳からは今にも涙が零れそうで、僕のポケットに入ってるハンカチを渡してあげたいぐらいだ。でも、こうなるのも仕方ない。


 まさか面接官二人も面接でこんな気持ちになるとは思ってもいなかったのだから。

 この時点で九割は受かってると言っても過言ではない。しかし、油断は禁物だ。

 まだ面接が終わったわけではない。

 次の質問からは王道じゃないものも含まれると予想される。

 不意を突くような質問が来る可能性は高い。

 だから、もっともっと子供への熱意を燃やし、それを言葉、体を使って伝えるつもりだ。


「面接は以上です。お疲れ様でした」

「えっ? まだ質疑応答を一度しかしてませんよ?」


 いきなりの面接終了の言葉に思わずそう返す。

 だってさ、おかしいだろ?

 面接なのに質疑応答が一度しかないなんて。そんな面接は聞いたことがない。


 もしかして、僕の熱意が伝わり、これ以上の質問は不必要だと判断したのか?

 うん、それしかない。それしかあり得ない。

 個人的にはもっと熱意を伝えたかったが、面接官が不必要というなら仕方ない。

 これ以上、続けても時間の無駄だ。


「結構です。それではご退出ください」

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